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ぼくのミノルタカメラで

辻堂で撮っていたら、次は小岩で撮ろうということになった。志和の家は昔渋谷の道玄坂にあって私は杉並の河北病院で生まれたのだけれど、親が離婚したんでほぼほぼ小岩で子ども時代を過ごしたなんて、そんなどうでもいいことを話すと、なんとありささんも小岩と縁があることがわかって。
「朝、歩道を歩いてると血痕とかあって」
なんて話で爆笑しちゃって。

子どもの頃通ったパスタ屋さん(てかスパゲッティ屋さんと呼んだほうが)にお連れし、そこからいろんな場所をめぐった。そしてこの日は電子カメラ(昔某通信社でデジタルをこう呼んでいた)だけではなく、小岩で暮らした頃人気のあったフィルムの一眼レフを持って行った。

私は当時キヤノンのカメラを使っていたのだけれど家庭教師の先生がミノルタを使っていて、ある日嬉しそうに「君の家庭教師してるおかげで買えたんだよ」って買ったばかりのカメラを見せてくれたんだ。篠山紀信さんのCMで人気のあったミノルタXE。それがとても印象に残っていて、だから同じカメラを私もずいぶんあとになってから中古で買ったの。そんな想い出カメラでありささんを撮りたくなったの。

激安って書いてあるシャッター見つけるとありささんは飛んで行って「ここで撮って!」笑
写真ってなんだろうね。学生の頃とか頭でっかちになってずいぶんシリアスに考えていたけれど、いまそんなことはどうでも良くなっちゃった。
「撮って!」
うん、撮るよ。……そんな写真との向き合い方それが心地よくて、ついでに言うと私にとって写真はもうそれでいい。それだけでいい。

ようやくたどり着いたんだ。

十分過ぎるほど写真を撮っていて楽しかったし、でも傷ついてきたこともたくさんあったし。
でもでも「激安」と書かれたシャッターめがけて少女のようにはしゃいで飛んでいくありささんを見て自分の中で何かが弾けたの。こういうことをきっと、私はずっとずっと写真に求めていたんじゃないかなって。

写真撮ることは時に辛かったり苦しかったりとにかくしんどかったりしてきたけれど、ああ撮ってきて良かったなって思えるの。いま。

骨折公園でも撮ったよ。小学生の頃この公園に滑り台があって高鹿君が上から落っこちちゃって足を骨折しちゃってね。そんな想い出なんか写真には写らないんだけど今度は私が飛び跳ねるように「骨折公園だ!あそこで撮ろう」って。
写真って、そんなんでいいんじゃないかな。

それで、撮り終わってからすぐ現像に出して同時プリントしてありささんにそのままプレゼントしたの。写真って、撮ったときが見たいときだもんね。笑

ありささん、ありがとう。

model:鎌田ありさ

https://www.instagram.com/arisa_0505_/

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