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試合前のシュート練習は両チーム強そうに見えるのに、試合が始まったら案外差がついてしまうのはなぜ?

身に覚えがある人多いのでは?

自分が高校生の頃のインターハイ、自分達が敗退したあと、あるいは次の日。

次の試合準備のため、ハーフコートアップ (※1)をしている2チームを見て、

「うわー、両チームいいシュート打ってるなあ」
「球走ってるーー」

と思うことがよくありました。(自分達は負けた後だから余計、綺麗なコートでダイナミックにシュートを打つ選手たちを見るとそう思う:余談)

(※1)ハンドボールでは、自分達の前の試合のハーフタイム (10分間か15分間)にゴールを使ったアップをすることがある、コロナ禍になり試合と試合の時間が空くようになってからはハーフタイムにコートを使うことは少なくなった...?

ただまあ、試合が始まってみると前半こそ、そこまで点差が離れることはないが、後半残り15分を切ったところから得点差が徐々に開き始め、試合終了時には10点差。

みなさんもよくみる光景じゃないでしょうか?

今回はこの現象はなぜ起こるのか、原因について考えてみようという謎企画?謎コラムです。

まず、ハンドボールのゲームにおいて得点差に結びつく1番の要因ってなんだと思いますか?もちろん、要因自体は、シュート力であったり、身長であったり、ミスの回数であったり、たくさんあると思いますが。

同じようなシュート力 (運動能力)を持つ選手の集まり。なぜ点差が離れるのか?

僕の仮説では、「個人戦術力」に差があるから。だと思っています。

要するに、ウォーミングアップで打っている力強いシュート、それらを打つ機会を創出するために、実際の試合の中で選手個々人がどう考えて、動いているのか。

「え?いろんな種類のフォーメーション使えばノーマークできる!」
「2枚目の1:1が弱いからそこ攻めてサイドシュート多く打つぞ!」

これらの作戦を使えばシュートは生み出せるのでは?

確かにそうです。よくチーム力と表現されることが多いですが、スイミーのように(伝わらなかったごめんね)チームとしての方針でシュート到達率をある程度高めることができます。

では、

フォーメーションが読まれたら?60分同じフォーメーションは通じる?2枚目のディフェンスが目の前のバックプレーヤーにマンツーマンを仕掛けたら?

対応できるでしょうか?

個人戦術はチーム戦術を編成するひとつ前の段階だと思っています。

「目の前のディフェンスが高いのであれば、その下にピボットをちらつかせてマークが被ったところを突破する、下がってしまうのなら打ちに行く、と見せかけてパス、さすれば反対に大きなスペースが。」例えばね。

このような感覚を意識的あるいは無意識的に試合中にプレーとして発出できるかがハンドボーラーとしての根本的な価値に繋がるのではないかと思っています。そして、それらを無理矢理にでも言葉にできる選手は本当にすごい。

そういう選手を私は「個人戦術力がある選手だなあ」と感じます。

要は後出しジャンケンできる選手ですね。あ、そっち行くのね、じゃあこっち行くよ。みたいな。

元木選手のプレーはまさにそんな感じしませんか?映像で見ていたら、ゲームをプレーしているように、3Dの空間をハンドボールのルール内で自由に動ける。

違いを出せる選手っていうのは見ていてワクワクします。彼らが1点を積み重ね、得点チャンスを生むから、同じシュート力を持ったチームでも点差が開くのかなあと。

試合に勝つための要素とは?

その感覚を少しでも裏付ける文献ないかなあと思って探していたら次のような文献が見つかりました。

筑波大の先輩がゲームにおけるKPIを調査した研究をされていました。どの要因が勝利に1番結びついているか。を統計的に明らかにした研究です。

その研究によると、


勝利チームは、攻撃成功率、シュート到達率、シュート成功率、の全てに優れており、傾向は、特に6:6状況、速攻局面および遅攻において、また速攻局面の中では1次速攻において顕著である。
年代が高くなればなるほど(比較したのは小学生から大学生)、遅攻および6:6状況の攻撃成功率が勝敗に大きく影響する。(一部抜粋)
小俣貴弘ほか(2020):育成世代におけるゲームの勝敗に影響を与える要因

まあ、勝ってるチームなんだから当然かあ、と思われるかもしれませんが、攻撃成功率やシュート成功率と比べて、シュート到達率に関しては先述した通り

「いかに DFと対峙してシュート局面まで突破できるのか」

そこには個人戦術力が大きく関わっている。という理論ですね。
結局ハンドボールは60分間もあるので、試合中にいろんな前提条件含めて考えを整理したり、適応していく必要があるんでしょうね。

だから点差が開く最後の15分間は、見ていると面白い。
「俺、次はグー出すから!」と言いつつ、チョキを出してみたり、その裏を書いてパーを出しているやりとりが、ハンドボールに落とし込まれているわけですから。

他にも、Yamada et al.(2014)によると

勝利するチームは速攻での得点が多い、特に1次速攻での得点が多い
Yamada et al. (2014):Comparison of game performance among European national women's handball team

とあり、ディフェンスにおいてもマイボールにして簡単に速攻に繋げられるような DFはとても価値があります。おそらく、1次速攻につながるDFの結果は、最後の最後まで絞ってGKが簡単にセーブできる状況か、インターセプトしていく状況なのだと思います。つまり、ここでも個人戦術力です。

アオアシってご存知?

この話をしようと思ったきっかけは地方のサッカー少年がトップクラブのユースに入って奮闘する過程を描いた漫画「アオアシ」を読んだから。

個人戦術力、私自身、大学に入って初めて知った言葉で、あまり聞きなれない言葉かもしれないですが、今後絶対に注目されていくだろうし、育成年代では特に大事にしろといわれるようになる言葉だと感じてます。

大学時代、ハンドボールコーチング論の授業で

個人思考力×個人技術力=個人戦術力

だと、学びました。
そういう頭でゲームを見てみるとまた違った見方ができるので面白いです。

日本リーグも開幕しましたね!有料ですが、お金をかけて作っているコンテンツだと思います、それくらい人も動いています。

何より、試合を見て、反応して、っていうのがハンドボール界への投資なんだろうなあ。と思います。

今回はこれくらいで!

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青戸選手と!

富山ドリームス#22 森永 浩壽(もりなが こうじゅ)

2022年の今、フルタイムで働きながら日本リーグ参入を目指すハンドボールチーム"富山ドリームス"の選手として活動しています。ここでのサポートは自身の競技力の向上(主に食費です...)と、富山県内の地域との交流に使わせていただきます。