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人工衛星と天文観測の「光害」問題

ボーイング社の無人宇宙船が無事ISSから帰還しました。

次は、いよいよSpaceXクルードラゴンに次いで史上二番目の民間宇宙船による打ち上げの予定です。

有人はこのように盛り上がってきましたが、無人の人工衛星は既に活発に我々の空を舞っています。

その代表格が、同じくSpaceXのスターリンクですが、元気すぎて別の問題が話題になっています。

要は、
人工衛星群が明るすぎて天文観測にとって弊害になって問題になっている
という話です。

大体今の衛星の半分近くで2300個のスターリンク人工衛星が周回しています。改めてすごいシェアですね。

この群れを「メガコンステレーション」と呼びますが、以前からそれがもたらす天文観測への弊害は話題になっていました。同じくNatureから過去記事を引用しておきます。"Photobomb"となかなか過激な表現が印象的です。

それが天文観測にどう影響をあたえるかについて、ZTFと呼ばれる広範囲に空を観測する施設がいくつかデータを出しています。

よくこのテーマで使われるのが、ZTF撮影による下記画像です。

Credit:Credit: Caltech Optical Observatories/IPAC(タイトル画像も同様)

この真ん中を縦に走る光源がスターリンクの光跡によるものとのことです。

そして2022年4月の分析では、衛星の縞が薄明かりの画像に約20%ほどの影響を与えているとも伝えています。

ZTFは、彼らの画像解析処理で何とか対応(衛星の光跡除去)はしているようですが、他の天文台でも同じ課題に直面しています。
研究者のなかには、それを除去できるアルゴリズム開発に勤しんでいる方も上記Nature記事内では登場してますが、正直避けたい労力かなと思います。

これは決してSpaceX社だけを指摘しているわけではありません。

Softbankが出資しているOne Webも、既に420個以上を打ち上げ、直近計画では648個まで打ち上げる予定です。長期的には1万個以上を予定しています。

そして、2020年にはAmazonが”Project Kuiper(カイパー)”と呼ぶブロードバンド衛星プロジェクトを立ち上げました。

現時点で3200個超の衛星打ち上げを予定しており、米国政府から承認を得て2023年から本格的に始動します。(2022年は2個のプロトタイプ予定)

これらのメジャー以外も含めると予定されている数だけで65000の衛星が今後空に存在するといわれています。

そもそも、なぜ衛星が明るいかというと、「太陽光反射」によるものです。
それを、上記のように観測した側で画像解析処理しようという動きもありますが、反射させないように衛星自身に「日よけ」を施そうという案もあります。

過去にスターリンクもトライしたことはあり、Amazonのプロトタイプでも日よけを実験的に搭載する予定です。

ただ、もちろん搭載物を載せると性能に問題が出るので、そのせめぎあいが国際的な場で議論されているという。

丁度6月1日に、恒例の国連宇宙空間平和利用委員会(通称 COPUOS)がウィーンで開かれますが、これも重要なテーマです。

利害関係者によって異なる意見は出ると思いますし、個人的にはどちらの立場も大事にしたい気持ちが強いです。

少なくとも、ぜひ対話だけは継続して、お互いにとって持続可能性のある活動になってほしいと流れ星に願いたいと思います。

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