見出し画像

ブログ企画【繋】第77回「私の原点」

あたらしい年になりました。

本題に入る前に、まずは新年のご挨拶とお礼を申し上げます。
noteを始めてから、おとといで2年が経ちました。
月に一度のこの企画での更新がやっとにもかかわらず、去年一年間もたくさんの方々がここへいらしてくださいました。
さらに去年は、共著『でも、ふりかえれば甘ったるく』をきっかけにいらしてくださる方が増えたりと、自分の手がけたものが誰かのもとへ渡っていくことの重みと尊さをひしひしと感じた一年でした。
去年一年間、私の文章を読んでくださった方々、さらにコメントやスキをくださった方々、毎月0時ジャストのこの企画の更新を楽しみにしてくださっていた方々、そのすべてが私の支えでした。いつもいつも本当にありがとうございます。
今年も文章を通じてみなさまとあたたかな交流ができることを、こころから楽しみにしております。
みなさまにとって、実り多き一年となりますように。
本年も、どうぞよろしくお願いいたします!


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


さてさて、恒例となりました、毎月1日に全国のメンバーがひとつのテーマで文章を書くブログ企画【繋】。

年明け一発目の今回は、またしても私がお題の発案権をいただきました。

でもね、ここだけの話、新年最初のお題ってなかなか難しいんですよ。どストレートに「新年の抱負」「今年やりたいこと」といったお題もいいけれど、過去に何度か出題されているしなあと思ったり、かといって奇をてらいすぎてもねえ、私個人で書く分にはいいけれど……などと考えをめぐらせた挙句。


新しい年を迎えるにあたり、2019年をどのように過ごそうか考えたり、新年の抱負を掲げる方も多いと思います。そんな、自分自身を見つめなおす時間が増えるであろうこの時期。新しい年の幕開けにあわせて、一度まっさらな気持ちに立ち返ってみませんか。
ブログ企画【繋】第77回のテーマは「私の原点」でお願いいたします。


とメンバーのみなさまにお伝えさせていただきました。
上記の内容しかお伝えしていないので、いくつくらいまで遡るか、なんの分野の原点かなどは、すべてご本人さま次第です。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

新しい年の幕開けにあわせて一度まっさらな気持ちに立ち返れなどと自分で言っておいて、早々から去年の話を持ち越す形になってしまうため大変恐縮なんですけど、実は私、去年ここに書きそびれていたことがありまして。

その話っていうのが、私が去年の秋に受験した大学院入試でのある出来事なんですね。
あ、でももちろんちゃんと合格したことに変わりはないので、そこんところはどうかご安心して読み進めてくださいね。


思えば大学3年の春休み、就活解禁を前に自分の進路を大きく方向転換してから約1年半。
臨床心理学を学べる大学院へ進学するために、バイトをしながら受験勉強を続けてきて、そしてなんとか1次試験突破までこぎつけ、さあいよいよ2次試験を目前に控えた10月半ば。

2次試験は、筆記と面接が実施されるんですね。それで、筆記はまあいいとして、私面接というものが苦手なんですよ。もともと人前で話すことを得意としないうえに、受け応えや態度によって合否が絡んでくる重要な場面だと思うとやっぱりどうしても緊張してしまうのです。
しかもさ、面接官である向こう(教授たち)は心理学を専門とするプロだけに、下手な嘘とかついたらすぐに見破られそうじゃないですか。これぞ心理戦。けれど、ここは絶対に負けられない。何としてでも合格を勝ちとりたい。

でもさ、よく思い返してみて。受験勉強中のいろんな不安や焦りも、勉強を続けることで私は乗り越えてきたじゃん。周りの同世代の人と比べたら多少の遠回りをしているかもしれないけれど、自分自身についてたくさん考えて、膨大な時間を未来に費やして今ここまで来たじゃん。そのすべての準備の時間こそが、私の力と自信に変わるはずだよ。

そう自分に言い聞かせ、これまでの進路を大きく変えてまで今ここに立つ理由をもう一度思い返しながら、面接で想定される質問とその答えを丁寧に言語化していった。

それでも、本番の会場の空気に飲まれて言葉が出てこなくなってしまったらどうしよう。面接場面を脳内でシミュレーションしながら、少しの不安を拭えずにいたが、そのとき私は急にあることを思いついた。

そっか、あまりに真剣にその場の空気に入り込みすぎてしまうから、飲み込まれちゃうのかもしれない。面接中でもいい意味で少し気を紛らわせて、肩の力を抜いてまた自分らしさを取り戻せるようにすればいいんだ!


