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暗黒を探索するユークリッド望遠鏡が打ち上げ間近

「ユークリッド」は古代エジプトの数学者で「幾何学の父」と言われます。

その名前の由来となった「ユークリッド原論」は、例えば「線とは何か?」といった数学の基礎を構築した著作として2千年以上も信仰されていました。

ただ、19世紀以降になって「非ユークリッド幾何学」という新しい数学の分野が開拓され、宇宙の基礎理論にも影響を与えています。

少々くどくなりましたが、その「ユークリッド」の名を冠した望遠鏡が2023年7月頭に打ち上げられます。(タイトル画像Credit:下記記事内のESA)

上記2つの記事をもとに、その目的と期待値を紹介してみたいと思います。

目的は、宇宙の地図の解像度を高めることで、最大の謎の1つ「暗黒(ダーク)エネルギー」の解明です。

以前に、宇宙創成時に起こったとされるインフレーションと、その膨張速度について触れた過去記事を引用して基礎事項を割愛します。

エネルギー密度分布の実に7割近くを占めるのが暗黒エネルギーで、その斥力を生んだメカニズムは厳密には未定です。

ハッブル定数と呼ばれる宇宙膨張測速度は、厳密にはまだ観測プロジェクト間で一致していません。そのあたりの新しい観測手法を紹介したのも上記過去記事です。

これだけ一致しないと、もしかしたら膨張速度は変動性があるのかもしれません。少なくとも約100億年前に膨張速度が速くなったことは確からしいとされており、今回の望遠鏡はその時期以前での観測精度を追求することで、その時間的な変動性をもう少し深く知ることができます。

出所:上記記事内の図

実際の観測方法について。

ユークリッド望遠鏡は、太陽や近傍惑星による遠心力が釣り合う「ラグランジュ点」に1か月かけて移動します。要は落ち着いて観測できる場所に行くと思ってください。ジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡も同じ場所で、観測についても今回の当たり付けをした銀河をもとに詳細な探索をするというリレーも期待されています。
観測を開始して6年以上かけて宇宙の3分の1を観測します。

ちなみに、観測精度は上がると思いますが、その膨張変動メカニズムを表現するバチっとした理論はまだ確立されていません。

インフレーションであれば、量子力学が要請する揺らぎによって生じたのであろうとされていますが、この「第二のインフレーション」ともいわれる膨張速度の増加についてはそれでは説明がつきません。

上記Sciense記事でも触れていますが、その理論での予測値と10の120乗(!)もの乖離が生じたそうです。

宇宙最大の謎でその原理すら分かっていない、と聞くと個人的には相当ワクワクしてしまいます☺

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