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①「コロナウイルスのパンデミックをふりかえって~ある地方開業医の視点~」                      第1章 コロナウイルスパンデミックは、今まで隠れていた現実を、いろいろ垣間見せ、あぶりだした

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(表紙の説明)つばな
ごく身近に生育する雑草で、私は母親がその名を言うまで、その存在すら認識していなかった。若い穂はツバナといって、噛むとかすかな甘みがあって、昔は野で遊ぶ子供たちがおやつ代わりに噛んでいた。母親の戦時中の記憶に残っているらしい。調べると、地下にしっかりした匍匐茎を伸ばし、ときに「世界最強の雑草」という称号すらあるらしい。
 


第1章 コロナパンデミックは、今まで隠れていた現実を、いろいろ垣間見せ、あぶりだした 

当院受付写真。余談になるが、いちばん左に「オンライン医療資格確認」機器がある。第6波のまえ(R3.10)に、当院では「オンライン医療資格確認」を、他院と比べて比較的早期に導入た。だがR6.4の今まで、ほぼ稼働はしてない。普段は布かぶっている。そしてほとんど使用されないまま、また買い替えの時期が迫ってきているという話である。


 私は、医者として、コロナウイルスの流行のまえから、1年中、マスクをつけて仕事(診察)をしていた。なので、コロナウイルスパンデミックでの「新しい」マスク習慣に新しさはなかった。それに、私にとって、もともとマスクは単なる感染予防のためだけの利点ではなかった。
 マスクは、仕事中、自分の感情を患者に隠すのに役に立っていたのだ。イライラ、怒りをマスクで隠すことができ、もともと重宝していたのだった。
また、コロナウイルスパンデミックの間、受付には、透明の壁(シールド)がもうけられ、受付の事務のお姉さんもは顔に壁(シールド)をかぶっていた。
 私のクリニックは、今どきのクリニックの多くと同じ「見た目中心」の設計だ。だから、パンデミックになってから、シールドが必要だったので、購入設置を行った。だが、昔の「機能中心」のクリニックの設計では、クリニックの受付の窓は普段から狭く遮られ、感染予防で事務と患者が直接接触しないような作りになっていた。
 つまり、コロナウイルス対策は、ちっとも新しいことではなく、昔風の設計の考えに立ち返ることにすぎない、ともいえる。
 
 コロナワクチンの接種の是非、自粛の程度、などについては、数多くの専門家、非専門家から意見が出された。
 例えば、最初は「感染阻止率90%以上」という謳い文句で提供がはじまったコロナウイルスワクチンは、結局、効果が長続きしないことがわかった。「感染阻止率90%以上」なのは、最初の1か月だけのようだった。抗体が最大値となるのは、接種後2週間だから、いかに早く抗体価がさがる=効果が消えるか、ということがわかる。
 結果、コロナウイルスワクチンは複数回うたねばならないという結果となっている。
(ここは、開発から十年以上の観察期間中、ずっと効果が持続している、子宮頸がんワクチンや帯状疱疹ワクチンなどとは決定的に異なっている)
 これは、mRNAワクチンの限界なのかもしれない。
 とはいえ、はじめての疾病、はじめての治療が、手探りなのはやむをえないところがある。
 声は様々だが、人々の実際の行動は、やはり厚労省の方針に従うものが大勢をしめていることには間違いはない。
 
 2019.12の時点では存在しなかったコロナウイルスの治療薬(新興の感染症なので無くて当然だ)2023.9の時点で4種類になった。経口薬はパキロビット、ラゲブリオ、ゾコーバ。注射薬はレムデシビルだ。これらの薬は、2023.4までは、処方できる医療機関に制限があったが、それ以後どんな医療機関でも処方できるようになった。最初の、2023.4~2024.9までは無料で入手可能、そして、2023.9~2024.3までは国からの補助金で多少安い値段で入手できたが、2024.4以降は、正規の高額な値段となった。高価というのは、医療保険3割の負担者の場合、インフルエンザ治療薬はすべてで、\1,500 の一方、最も安いゾコーバでも\15,000。その他の薬は、\30,000からするので、入院して高額医療補助制度が使われるような状況でないと処方は現実ではない。
「服用することで、早くなおります、後遺症の発生頻度がへります」と説明すれば、無料で入手可能だった2023.4~2024.9までは9割の方が処方希望。
 だが、国からの補助金がなくなり正規の高額な値段になった2024.4以降は、希望者はほぼいない。
 多くの人が、薬なしで治っていった、ということをみな見聞きしているので当然の選択かもしれない。
 
