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核融合によるエネルギー出力がついに入力を上回った

次世代のエネルギーとして注目されている「核融合エネルギー」で、一歩前進のニュースが流れました。

※タイトル画像は上記記事内より

ようは、
核融合エネルギー装置のレーザー放射方式で、ついに入力で要したエネルギーより出力が上回った、
という話です。

以前より、核融合エネルギーについては触れたので、最小限の引用にとどめます。

上記から、核融合反応とは、複数の原子核が融合する際に発生するエネルギーを活用する原理(ほぼ実用的には水素→ヘリウム)で、その実現方法を体系的に整理すると、下記の通りです。

1.超高温タイプ
 1)磁場閉じ込め方式:磁石を周囲に置いて、壁にぶつからないよう磁力でコントロール(プラズマは電気を帯びてるので力が作用)
 2)慣性閉じ込め方式:レーザーなどで原子核を押し、原子核はそのままの状態を留まる(慣性といいます)仕組みを使ってコントロール

2.常温タイプ
 1)ナノテクノロジー:1000度程度で発生する吸着熱を活用
 2)その他

今回はそのうち、1.2)にあたるレーザ放射方式での実験成果です。

重水素と三重水素(同じ水素でも中性子の数が多いレアな元素)を詰めたカプセルに対して、レーザーで2.05メガジュールのエネルギーを投入したところ、3.15メガジュールのエネルギーが生成されました。

逆に今までは、出力以上に入力するエネルギーを必要としていたわけで、まだ実用までは遠い基礎研究の段階とも言えます。

比較的国際的に取り込んでいる大型のプロジェクトITER(上記の1.1)方式)の時間軸でも、実用化は2050年以降と目されています。

今回の技術的ブレークスルーがその時間軸を変えるのかは記事だけでは不明です。

冒頭記事によると、実用化に至るにはレーザーが発するエネルギーの50~100倍のエネルギーを作る必要があるそうです。

また、課題として残っているのは、材料の調達・製造です。

現行方式では、材料を閉じ込めるカプセル状の装置は短命なため、継続して製造する仕組みが必要です。

また、カプセルに入れる反応材料の重水素と三重水素は、上記の過去記事でも触れた通り、地球上では希少であることは変わりません。

と、課題を挙げればきりがないですが、それでも今回の成果はクリーンなエネルギー源への期待として明るいニュースです。

歴史をたどると1960 年代に、LLNL (ローレンス リバモア国立研究所)の研究チームが、レーザーを使用して核融合を誘導できるという仮説を立て、今回のNIF(National Ignition Facility)という実験施設を建てました。

当時の長期プランに従って、ついに今回重要な通過点を達成したわけです。

出力規模を補足すると、このNIFはスポーツ スタジアムほどの大きさで、強力なレーザー ビームを生むわけですが、例えていうと恒星や巨大惑星の中心部や、爆発する核兵器の内部と同様の温度と圧力を作り出します。

核兵器と書くと、物騒に聞こえるかもしれませんが、過去の主流は「核分裂」反応です。

核分裂は連鎖的に反応するため、暴走しないよう安全に最新の注意が必要です。

一方で核融合の場合は逆で、うまく反応しないと単に止まるだけです。そのために安全性は高いといえるわけです。

今回の歴史的な成果がさらに進展することもぜひ願っていますが、同時に我々がより理性的に核反応の原理を学ぶことで、情緒的に「核」を否定しないような空気作りも必要かもしれません。

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