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Last Waltzの思い出

小学校6年生の頃、卒業生の茶話会でクラスごとに合奏をすることになり、自身のクラスは、「Last Waltz」をすることになりました。よく知られたスタンダードナンバーですが、当時の音楽の先生も、小6の合奏にしてはわりかしマセた選曲をしたもんだなあと思います。
この曲、Cのクリシェで始まるイントロが洒落ていて、なおかつ僕にとっては生まれて初めて「メジャーセブンス」の響きを意識した曲でもあります。

そして、自分が生まれて初めて、ピアノの発表会以外の場で人前でピアノを弾いた曲でもあります。

ちなみに自分が小中学生だった80年代後半から90年代前半は、ピアノを習う人は結構多かったけど、男子でピアノを弾く人はまだまだ少ない時代でした。
いまやストリートピアノで凄腕を披露したり、バリバリ即興ぶちかますピアノ男子もゴロゴロいますけど、その頃は、中高生でショパン弾いたら絶賛されるし、ましてや即興耳コピで流行りの曲をアレンジして弾いた日にはたちまちヒーロー扱いでした。いい時代でしたねえ(笑)

そんな時代のある日の音楽室。楽器のパート決めをすることになりました。

当時の自分は、人前でピアノを弾くのはなんとなく恥ずかしいなと思いつつ、けど、男子でピアノ弾く人なんてほとんどいないし、割と弾ける自信があったので、ちょっと弾いて周りをびっくりさせてもみたいなと、ちょっとひねくれた感じの子どもでした。
そんな感じではあったものの楽器を決めることになった今回も、まあ、たぶんそこそこ上手く弾ける女子とかいるんだろうし、目立たないリコーダーかピアニカあたりでいいか、なんて思っていて、そこを希望するつもりでした。なんか感じ悪いガキですねえ。

そして、担当するパートを立候補式にどんどん決めていく中で、ピアノのパートを決めることになりました。
ところがクラスに何人かの女子にピアノを弾ける子はいたものの、誰も立候補はなく、先生も「うーん」と少し考えてから、「そしたら、この中でピアノを習っている人は手を挙げて」と言いました。
内心「うげっ」と思いつつ、左手を半分くらい、目立たないように挙げたら、周りのクラスメイトから「え、お前ピアノ弾けるん?」みたいな目で見られて、あまり注目しないでと思いつつちょっと悪くない気分に。勝手なものです。
自分の他に2〜3人の女子が手を挙げていて、「じゃあ、順番に弾いてみて」と先生は1番前に座っていた女子を呼んだのでした。
思ってもいない展開に少し焦りましたが、意外な形で人前でピアノを弾くことになり、恥ずかしさ半分、ちょっと嬉しいかも半分な気持ち。

最初に弾いた女子は、ソナチネか何かを辿々しく弾き、次に弾いた女子は、エリーゼのためにをさらりと弾いていました。その次の子はブルグミュラーの何かを弾いてたと思います。
そして自分の番がやってきました。

当時の自分は、ツェルニーの練習曲集がそこそこ進んでいて、モーツァルトのソナタなんかも割と弾けるようになっていました。そんなだけど、既存の練習曲は嫌だし、自分の弾きたい曲を選んで、先生に見てもらっているような感じでした。
で、自分がその場で弾いたのは、ヘラーという作曲家の「タランテラ」。あまり有名な曲ではありませんが、割と派手な曲で、そこそこ難しい曲でした。
ピアノの前に座った時の頼りなさそうな様子とのギャップが大きかったのか、ピアノを弾き始めたら、どこからともなく低いどよめきが起こりました。なんだかわからないけど、ものすごくいい気持ちになったのを思い出します。キリのいいところまで弾いたら、先生が「うん、そしたら今回はあなたにお願いしようかしらね。よろしく」と、自分が弾くことになりました。
ほんまにええんかな、と思いつつ、内心は結構嬉しかったのを覚えてます。

そんなわけで手渡された楽譜が、ラストワルツだったわけですが、昔の映画音楽だなんて知りもせず、なんか弾いたことのないような雰囲気の曲だなと思いながら譜読みをはじめました。
で、あのイントロを弾いたわけですが、なんだこのオシャレな始まり方は、とのけぞり、メジャーセブンスから始まる出だしのメロディに一気に釘付けになりました。
当時はまだコードネームを知らなかったのですが、この響きは自分の頭に完全にインプットされ、のちにコードネームを知ったときに、この刺激的な響きがメジャーセブンスというコードなのかと知ることになります。

ちなみに高校生のころに音楽で作曲の授業があって、初めてピアノの曲を作ったのですが、その曲はもろ、メジャーセブンスを多用した、ラストワルツに多分に影響を受けた曲でした。

そんなことがいろいろ思い出されるラストワルツ。
何年かぶりに即興で弾いてみました。
よかったらどうぞ。


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