それで、試験当日の出発前。


私は冷蔵庫の野菜室を開け、ほうれん草の葉っぱを一欠片ちぎると、それをそのままスーツのジャケットの右ポケットに入れた。


前日にアイロンをかけた白シャツ。パリッとしたリクルートスーツに身を包み、黒髪は後ろでひとつに束ねて。バックの中には、これまで使い込んできた参考書とノート。そんな女のポケットの中には、まさかほうれん草の葉っぱが入ってるだなんて、たぶん誰も思いもしていないでしょ。

ふつうならばありえない場所にありえないものをあえて入れることで、自分だけが知るそのシュールな違和感によって緊張を紛らわせようという作戦である。

このね、人生を左右する大事な場面のシリアス感と、ポケットの中の青々しいほうれん草の存在のコントラストを思うとね、いやあ、痺れた。梶井基次郎の『檸檬』の中で、「私」が丸善の画集の上に檸檬を乗せた気持ちも、今ならわかる気がするよ。

たとえ面接会場のピリついた雰囲気を感じとろうが、圧迫面接されようが、変化球な質問をされようが、私は取り乱したりしない。大丈夫。だって、私のポケットの中には、真剣な表情で志望理由を語る私のポケットの中には、



群馬県産のほうれん草の葉っぱが入ってるんだよみんなーーー!!!!



私に質問を投げかけている教授は、知らない。私がその気にさえなれば、今目の前でポケットからおもむろにほうれん草を取り出して、カロテンを摂取することだってできるんだ。鉄分だって、ビタミンCだって豊富なんだ。


ポケットのほうれん草に力をもらいながら、私はなんとか面接試験を乗り切ることができた。

しかし、そこで緊張の糸が切れてしまったのか、面接会場を後にした途端にほうれん草の存在は私の頭から消えていた。
家に着き、玄関で鍵を探しながら無意識に右ポケットに手を入れると、指先に何か湿っぽい感触が伝わった。すかさず取り出すと、そこには炒めたように小さく縮んだほうれん草の姿があった。
くたびれたその姿に、戦い抜いて疲弊した自分の姿が重なりいとおしさを感じた私は、その日の日記帳にそっとテープで貼りつけたのだった。


✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

なぜ「私の原点」というテーマでこの文章を書こうと思ったかといいますと、最近の私はどうも、文章を書くことに対してなんだか構えすぎているように感じていたのです。
ちゃんとしたことを書かなきゃいけないだとか、こんなのたいした内容じゃないかなだとか、こういうのは私よりうまく書ける人がいるよなだとか、自分で自分の表現を閉ざしてしまった結果、言葉が出てこなくなってしまって。

でもさ、本当は何を書いたっていいんだ。自分の好きなように書いていいんだ。いつもの感じでいけばいいんだ。うんうん、この感じ。

という感覚を取り戻したかったのです。

自分で出したテーマにもかかわらず、今までないくらいに苦戦してしまい、日付はもう大晦日。
年の初めに、この文章をみなさまに読んでいただける高揚を感じながら、2018年とこの記事の結びとさせていただきます。




ブログ企画【繋】メンバー

ありぱんだの徒然日記

内田祥文のKeep Hope Alive♪

鈴木NG秀典(すずきんぐ)「鈴木NG秀典ーだー。〜君は馬場より美しい〜」

津軽三味線山中信人の朝刊・夕刊~

しあわせな子育てをみんなでさがすminaのブログ

はらっちのブログ

モリミカのブログ

peixe grande take



#ブログ企画繋 #私の原点 #原点 #ほうれん草 #大学院入試 #2018年 #2019年 #あけましておめでとうございます



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?