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ご当地グルメ不信、門司港にて解消される(1/26)

昨日今日と、取材のために福岡出張。といっても福岡市内ではなく、福岡県の赤村という村の求人のお仕事。もう5年くらい毎年通ってるのだ。

取材は無事終了。仕事だけして帰る、というのも味気ない気がして、門司港にたちよることにした。なにがあるのか、どこにいくのかもぜんぜん調べず、近そうだから寄ってみるか!くらいのノリ。村上春樹さんの本に『ラオスにいったい何があるというんですか?』というものがあったけど、「門司港にいったい何があるというんですか?」というくらいの、かる〜い気持ちだった。

そしたらこれが、たのしかったんである。

駅舎からでると、すぐに「あ、ここ好きかも」と直感した。日本だと、駅から出てすぐロータリーがあることが多い。だけど僕の数少ない海外旅行の記憶だと、ヨーロッパの駅前は公園みたいな広場がある印象で、好きだった。

門司港の駅前にもちいさな広場があって、それがなんだか、「ようこそ」とむかえてくれるかんじなのだ。正直、さっきまで「はやく帰って寝たい」モードだったのが、旅人モードにきりかわる。なんでも見てやろう、たくさん食ってやろうモード、突入。

時刻は13時。なにも調べずに来たのだけど、腹が減ったので、すこしググる。どうやら焼きカレーが有名らしく(それもこのタイミングで知った。まじで無知…)、僕はあまりご当地グルメというものを信用していないのだけど、来たからには食っとかんと!ということで、いくつかのお店の情報を眺める。

ロバート秋山さんの実家(!)っていう店もすこぶる気になったが、「地元から愛される店」というレビューの言葉と、飾り気のない店構えに心惹かれて「こがねむし」という店へ行ってみることにした。

純喫茶風の扉をがらりと開けると、こじんまりとした店は満席。白いベレー帽をまぶかにかぶった(ベレー帽ってまぶかにかぶるものなのか?と思ったが、それがすごく馴染んでいるのだ)、かわいらしいおばちゃんが「ちょっとまってくださいね〜」と声をかけて、いましがた食べ終わったお客さんのお皿を片付け、奥の席を開けてくれた。「ここ、常連さんが大好きな席だから。いちばん落ち着くのよ。ごゆっくり〜」と。

おばちゃんはてきぱきと動きながら、お客さんとおしゃべりしている。釜山とフェリーで航路がつながっているからか、韓国人のお客さんもたくさんきていて、おばちゃんはなにやら嬉しそうに韓国語で話しかけていた。「なんとかかんとか。カムサハムニダ〜!」。あとから聞いたら「『どうぞ、展望台の割引チケットです』って。昨日若い韓国の人に教えてもらったの」だそう。それに対して、相手は「ありがとう〜」と、日本語で返していた。シュールだ。

店内をみわたすと、『ハリーポッターと賢者の石』のときのダニエル・ラドクリフの鉛筆画、演歌歌手のポスター、クッキングパパの作者のサイン、アンパンマンなど大量のぬいぐるみ、あいだみつをの詩、そしてカレンダーがなぜか6枚も。そのうちの1枚、なんとか工業株式会社からもらったんであろうカレンダーには「1/17 ダスキン、忘れるな」と書いてある。

『A Whole New World』のピアノバージョンが流れる店内で、不思議な店だなぁ、と思った。たぶんカレンダーにしろぬいぐるみにしろラドクリフくんにしろ、ひとからもらっちゃったんだと想像する。もらっちゃったものだから、飾らないわけにはいかない。その結果が、このカオスな店内なんだろう。なんだか人間味があるなぁと、ニヤニヤしながら店内をながめていると、「おまたせしました〜」と、焼きカレーが到着した。

ひとくち食べると、これは…美味い! カレーのうえに焼いたチーズかかけられていて、まろやかな味わいのあとに、ほんのり香ばしい余韻がのこる。それにくわえて、カリッと揚げられたオニオンが食感に変化をつける。まんなかまでたどりつくと、隠れていた卵がとろっとでてきて、うわお!と叫びそうになった。たたみかける味と食感の抑揚。大盛り一皿、まったく飽きることなくたいらげた。食べ終わるのが惜しい、と思った食事はひさしぶりだ。

先に書いたように、僕はこれまでご当地グルメ不信だった。ある観光地にいったとき、そこのご当地グルメの名店と呼ばれる店を訪ねたのだけど、店員が横柄で、しかも行列してるわりに美味しくなく、ただものめずらしいというだけで人が来ているんだろうなこれ…という感じだったのだ。

それ以来、ご当地グルメと聞くと、「話題性をもとめてアクロバティックなことをするあまり、味はともなわなくなってしまったもの」ってイメージを持ってしまってた。それが「こがねむし」の焼きカレーでくつがえされた。マジでうまい。遠くて通えないのがざんねんなレベル。偏見もっててごめん、焼きカレー。ごめん、全国のご当地グルメ。

「美味しかったです」と伝えると、「まぁ、ありがとう!お住まいお近くなの? まぁ、東京からお仕事で? あら〜。じゃあ、また出張のときはきてくださいね〜」とおばちゃん。ぜひまた! と、社交辞令ではなくこたえた。

門司港の感想を書くつもりが、「こがねむし」の感想を書いてたらバテてきた。ほかにも海峡ミュージアムとか、おもしろかったです。でもそれを超えるくらい、印象に残る店だった。「地元から愛される店」というのも納得。愛され力がものすごい店だった。門司港を訪れた際は、ぜひ「こがねむし」へ。



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