見出し画像

マネジメントのやり方や考え方を記事に書こう(#24)

この記事の初出は、Software Design 2024年3月号です。

マネージャーは何の記事を書けばいい?

「ハピネスチームビルディング」では、新しい技術・ツール・プラクティスを積極的に試行して、得た知見をアウトプット(技術記事で情報発信)する事を繰り返して、皆で楽しく成長する事を目指しています。
その中でポイントになるのが、記事を書く習慣を身につける事です。
本連載の第10回では、マネージャーがメンバーの技術記事の投稿をサポートしてアウトプットを習慣づけることを紹介しました。

上記の記事では、メンバーが記事を書くことをサポートする上で、マネージャー自身も記事を書くことを前提としています。
ただ、テックリードを兼任するプレイングマネージャーであれば技術記事を書くことが容易ですが、技術に深く関与しない立場のマネージャーは技術記事を書くのが難しいこともあります。

そういう場合は、マネジメントのやり方や考え方について書くという方法があります。
そしてそれはとても大きなメリットがあります。
本稿では、マネージャーがマネジメントの記事を書きたくなるようなメリットを6つ紹介します。

①暗黙知を形式知に変換できる

暗黙知とは、個々の経験や感覚に基づく知識のことで、言葉にするのが難しく、形式化されていない知識を指します。
一方、形式知は、言葉や数値、図表などによって明示的に表現され、共有や伝達が容易な知識のことを指します。

マネージャーが日々の業務を通じて得た経験や洞察は、多くの場合、暗黙知として蓄積されます。
これらの知識は非常に価値がありますが、それが暗黙知のままでは、他の人と共有するのが難しく、また、自分自身がその知識を意識的に活用するのも難しいです。

しかし、自分のマネジメントのやり方や考え方を文章に書くことで、これらの暗黙知を形式知に変換できます。
これにより、自分自身のマネジメントの理解が深まり、他の人との知識の共有も可能になります

マネージャーを1年以上務めている人であれば、自分なりにやっているマネジメントのやり方があると思います。
そういう人が、自分のやり方について書くだけなら、一見、簡単そうに思えます。
でも筆者の場合、いざ記事に書いてみようとすると、「なぜ自分がそのやり方をしているのか」をうまく言語化できないことが多くありました
つまり、そのやり方の本質を全然理解できていないことに気付いたのです。
記事を書きながら意義やメリットを言語化することで、やっとそのやり方を形式知に変えることができました

②言語化スキルが向上する

前提として、マネージャーの仕事のひとつに「メンバーが共感・納得して取り組めるように意義を言語化して伝えること」があります。
なぜならマネージャーは、マネジメントによってチームの生産性を最大化することが使命であり、これを達成するためには、メンバーが主体的に行動するよう促す言葉が必要だからです。
マネージャーは、やるべきことをメンバーに指示するだけでは不十分です。
それを最大のパフォーマンスでメンバーにやってもらうためには、メンバーを共感・納得させる言語化スキルが必要になります。

この言語化スキルは実践することで向上します。
そこで効果的なのが、マネジメントの記事を書くことです。
特定技術の記事を書くときは、明確な事実をもとに記事を書くことが多いですが、マネジメントの記事を書くときは、ふんわりとした概念や考え方を言語化することが多いため、難易度が高いです。
事実を書こうとしても、今の仕事の顧客情報やプロジェクト内容に関わる情報をそのまま書けないので、抽象化する必要があります。
その抽象化したものを相手に分かりやすく伝えるために、実際の事例から本質的な部分だけを抜き出した上で、読者がその考えをイメージできるような具体例を示すなどの工夫が必要です。

また、多くの人から共感されることを狙うのであれば、「読者が困っていそうなことは過去の自分も困っていた」という旨を書いたり、親近感を感じやすいように自分の失敗したエピソードを紹介したりなど、読者に寄り添う伝え方が必要です。

これらの観点で考えて記事を書くことで、言語化スキルは向上します。

③世間のやり方を調べたくなる

自分のやり方を記事に書いて公開しようとすると、「もしかして、このやり方は世間では時代遅れかも」と不安になることがあります。これは良いチャンスです。

世間のやり方を調べて学ぶという行為は、普段何気なくそれをするよりも、不安だからすぐに知りたい時の方が、強い動機付けがあるので効率よく学習できます。

過去のマネジメントのやり方を続けるだけでは、時の経過と共に時代遅れになっていくため、世間のやり方を調べることは改善に繋がります。
実際に筆者もそのように調べた結果、自分のやり方が時代遅れであることに気付いて改善のきっかけになることがよくありました。

④改善意識が高まる

マネジメントで自分なりに工夫していることを記事に書くことで、あまり工夫していない部分も改善されることがあります。
記事を書くことで、自分のやり方を見直す意識が高まるためです。

例えば、筆者は若手のメンバーの育成計画を立てることや教育・指導を行うことがよくありました。
マネジメントの記事をいくつか書いたある時、自分の育成方法や指導のやり方は、社内や社外に公開できる内容なのかと考えました
それを考えた当時は、まったくできる気がしませんでした。
当時の筆者は、若手メンバーに対して、自分の経験則だけでなんとなく良いと思っている方法で育成していたからです。
その育成方法に根拠はなく、自分が若手の頃に経験したやり方を真似していたのですが、そのやり方が良いとも限りません。
それに気付いて、自分なりに根拠を持ったやり方を意識するようになりました。

⑤信頼関係が向上する

マネージャーがやり方や考え方を記事にして公開することで、意思決定プロセスの透明性が高まり、メンバーはチームの意思決定を理解しやすくなります

また、マネージャーが自分の考えを公開することは、自分の意見に自信を持っていることを示します。
マネージャーが自信を持ってやっていることが伝われば、メンバーは信頼しやすいと思います。
もしもそのマネジメントの記事が多くの人から共感された(俗に言うバズった)なら、さらに良い効果があります。
チームのやり方が多くの人から支持を得ているという事実から、メンバーは、自分のチームのやり方が効果的であると納得しやすくなります。
そういう記事を多く書けば、メンバーはチームのやり方に共感しやすくなり、信頼も深まりやすくなります。

⑥マネージャーの市場価値が向上する

2022年のある調査によると、日本企業の平均寿命は「23.3年」とあります。
いつ自分の会社が無くなるか分からない時代なので、他の会社でも雇ってもらえるように市場価値を高めておいた方が、人生が安定すると言えます。

その点で、言語化スキルはマネージャーにとって重要なスキルのため、そのスキルが高ければ、マネージャーとしての評価は上がりやすいと思います。
つまり、多くの人から共感されるマネジメントの記事をたくさん書けば、マネージャーとしての市場価値が上がる可能性があります。

まとめ

マネージャーが自身のマネジメントのやり方や考え方を記事に書くことで、記事を書くメリットをたくさん体感できると思います。
その体験や記事執筆で得た言語化スキルを用いて、メンバーに投稿のメリットを伝えれば、きっとチームの皆で記事を書いて楽しく成長できるようになると思います。

はてなブックマークに登録してもらえると嬉しいです


連載「ハピネスチームビルディング」の前回の記事はこちら↓


読んでいただき感謝です!何か参考になる事があれば、スキを押していただけると励みになります。毎月チームビルディングの記事を投稿してます。 Twitterもフォローしていただけると嬉しいです。 https://twitter.com/kojimadev