彼女

校庭には桜が咲いて、陽気な風が髪をなびかせながら、彼女は生まれた。平凡な日常と移り変わる季節、その中でとめどなく沸き溢れる感情を叫んでいた。ほの温かい太陽に照らされて、その表情は誰よりも輝いていた。

雨はすっかりあがって、強すぎる日射しが風鈴を少し鳴らす。彼女は階段をかけ上がっていた。汗ばんだ背中にぴったりとくっついたTシャツが、全く気にならないほど軽やかな足取りに、満面の笑みで。
蝉の声が鳴りやまぬ中、列車は走り続けていた。

夕暮れの海は日に照らされて赤かった。その横の人のいない砂浜を、彼女は一人で歩いていた。背負った荷物が肩に食い込む。風が吹いた。思いの外冷たくて、少し身震いをした。
もう一度風が吹いて、街道から葉が舞ってきた。この葉に乗って、風に吹かれたら、広い海を渡って、どこまでも、どこまでも。

彼女は笑顔だった。蛍光色の光に照らされて、夢と愛と希望の未来を歌っていた。吐く息は白く空にのびて、消えて見えなくなった。

彼女は泣いていた。

(文:ケビン)

1月6日文責追記

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