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ダークマター(暗黒物質)探求ものがたり#1

宇宙ファンにはおなじみのダークマター(暗黒物質)について、歴史と現状について書き綴ってみます。

ダークマターとは?

ダークマターは、現在の宇宙の27%を占める物質です。我々がお馴染みの物質は5%弱なので、5倍以上もの開きがあります。(いったん暗黒エネルギーはみないふりで)

このダークマター、重さは分かっているのに正体が分からない、というなかなかしっくりこない物質です。
そもそもどのようにして発見されたのでしょうか?その発見された時代からふれてみます。

ダークマター前夜:宇宙が膨張していた?

現代の宇宙論は1916年に提出されたアインシュタインの一般相対性理論から始動した、と言っても過言ではないです。
ただ、その理論から、アインシュタインすら認めなかった「宇宙が膨張する」という結果を導いた科学者が二人います。

アレクサンドル・フリードマンジョルジュ・ルメートルです。(それぞれ独立に宇宙膨張理論を展開)

残念ながらフリードマンは志半ばでなくなりましたが、ルメートルの論文は1920年代になってアインシュタインも認めざるを得ませんでした。

そこにとどめを刺したのが、天文学者エドウィン・ハッブルによる宇宙膨張を決定づける1924年の観測結果に基づく論文です。
ざっくりいえば、遠くの銀河ほど早く遠ざかることを見つけました。ここから宇宙の膨張を前提とした観測が本格化していきます。

ダークマター発見:1930年代の奇跡

そして1930年代にはいると、銀河の動きを研究する科学者からついにダークマターを本格的に言及する(過去も近いことを唱えた人はいました)論文が出てきます。

まずはヤン・オールトというオランダの天文学者です。このころに我々が所属する天の川銀河が一点を中心に回転していることが提案され、オールトはそれを精密に実証します。

そこから、例えば天の川銀河と太陽の質量比(大体1000億倍)を導くなどしましたが、途中で不整合に気づきます。

天体の質量の測り方には、「1.光度」「2.運動速度」の2通りあります。1は直感的にわかりにくいので解説サイトを載せておきます。(2は動き方から逆算してどれだけの質量(引力)かが推計)

オールトの計測では、1より2のほうがはるかに大きくなり、おそらくはまだ光として検出されていない「未知の天体」があるのだろうと結論づけました。(1932年)

その数年後に、我々の外にある銀河団(銀河の密集した塊)の質量を調べたのがフリッツ・ツビッキーです。過去何度かちらっと登場したので1つ過去投稿を載せておきます。

ツビッキーが標的にしたのは、地球から3.2億光年離れた場所にある「かみのけ座銀河団」です。

かれも、オールト同様(ただ、それよりも精密)に、1と2それぞれで質量を計測すると、同じく2のほうが圧倒的に大きくなりました。
そしてこの見えない天体のことを「ダークマター(暗黒物質)」と名付けます。
Wikiにその伝説となった論文和訳部が載っているので引用しておきます。

観測されたような毎秒 1000 km かそれ以上という中程度のドップラー効果を得るためには、かみのけ座銀河団の平均密度は光っている物質の観測から導かれた値の少なくとも400倍かそれ以上であるはずである。これが証明されれば、光っている物質よりもはるかに多くの暗黒物質が存在するという驚くべき結論が得られる。

Wiki「ダークマター」

400倍は、現在の測定ではもう少しちいさくなっていますが、それでも誤差とはいえない差があることは変わりません。

ツビッキーは、上記のダークマター以外に下記の可能性にも言及しています。

・遠方では光はエネルギーを失う
・遠方ではニュートン理論に従わない

今でもこの説はたまに目にします。いかにツビッキーが時代を超えた先駆者だったのかがわかります。

この研究以後、1970年までは緩やかにダークマターを支持する声はありましたが、大きな進展はありませんでした。

そして1970年代に、観測の精度が高まることでダークマターの探求にスイッチが入ります。

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