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【書評】椿進『超加速経済アフリカ』--もはや創造的破壊しかない

 この本を読んで、自分のアフリカに対するイメージがいかに古臭いものであるかに気づいて驚く。貧困、内戦、飢餓、腐敗など、ここ何十年かニュースに出てきたアフリカのイメージは総じて暗いものばかりだ。
 しかし実際にアフリカでビジネスをやっている著者は言う。そうしたことは過去のものになりつつある、と。
 代わりに著者が指摘するのが、日本をも超えたテクノロジーの大規模な進展である。ドローンが縦横無尽に飛び回って献血用の血液を配りまくる。
 あるいは、成人のほぼ100%がスマートフォンを持ち、そこにチャージされたお金で銀行を介すことなくお金のやり取りをし、手数料なしで海外と取引をし、ローンを組む。
 インターネットを使った医療が爆発的に広がり、病院を訪れる患者が8割も減る。
 本当なのか、という疑いはやがて、そりゃそうだ、という納得に変わっていく。こうした爆発的な変化を著者はリープフロッグと呼ぶ。過去のしがらみがない場所では新たなテクノロジーが一気に普及し、先進国だったはずの国を乗り越えていく、という意味だ。
 この本を読むと、日本がなぜ30年間も停滞しているのかがよく分かる。ドローンを飛ばそうと思えば政府が反対し、金融を改革しようと思えば銀行業界が足を引っ張る。医療を改革しようと思えば、医師会が本気で抵抗する。
 そして既得権を持った人々が必ず勝ってしまう。そのことで社会は停滞し、豊かさの総量が目減りし、活気がなくなり、希望も萎んでいく。
 日本は1990年あたりまでうまくいっていたがゆえに、今現在うまくいっていないのだ。全ての変革には破壊を伴う。破壊の痛みに耐えるしか、もう一度希望を取り戻す方法はない。

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