 2024.4の時点で、日本人の4割?が一度は感染し(注1 厚労省→NHKグラフ化公開)、9割の人がコロナウイルスの抗体をもっているということだ(注2 2023.9厚労省資料)。
 ワクチンや薬が重症化を本当に防いだかは実際には証明しにくいが、コロナウイルスのパンデミックは約4年間の間で「集団免疫」を獲得したことでようやく収束にむかっているようだ。
 とはいえ、コロナウイルスで死亡した人は、2020~2022の3年間だけで75,000人(注1)。「コロナウイルス流行前にインフルエンザでの年間死亡者数は1000人ほどで、近年3000人くらいに増加していることが問題視されていた(注3)」ことと比較すると、年間25,000人の死亡者をもたらしたコロナウイルスは手ごわい相手だということが感じられる。
(専門家たちによる「死亡率」と言う話はややこしくなるのでここでは触れない)
 さて、ぼくは、ここで、マスクやワクチンや薬など医療的に、「どうしたらよかったか?これからどうすればよいか?」ということ以外のことを話題にしたいと思っている。そういう話題は多くの専門家や専門家以外が議論にしのぎをけずっている。
 また、「コロナパンデミックは社会にどんな変化をもたらしたか?どんな影響があったか?」と言う問いも多くの議論がでてきている。
 だが、私がこれから書いていく視点は、これら多くの人がもっている視点と、一線をかくす。
それは、
 
パンデミックは、今まで隠れていた現実を、いろいろ垣間見せ、あぶりだした
 
という視点だ。
「パンデミックに対しどのような対応が最善か?」という問いではなく、このコロナウイルスのパンデミックで、なにか見えにくかったものがいくつか顕わになったのではないか?という問いだ。
 
 抽象的であるが、その例を、いくつかあげておこう。
 
① 日本の医療は世界に比べ10年おくれの悲惨な状況が続いている。その
ことを、マスコミは触れようとしてこなかった。日本の医療レベルの遅れに警鐘をならし、もっと世界においつくような努力を!と、今までだれも指摘するものがいなかった。
 今回、世界でいち早くコロナウイルスのワクチン開発がおこなわれたのに、日本では遅れるどころか、できもしない事実は、日本の医療の遅れをはっきり示した。
 日本でのコロナウイルスの検査の主流は、感度の悪い、簡易抗原定性検査が主流。これは、結局、日本においては、製薬会社にとどまらず検査会社の能力も低いために、結果、今回、PCR機器をつくり普及することが、なかったということ。
 パンデミックの終わりに日本初の治療薬「ゾコーバ」がでたが、この評判は、医者の中では決してよいとはいえない。なぜなら、その「臨床試験」(実際の効果を人間でためすこと)が不十分なまま認可されたからだ。その科学性の貧しさは、その臨床試験を掲載する英文誌がいまだにない(名の知られていない邦文誌のみ)。
(注4)
 だがそれにもかかわらず、またしても、日本の医療の遅れは『不都合な真実』として隠されている。
 その理由は、おそらく、なんといっても、日本の平均寿命は世界1,2位を争うくらい長い、からだ。
 薬の入手が遅くても、病院数、医療従事者数、国民皆保険など、総合的にみれば、平均寿命はのばせる。
 日本にワクチンや薬を創る力がなく、結果、その使用開始時期が世界的にみてとても遅くても、問題ないというわけだ。
 そして、この『隠蔽』は、『ワクチン反対、臓器提供反対、臨床試験反対』を掲げる人の割合が多い日本の特徴と、関係していると思われる。
 そう。臨床試験は(移植医療とならんで)、日本の風土あるいは日本人の心象にそぐわない一方、特にアメリカでは一大領域、一大産業を形成している。それに比べると、日本にある「臨床試験」というのは単なる言葉だけ、あるいは小規模すぎて、話にならないことを、多くの日本人は知らない。
 
 
② 例えば、「医療にはなおせない病気がある」ということを説明するのに、
外来で、コロナウイルスの例を私は引用させてもらっている。
肩こり、めまい、腰痛などの訴えに「治せない病気がある」などというと、「とんでもない医者だ」と思われていた、だが、今回のパンデミックが起こり、コロナウイルスに対して薬がないという現実を前にして、ようやく「さもありなん」としぶしぶ認めてくれるようになった傾向はある。
 
③もともとあった、「孤独死」(今も、検死にいく)や、インフルエンザ等による、あるいは老人の死、(あるいは老人施設のクラスター)は、コロナウイルスのパンデミック前からあったし、今も続いているが、報道されなかったそういうことがらに、「一瞬」光があたった。
今までも少なくなかった、「自宅での孤独死」の悲惨さが、今回のコロナのパンデミックでようやくとりあげられたこと(コロナのパンデミックでその数が急に増えたわけではない)。
 
