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カクコツ 取材する④| 必ず聞くこと伝えること5点+1

企業が発信するさまざまなメッセージを文字化するビジネスライティング。「カクコツ」では、その仕事内容と書くためのノウハウを、コピーライターとして30年のキャリアをもつコジマが解説しています。「取材する」編の4回めは、取材の際に必ず聞くことと伝えていることを紹介します。

①「取材時間は○時までと
聞いていますが」

ビジネスライティングの取材は基本的に、
企業から企業へお願いすることがほとんど。
取材相手はお客さまや協力会社などの取引先、
自社もしくは自社グループの
社員だったりすることも多くあります。

取材に行く同行人数は比較的多いです。
発注元の担当(商品営業や広報など)だけでなく、
代理店や印刷会社、メディアの担当者など。

そこでは、オトナの事情で
必要以上の忖度が生まれるんですね。
「お忙しいお客さまに、
 わざわざ時間を取っていただいた」みたいな。

忙しいのは、みんな同じなのに。
「取材は15時からの1時間、
厳守でお願いします!」なんて
いわれたりします。

だから、取材の冒頭で必ず
時間のことを確認します。
するとですね、取材相手本人は
ゆったり時間があることも多いのですよ。

あの「時間厳守!」は何だったのか。
撮影を同時にする場合などはとくに、
確認しておくと焦らないで済みます。

逆に「急に社長に呼び出されて
30分しか取れません!」のようなことも。
それでも、取材前にわかれば、
それなりに対応することができます。

②「原稿は掲載前に
チェックしていただきます」

ビジネスライティングでは、
掲載前の原稿チェックは必ずおこないます。
しかも、本人を含めて複数部署の多人数から。
原稿チェックに関しては、それだけで
1テーマになるくらいコツがあるので、
ここでは触れません。

事前チェックができない報道機関の
取材に慣れしている取材相手だと、
そもそもできないと思っている人も。
だから必ず伝えるようにしています。
広報から聞いていることがほとんどですが、
現場でライターから聞くと、
より安心するようです。

③「ざっくばらんに教えてください」

これは②とつなげる形で伝えます。
原稿チェックできるとはっきりわかれば、
遠慮なく答えてもらえる可能性は高まるでしょう。
取材の現場で企業の公式発表のような
話を聞いても記事になりにくいですから。

「勉強はしてきたつもりですが、
 なにぶん付け焼き刃。
 失礼な物言いがあるかもしれませんが、
 ご容赦ください」
と付け加えることもあります。

取材相手が偉い(と自分で思っている)人や
この業界で有名な(と自分で思っている)人、
大きく年長の人の場合などの場合です。
「教えてください」というスタンスがキモです。

④「言い忘れたこと、改めて
強調したいことはありますか」

これは取材終盤に聞くわけですが、
とても大事だと思っています
原稿のキーワード=タイトルや見出しに
なる言葉が出てくることがあるからです。
取材の流れで話し損なったけど
話したかった言葉って案外あるのですね。

この質問に対する答えが
これまでの話と矛盾していることもあります。

「先ほどはこうおっしゃっていましたが、
それとは違うのですか?」
などと確認します。

矛盾していないというなら、
その論拠は?
矛盾しているのなら、
どちらが本当の話なのか?

それによって書ける内容が違ってきます。
「いまの話がよくわからないのですが…」
と、ここも教えを請うように
確認するのがコツですね。

⑤「何かほかに質問はありますか?」

これは取材同行者に向けて。
取材の最後に必ず聞きます。
同行者の皆さんも事前に調べて、
聞いてみたい質問があったかもしれません。
それを自由に聞いていただきます。

同行者からの質問は、取材の最中は
できるだけ待ってもらうようにしています。
相手の集中力が途切れるから。人数も多いし。
順を追って聞こうとしていることを
急いで聞きたがる同行者もいます。
その場合、全体の様子を見ながら
「それはあとで聞きましょう」と
切っちゃうこともあります。

実は、この質問をする大切な理由があります。
取材したあとになって、取材同行者から
「この質問をしてなかったじゃないか」
という指摘を避けるため。

事前に質問項目(質問シート)をつくって
同行者と共有するのはそのためでもあります。

思うような原稿ができなかった原因を
ライターの力量や取材のせいにする人が
少なくないのです。

本当にそうなら仕方ありませんが、
濡れ衣を着せられるのは
絶対に避けたい。

また、原稿を依頼元に送ったあとに、
「この話も入れてほしいのですが…」
というようなリクエストが
ないわけではありません。
取材時に聞いていたり、
資料があれば書けますが
そうでなければ対応は難しい。

ライターのリスクヘッジとして

だから、質問は事前に共有して
希望があれば相談のうえで修正。
取材の最後には必ず、
同行者が聞きたいこと、
わたしが聞き逃していることを確認します。
ライターとしての
リスクヘッジということですね。


取材の現場で自分の存在感を
妙にアピールしたがる同行者がいることも。
そんなときは「お好きにどうぞ」の心境ですが、
それによって書く内容が左右されてしまうと、
結局はライターの責任にされてしまいます。

「話が逸れすぎている」
「時間が足りないかも」と思ったら、
毅然とした態度で同行者の話を止める。
これもライターの仕事だと思っています。


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