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月が投げかける宇宙資源の所有権

以前、月の起源についてNoteで投稿したことがありました。

月の起源は、上記で紹介した「ジャイアントインパクト説」が有効です。
実は、この仮説が浮上したのは、アポロが月から持ち帰った砂の分析によるものでした。

そんな月からのデータでいま騒動が起こっています。

要は、

・アポロが持ち帰った月の塵を保管していた博物館関係者が、勝手に盗んでいたため1600万円の賠償請求支払い騒動へ
・罰金支払いにあてたオークション売却資産(11万円)の一部にアポロ11号による月のサンプル成分が含まれていることが後日判明
・NASAは上記判明後に国の管理を主張して返却拒否したが敗訴して部分返却。
・落札者は後日オークションで2億円強で売却したが、部分返却のせいで期待落札額に達しなかったことで再訴訟し、NASAはほぼ返却した。
・上記の顛末をふまえて科学資産の所有権の在り方が議論に

ということです。この話は面白すぎて1文ではかたれないです。
しかし、趣旨と異なりますが、アメリカは訴訟社会だなぁと改めて痛感しました。

人類は、1969年から1972年かけて月に降り立って塵を持ち帰ってますが、まだ全てを分析しているわけではありません。
将来の科学進歩に期待して、今でも部分的なパーツだけを解析して残りは封印されたままです。
つい最近も、月探査(&深宇宙に向けた基地化)「アルテミス計画」のために、サンプルが一部開封されました。

今回の民間オークションは、たまたま落札後にその科学的資産が含まれていたきわめて例外的な出来事です。

こういった未来に託す保管の方針に違和感を持つ方がいるかもしれません。

例えば、「月に水が存在する」という事実も、以前からあったデータを再度分析しなおして初めて判明したことがあります。

そして、上記の分析を踏まえてアポロが持ち帰った月のサンプルを現代の解析機器にかけると、そこからも水の成分が確認されました。
科学は決して絶対ではなく、常に漸近的な営みであることが分かります。

水の件はデータの再解析だけなのでそこまで開封に問題はありませんが、開封するということは地球の大気に触れることで、それ自体が解析結果に影響を与えかねない行為です。

はやぶさ2号の開封を担当した方も、リハーサルを重ねて相当緊張したそうです。1つだけ記事を紹介しておきます。


冒頭の記事の趣旨に話を戻します。

投げかけは、「宇宙資源は誰のもの?」というルールがまだ十分に敷かれていないことです。

文中にもあるとおり1967年の「宇宙条約」を基礎とした「宇宙法」が今のところ規範にあたります。

ざっとななめ読みすると、「害を及ぼさない」ことを色濃く出し、そこで獲得した資源への言及が薄い印象です。

特に今は、ISS(国際宇宙ステーション)の運用が民間になることもほぼ決まり、それ以外にも中国が独自建設に向け着々と計画を進行中です。

中国の他にも、UAE(アラブ首長国連邦)が、宇宙大国を目指して積極的な活動を推し進めています。
※タイトル画像は、ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センターによる


地上では、国家単位で憲法で倫理を規定して具体的なルールを各法律で細分化し、宇宙資源の民間所有はアメリカとUAEなど一部の国に限られています。

今回の騒動で、「宇宙はだれのものか?を国際的に明確にすべき、とだれかが訴訟してくれたらいいのに、とやや皮肉を添えて締めておきます。

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