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真面目でシリアスな社会派官能小説 『シンコ・エスキーナス街の罠』

先日、マリオ・バルガス・リョサの『シンコ・エスキーナス街の罠』を読みました。

マリオ・バルガス・リョサは、1936年生れの南米ペルーの作家で、2010年のノーベル文学賞を受賞しています。また、一時期政治家としても活動しておりペルーの大統領選にも出馬しています。そのせいか、ウルグアイ人の友人に、「リョサが好きなんだよねー。」と話したら、「彼はクレイジーで政治的過ぎる!」と言われました。小説からは、そんな感じは伝わってこないのだけれど。。。

彼の作品は、社会派の重厚なテーマを扱いつつもとにかくテンポが良く、読み始めるともう止めることが出来ないのが特徴。
『シンコ・エスキーナス街の罠』は、そんな彼の作品の中で珍しく短くコンパクトにまとまった作品になっていますが、盛沢山な内容になっています。

物語は、テロが盛んなアルベルト・フジモリ政権時代のペルーが舞台。乱交パーティーの写真を元に富裕層の男をゆする三流ゴシップ雑誌の編集長の変死の真相が明らかになっていくにつれて、当時の政権の悪行も明らかになっていくというのが主なストーリーライン。

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リョサは、1990年の大統領選で圧倒的に有利と言われていたにもかかわらず、ダークホース的存在であったフジモリ氏に敗れています。そのせいか、フジモリ政権時代が如何にひどかったかを圧倒的なストーリーテーリングで読ませてくれます。実際にフジモリ氏は、殺人、汚職、人権侵害の罪で現在禁固刑となっております。(先日、恩赦を受け10年ぶりに自由の身になったのだけれど、すぐに取り消されました。)

政治的なシリアスな作品に見えますが、この小説、レズビアンに目覚めるシーンに始まり、最後は夫婦交換(スワッピング)を仄めかして終わるというエロティックな物語も同時に進行してます。

フジモリ氏に敗れたことに対する恨みや、彼の政治に対する批判というネガティブな感情が創作意欲の源にある一方、やはり女性に対する憧れや欲求は、男性にとってはモノを作るうえでは重要なのでしょう。。。
そういう強力な感情や欲求を持ち続けているからこそ、このようなパワフルな作品が書き続けられるんだろうなーと思いました。

ということで、シリアスな社会派ミステリーも読みたいけど、官能小説も読んでおきたい。でも時間がないぜ!!という方にはもってこいの小説です!

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