見出し画像

ゾンビ星が超新星の謎に一歩迫る

以前オッペンハイマーの科学者としての業績で、質量がある閾値を超えたら爆発する研究について触れました。

その先駆けとなった白色矮星(恒星の残骸の1種)で、ゾンビのようなふるまいをする様子が確認されました。(タイトル画像Credit: ESA/ATG メディアラボ/C. Carreau)

ようは、
白色矮星が死から蘇って爆発を引き起こす過程で、周囲の星を食い尽くしていることが分かった、
という話です。

確かにこう書くとゾンビっぽいです。

上記の爆発を「超新星爆発(SuperNova)」と呼び、肉眼でも確認できるくらい激しいものです。
なかなか興味深い研究成果がこの近年でも発表されており、過去に紹介した記事を引用しておきます。

上記記事でも触れてますが、肉眼(可視光線)だけでなく色んな電磁波の波長帯で観測することで理解がふかまります。

今回は、史上初めて「電波」で超新星の証拠をつかむことが出来ました。

ただ、普通の白色矮星だと今回の観測は出来なかったようです。

太陽のような単独で輝く恒星は、エネルギーを使い果たすと(あと50億年ぐらい)フグのように膨らんだあとに萎んで白色矮星となります。
そして質量が太陽の1.26倍(チャンドラセカール限界と呼ばれ、引用記事では1.4.初期定義でぶれあり)を超えると、超新星爆発の可能性が生じます。

最後の「超新星爆発」はあくまで結果の可能性であって、そこに至るメカニズムはまだ未解明です。

今回対象の白色矮星も、チャンドラセカール限界は超えていませんでいた。
ただ、その周囲に恒星があって(伴星)、そこからエネルギーを吸収して限界を超えて超新星爆発を起こした、という流れです。

超新星の理解を深めることは、実は結構重要です。

例えば、超新星は「宇宙の物差し」として重宝されています。

宇宙はインフレーションから始まって今も膨張していることが有力な説となっています。

出所:天文学辞典「インフレーション理論」

この宇宙の膨張速度を測る手段として、超新星が使われました。

というのも、超新星にもいくつかタイプがあり、今回観測されたのはIa型超新星と呼ばれます。(細かい定義は割愛)

このIa型超新星の明るさはほぼ同じであることが知られていて、それを基準にして他の天体現象の数値を計測していました。

そして1998年、とあるIa型超新星の観測により、宇宙は従来思っていたよりも加速度的に膨張している、という衝撃的な事実が分かりました。

それが宇宙全体に染み渡った斥力(引力の反対)の仮説を生み、アインシュタインが初期に唱えて一時撤回した「宇宙項」が復活する、というドラマを生みます。

今ではこの宇宙モデルが定番となり、「Λ-CDM(ラムダ コールドダークマター)モデル」とも呼ばれます。

まさに超新星は我々の科学の地平線を照らす灯台のような役割も担っているわけです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?