④『コロナウイルスのパンデミックは素晴らしい!パンデミックがおきてよかった!パンデミックにバンザイ!』
 実は、そう思っているが、声に出してそう言わない人、あるいは言えない人が、今の日本にはけっこう多いのではないだろうか?
 さらに、たとえそう口にだしても、世の中はその声を黙殺し、外に出さないように封じ込めてしまうのではないか?
 ここで言う、世の中=いわゆるマスコミ、あるいはSNSの場や、それぞれみなが所属する会社や学校や様々な集団内、のことである。
そういう人は、コロナ補助金によって、コロナ前よりむしろ潤った零細の飲食店などだけに限るまい。
 生活は「窮屈に」なったかもしれない。でも、身近なできごとを例にとっても、外国人のいない静かな観光地のよさ。混雑してないスペースをとれたレストランでの食事の豊かさ。あるいは、混雑さが減った電車などの公共交通機関や、車の台数が減った道路。それらを経験したとき、われわれは少し得した気分になったのではないか?
 だが、不思議なことに、少なくとも、現時点で、「パンデミックに万歳」でネット検索しても、ヒットするものはゼロだ。
 
⑤その他、細かいことはまだまだいくつもあろう。
 インフルエンザの流行が激減したことからすると、インフルエンザは海外からのもちこみを封鎖することで、流行がなくなりそうな可能性があること(今後、その予定はないようだが)。
 今回、日本では、コロナウイルス対応が、(知らない間に大幅に人員削減されていた)保健所主導の対応だったので、疫学的な財産が結局できないという残念な結果におわってしまっていること。
 パンデミックのさなか、例外的にオリンピックが開催されたことや、補助金配布方法・時期のこと。あるいは、不要なマスクが配布されたり後から廃棄されたりせねばならなかったこと、そもそもHer-Sysよりすぐれた登録システムがあったのにそれは(故意に?)無視されてしまった、など、日本の 「官公」にある問題点。
 そして、「民」で流布される流言。
 などなど。
 
 様々なことが、このパンデミック中にあきらかになり問題視されてきたが、それらは、今の日本の姿を、あぶりだしていて、未知のウイルスの制御方法と同じくらい興味深いものだ。
 
(注1 厚労省→NHKグラフ化公開)
 新型コロナウイルス 日本国内の感染者数・死者数・重症者数データ|NHK特設サイト

(注2 2023.9厚労省資料)
 第56回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会・第79回厚生科学審議会感染症部会 資料|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

(注3)https://president.jp/articles/-/33053?page=2

(注4)ゾコーバについての、塩野義製薬提供資料 T1221試験、は今なお、結局(英語)論文にされていない。
 学会発表はあるものの、いまだにシオノギ製薬からのプレスリリース、小さな邦文雑誌掲載のみだ。
 残念ながら、日本の臨床試験体制の貧弱さということをさしひいても、これでは、これからもずっと、ソコーバは「インチキ」と専門家から言われ続けてもやむをえない、というのが現状だ。
 その内容について簡単にふれてみる。
125 mg(初日のみ375 mg)の用量で、軽症/中等症患者を対象に日本、韓国、ベトナムにおいて重症化リスク因子の有無、またワクチン接種の有無(9割以上が接種済み)にかかわらず、発症から120時間以内の患者1,821例が登録。(登録時期は、そこに明示されていないが2022.1~7のよう。すなわち、デルタ株)。
 実は、このデータは、みればみるほどよくわからないところがでてくるので、2022.7月に厚労省が「ゾコーバ」の緊急承認を見送ったのも、一理あるかと私にさえも思える。
 たとえば、この臨床試験の結果は、日本・韓国・ベトナムで実施された。5症状(①倦怠感又は疲労感、②熱っぽさ発熱、③鼻水又は鼻づまり、④喉の痛み、⑤咳)の消失時間が、ゾコーバ群で167.9時間、プラセボ群で192.2時間と24.3時間の差があったというものだが、日本人に限った解析では6.3時間しか差がなく、その差は統計的に有意ではない。
 その後、オミクロン株で、同様の臨床試験を計画中とシオノギ製薬はいっていたが、その報告は今なおない。

 
 第②話URL: 「コロナウイルスのパンデミックをふりかえって~ある地方開業医の視点~」   ②                    第2章 2020.1の横浜ダイヤモンドプリンセス号のクラスター発生から2023.4の|kojikoji (note.com)

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