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ハラスメントかは相手の捉え方で決まる?決まらない?-わかるようでわからないハラスメント(4)-

ハラスメントには明確な定義がない

厚労省は、パワハラやセクハラの防止に熱心だが、「ハラスメント」が何かについては、どの資料を見てもほぼ書かれていない。パワハラやセクハラについてはとても丁寧に書いてあるが、それが故に、パワハラやセクハラに当てはまるかという話に終始してしまっている印象がある。

日本ではハラスメントの定義は不明確だが、パワハラかセクハラかといった話だけはしっかり決まっている。一方、それらの上記概念であるワークプレイスハラスメントはどうにもなってない印象だ。

だから、人の関心事は●●ハラに当てはまるか?新しい●●ハラはどんなもので、何をしたら処罰されるかになってしまう。

パワハラは和製英語

ハラスメントというと、パワハラやセクハラが有名だが、パワハラというのは日本の会社のクオレ・シー・キューブが作った和製英語である。

厚労省のパワハラの6類型には「暴力」も入っていて、ハラスメントとアサルトが分離できてない。ハラスメントとは暴力以外の迷惑行為のことだ。もともとは暴力のようなアサルト以外にも相手を害する行為があり、それをハラスメントとしたと思うので、なんだかモヤる。

相手の捉え方でハラスメントが決まる場合、違法性が判断できない

さて、パワハラやセクハラに「当てはまるか」というのは「定めた定義やルールと合致するか」という話だから、そこには当然「法律」がつきまとうし、範囲を狭めなければならないのだろう。

つまり、省庁が定めるものは、違法か否か、ひいては罰せられるか否かという観点で作られると思って良い。

このため、ハラスメントは相手の捉え方ではなく、線引きがあり、捉え方の話ではないという、狭い捉え方がはびこってしまっている

行為者の意図に関わらず、相手の捉え方次第という定義では、ルールを適用しにくいのだ。誰かがむっとしたら処罰という法律は誰にとってもおかしいと感じるだろう。

これの定義を適用しても良いだろうけれども、それは僕たちがよく使う言葉では衛生要因的な考え方である。衛生要因的とは、それをどれだけ防いでも良くならないが、不満は防止できるという意味合いで捉えてほしい。

あくまでも、最低限のレベルを定めた「狭義のハラスメント」でしかないわけだ。

一方、ハラスメント対策は「良い職場」を目指すためのもの、違法性ではみない場合も

ハラスメントは、行為の主体の意図とは関係なく、相手が不快に思うかどうかである。繰り返されずとも一度だけでもハラスメントだ。

これを聞くとえっと思う人はすでに日本のハラスメントの定義に毒されているかもしれない。海外のハラスメントに関するwikipediaレベルでよいので一度みてみてほしい。

ハラスメントとは、倫理的観点の話であり、相手が嫌だとか迷惑行為だと感じるものは全部ハラスメントなので、よい人間関係、よい職場をつくるために避けましょうという処罰規定のない倫理則なのだ。この点で「広義のハラスメント」だといえよう。

企業研修でハラスメントについて話す際には、どちらのハラスメントの話なのかがさけて通れない。どちらの話をするかによってトーンが大きく変わるからだ。

前者の狭義のハラスメントについて話すのなら、社労士や弁護士に相談するのがよいだろう。そうすれば厳密に話してくれる。

ただ、研修会社に相談するのであれば、法律の話ではないだろう。社内の法律家や顧問弁護士に聞けば良い話だからだ。研修会社に相談するということは、多くの場合、広義のハラスメントの話を通じて、良い職場を作り、会社を良くしようという文脈での相談なのだと思う。

受け止められにくい広義のハラスメント

ちなみに、相手側の受け止め方でハラスメントかどうかが決まるという話は、基本的に自分に相手を不快にさせているという認識がある人は受け止めてくれない。都合が悪くきこえるからだ。

ハラスメントだと言われても単に相手がそう受け止めたという話でしかないので、別に違法行為を働いたとかそういう話にはならないのだけれど、どうもハラスメントといわれる≒前科者のように捉える向きがあるのだろう。

この話は条件分岐した話のため、この場合はこう、という話が通じない相手からはたまに直情的な反応が戻る。よく読め、よく聞けとしかいえないのだけれど、広義のハラスメントといわれたからといって処罰されるわけではないので、自分が該当していても過剰反応すべきではない。そういった相手には一つ一つ紐解いてあげるしかないなと思う。

別件だが、外資に友人に聞いたところ、その会社では広義のハラスメントで「刺される(通報、つまりチクられて処罰されるという意味だそう)」ことがあり、それで摩耗して無難な話だけになっているということだった。厳しすぎるのも考えものだ。倫理則に罰則をつけると大体おかしなことになる。

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ちなみに、ハラスメントの話はシリーズで書いている。前回の記事はこちら。



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