社会人になってから免許を取る奴はあほ、とも言い切れない。②
前回:社会人になってから免許を取る奴はあほ、とも言い切れない。①
大学最後の春休みは、私史上もっとも至福の日々であった。
趣味の音楽に没頭し、YouTubeとニコニコ動画の無限にシャトルランをしつつ、何年も積み上げていたゲームの消化を試みたりした。
(最後に関して全クリはまだだ。)
そんな最高に怠惰で甘美な日々を過ごす中で、
普通自動車第一種運転免許(AT限定)
などという堅苦しい文字の並びが頭からスルりと抜け落ちて行くのは必然である。
たまにふと、思い立ったように予約をして、送迎バスの停車場所に向かう日もあった。
しかしそんな日は必ず憂鬱なもやが体にたちこめる。
それはさながら、夏休みに何故か存在する登校日や、
断るに断れず駆り出されてアルバイト先に向かう時の気分に良く似ていた。
バスで40分もかかるというのもいただけない。
教習所の送迎バスの運転手とは、やはり運転技術には相当自信があるのだろうが、なにせ運転が荒い。
「おいおい…交差点はもっとスピードを落として侵入しろ、と教わったぞ…」
という突っ込みが頭をよぎる。
私は毎度10分でバス酔いを起こした。
「春休みは2カ月もあるんだから…」
「まだ2月は寒いから…」
「卒業旅行があるから…」
「友達と遊べるのは今だけなんだから…」
言い訳なんてのはいくらでも出てくる。
車の運転が嫌いな訳ではなかった。
むしろ、適正検査も教官の評価も良好。
しかし、大学最後の春休みと教習所、どちらが大事かと言われれば、圧倒的に大学最後の春休みでしょ?
それだけのことだ。
そして、気づけば4月2日。
入社式当日を迎え、私はスーツに腕を通した。
《きっと続く》
↓続きました
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ありがとうございます。 書きたい時に、書きたいことを。 これからも日常を切り取って描写していきます。