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ダークマター(暗黒物質)探求ものがたり#4

前回の続きです。

ダークマターは銀河にまとわりつく未発見の物質どころか、宇宙誕生直後から存在して銀河をつなぎとめる「重石(おもし)」であるというところまで話が広がってきました。

今回からは、その謎の正体についての仮説を紹介していきます。

まず、捜査方針を整理しておきます。

1.既存の物質
2.未知の物質
3.1と2の混合
4.観測ミス
5.既存理論の修正

4は今回においてはいったん言及は避けておきます。(が、観測結果で常識が変わることはままあります)
5はさらに大胆に聞こえますが、実際に提案している研究者もいますので、後続で紹介します。

既存の物質:未発見の天体か?

一番初めに思いつくのは、暗すぎてまだ見つかっていない天体では?
というあたりづけです。至極もっともですね。

これについては、前回にもふれた「重力レンズ」という手法で、たとえ光ってなくても重力の存在は検知できます。
長年探索が続けられ、結論としては「該当者なし」でした。

ただ、1つだけ可能性としてのこっているのは、「原始ブラックホール」という存在です。

ブラックホールといえば、天体(恒星)がエネルギーを使い果たした後に自重でおしつぶされた形態です。
普通は太陽の数十倍以上は大きくないと成立しない、まさに宇宙のモンスターです。

が、1970年代に、それとは別のルートでブラックホールが出来るのでは?という案が提出されます。

ブラックホールになるには、ある半径より小さくなれば成立します。例えば、地球の場合は数cmに縮めることができればOKです☺

こう書くと空想と思いますが、宇宙は膨張していることを思い出してください。
つまり、過去にさかのぼると宇宙創成の初期は極めて小さく高密度な状態で、かつ物質の密度が揺らいでいることも分かっているため、確率的には極小のブラックホールが生成されるわけです。これが「原始ブラックホール」のレシピです。

高名な宇宙物理学者スティーブン・ホーキングがこの説を支持して実際に研究を行ったことでも話題性を獲得しました。

理論的にはある程度確からしいので、実際に原始ブラックホールを探索している天文台もあります。

日本では(前回も登場した)すばる望遠鏡が、ダークマター候補として探索を行ってきました。過去に一度だけそれっぽいシグナルを検知しています。

一度だけでは現在のダークマター総量を説明するには根拠に乏しく、今でも探索は続いています。

ちなみに、このダークマター天体説のことをMACHO(Massive Compact Object)と分類します。

実はこれは後付けの命名で、この後に探索された「小さな容疑者たち」と対照的に見せるためです。

次回の最終回は、その容疑者たちについて紹介します。

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