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ループ量子重力理論のほのかな香りを楽しむ

前回の投稿で、超ひも理論に次ぐもう1つの量子重力理論候補「ループ量子重力理論」の違いだけ触れました。

忘れないうちに、「ループ量子重力理論」についてその香りをかぎ取れる程度に紹介しておきます。

改めてですが、量子力学と一般相対性理論を統合する「量子重力理論」はまだ未完成です。
いくつか理論は提唱され、その中で相対的に期待されているのが、今回の「ループ量子重力理論」と「超ひも理論」です。(ですので、この2つしかないわけではないです)

前回、ループ量子重力の違いは、時空間に離散的な最小単位を導入した、と触れました。

これはある意味まっとうに見えるアプローチです。
というのも、量子論というのは離散的なエネルギーをとるため、その舞台である時空間も離散的であるのはしっくりきます。

が、そうすると厄介なのがもう1つの「一般相対性理論(重力理論)」との付き合い方です。
これは時空間を重力の度合いに応じてぐにゃぐにゃ曲がる「連続的な」物理存在と仮定しています。そんな中に、切り刻まれた時空を当てはめてしまうと曲がり方が測定できずに困るわけです。
(量子論は逆に時空はぐにゃぐにゃ曲がらない(平坦)と仮定しています)

まず1960年代に、ブラックホールの伝道者としても有名なジョン・ホイーラー氏たちが、重力理論に量子(離散的)時空を組み込んだ方程式を編み出しました。これは重力理論と量子論だけを基にして作り上げたある意味純粋な数学的産物です。

そこでは、空間には有限の体積を持った粒が存在し、その間には何もありません。「この粒のつながりで空間を形成しています」(空間にあるのでなく、これが空間の定義)
そして、各粒の体積とそれらをスピンと呼ばれる情報を持った線(リンク)で結んだ「グラフ」構造で表現します。このリンクを辿るときに曲率を計算することで、量子化された重力をなんとか表現しよう、という試みと思ってください。
ちなみに、このネットワーク構造を「スピンネットワーク」と呼びます。

出所:https://studiogooda.hatenablog.com/entry/20180828/1535415704

実はこれは、同じ動機でペンローズ氏が考案したものを応用したものです。(同氏はそれを基にツイスター理論を作り上げましたが、あまりメディアでは取り上げられません)

このネットワークの節(空間を形成する最小単位)は動的に動き、それらをつなぐ線(リンクと呼びます)も引きずられます。
リンクの軌跡によっては交わって交点(新たな節)が現れたりまたその逆も起こります。
これらのイメージは石鹸の「泡(Foam)」に似ているため、「スピンフォーム」と呼ばれます。
もしイメージしにくいときは、2つのシャボン玉(球)が合体すると新しい面とそれを形成する線ができ、3つ以上重なると新しい線とそれを形成する点ができる風景を想像してみてください。

スピンフォーム(泡)のイメージ
シャボン玉同士が合体するイメージ図

この泡構造の変化を表現するときは、その泡に絡む節からのとりえるリンクルートをすべて確率的に計算して足し合わせます。
そして、これは数学的な話ですが、この計算を成立させるには、始点と終点の節が同じ、つまりループでないと、(元々の一般相対性理論で言う曲率計算が)うまくいかないことがわかってきます。
そこで、逆にある条件を満たすループを前提にすることで、既存の理論を組み立てなおしました。

これが現在の「ループ量子重力理論」という名前の由来になっています。

興味深いことに、この方程式には「時間は含まれていません。

おそらくは、ここが一番衝撃的な内容だと思います。

では、我々が朝起きて寝るまで体験している「時間」はどこにいったのか?

ループ量子重力理論の答えは、「時間はそもそも存在しない」となります。

とはいえ、もともと前提とした一般相対性理論では時間を取り扱っており、矛盾を感じます。

ここから先は、ループ量子重力理論ではなく、時間の概念の話に切り替わっていますのでご注意ください。
結論から先に書くと、「時間という存在がなくてもそこまで困りません。

一般相対性理論では、それまでニュートンが仮定とした絶対的な流れでチックタックと刻まれる時間という概念は却下しています。
その代わりに、重力の作用で空間と同様に影響を受ける「従属的な情報」として記述されています。

つまり、重力の影響でそれぞれ局所的な時間という属性を持っており、同じ時間は共有できないということです。
(念のため、その乖離はよほど重力が大きくない限り日常生活では問題になりません)

このことから、時間の本質とは「絶対的な存在」ではなく「相互作用の変化」と見る事も出来ます。

量子論が取り扱うミクロな世界では、常に物質は不確定性を持って揺らいでいます。従って観測(つまり相互作用)するまでは確率的にしか表現できません。

そしてマクロ、つまりミクロな事象を積み重ねた描写をしたいときには、ある程度統計的な塊で表現します。

この時に不可逆なのが「熱を伴う運動」です。

熱は熱いものから冷たいものへ移動する、というのが日常生活でもしっくりくると思います。
これをミクロで見ると分子の運動がランダムに衝突していく過程なのですが、これを統計的に表現すると上記のとおり必ず不可逆な現象が生じ、時間がたつと偏りのない平衡状態になります。

これをカッコいい言葉で表現すると「エントロピーの増大」(熱力学の第二法則と呼ばれます)とよばれます。

熱に限らずエントロピーとは「無秩序さの度合い」を現しており、物理現象はこれに従うわけです。

部屋を片付けないでおくと、ゴミ屋敷になりますが、これもある意味エントロピーは増大しています。
これは人が介在するケースなのでいい例えではないですが、要は自然は、そして宇宙はこれに従います。

宇宙の始まりでなにがしかの理由で「低いエントロピー」が発生し、それが増大していく過程が、一方向的な「時間」という感覚を我々に与えているということです。
その感覚を、理解したい物理現象に応じて、既存の時間を変数に含んだ物理法則を使ってもいいですが、ループ量子重力理論のようなミクロなシーンでは不要です。

ここで触れた「宇宙創成時の低エントロピー」がどうして発生したのかについてはモヤモヤしてるかもしれませんが、なんとなく「時間」という言葉をどう解釈しようとしているのかが感じられたらOKです。

後半はあくまでこの理論が「時間」を置き去りにしてもよさそうな補足であり、今回の趣旨はループ量子重力理論のイメージ紹介なので、ここまでにしておきたいと思います。

何度も繰り返しで恐縮ですが、現時点で超ひも理論同様にこの理論も検証されていない仮説にすぎません。

あくまでその石鹸のような泡の香りを楽しんでいただければ嬉しいです。

<主な参考リソース>


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