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悩むことと考えることの違い【反芻思考について】

反芻思考とは、嫌な思い出やネガティブな話題を何度も思い起こし、自分を苦しめる思考のことです。うつ病の人はこの反芻思考が症状として現れることが多いとされています。反芻思考は嫌な出来事を思い起こすたびにネガティブになるし、頭も余計にはたらかせることになるので、結果的に疲労が溜まる原因になります。

この記事では、「考えるとはどういうことなのか」を中心に説明し、悩むことと考えることの違いや反芻思考の対策についてまとめます。

・【反芻思考】は【考えている】とはいえない

反芻思考は、意識的に考えることとは違い、ただ思い出して反応しているだけです。考えるということはパソコンに例えるとハードディスクからメモリにデータを移し、CPUによって加工、処理されるような過程であるのに対して、反芻思考はハードディスクからメモリにデータを移しているだけなので考えることとは別の過程になります。

うつ病の人は考えすぎているとよく言われますが、建設的に考えることが過剰なのではなくて、実は色々なことを思い出すことが過剰なのではないでしょうか。

考えていないから結論が出ず、応用が効かない。いつも同じところで腹を立てたり落ち込んだり不安になったりして、結局疲れるということの繰り返しになっているかもしれません。

自分の声に向き合うというよりは、ただ思い出しているだけになっているので、解決策やほかの道を考えることが難しくなります。湧き出す思考にこだわると視野が狭まり、もう打つ手がないとか、どうにもならないなどと悲観的になってしまうことにつながります。

・悩むことについて

悩むということも実は考えているとはいえません。「〇〇で悩んでいる」というのは考えがまとまっていなく、漠然としています。考えるということは悩みを整理し、分解し、問題を特定して具体的な解決策を見つけ、行動を起こせるようにすることです。だから「悩んでいる」という状態は考えたつもりになっているだけで、ほとんど思考停止と変わりません。学ぶことや問題解決につながらない。悩むのは自分のことをきちんと考えているとはいえないと考えられます。

ただ、「悩みがあるから人に相談する」のは良いと思います。自分で解決できないことを専門家や他の人に相談すると問題を整理したり、考えを進めるのに役立つからです。悩みを吐き出し、抱え込まないというのも大事なことなのでしょう。

悩むことから抜け出すためには、悩みを紙に書き出して客観的に見つめ直すのがオススメです。自分の中でぐるぐる悩んでいたことを自分から引き剥がして紙の上に整理し、強制的に「もうひとりの自分」から見つめられるようにすると冷静さを取り戻して考えることができます。

・考えること

考えることは、悩みや考えたいことについて、整理し、分解し、問題の特定をして解決策や手段を見つけることです。

頭の中にいろいろな悩みや考えが湧いてきますが、漠然と考えるだけで終わらせるのはなるべくやめたいですね。

例えばうつ病になったとき、自暴自棄になったり、人のせいにしたり、どうしていいのかわからないと悩んでいても何も現状は変わりません。「現実を受け止めどうするか」を考えると意外とできることや選択肢はあることに気づきます。

漠然と思っていることもよく注目してみると、他の悩みと結びついたり、根本的な自分の思考のクセに気づくこともあります。思い浮かんだことから考えを広げたり、奥行きをもたせて考えると自分の思考や反応が整理でき、客観的に自分を見つめ直すことができます。結果的に自分の思考パターンが見つかり、自己理解が深まることにつながります。

「自分はこれでいいと思う」「自分はこうしよう」という結論にたどり着く過程が考えるということです。

自分が抱えている問題をひとつずつ自分で解決できると自信もつくし、自己信頼感・自己肯定感も高まっていきます。

・自分との対話

「今自分がしたいことは何?」といつも問い続ける。例えば、YouTubeで動画を見ていていいの?今やったほうがいいことはない?と自分に問いかけてみます。すると、実は今しかできないことや、コツコツ取り組むことが必要な作業があることに気づくかもしれません。

そこで「今自分が本当にしたいことはなにか」「自分が本当に求めているものは何か」を考えられると漫然と時間を過ごしていた場合よりも自制心が高まり、自分が本当にしたいことに集中できるようになります。すると自分が望む生き方に近づくことになり、自然と自己実現に向かうことになります。

自分との対話を改善していくと、自分の気持や体調にも気づけるようになる。今は休んだほうがいい?それとも集中して頑張ったほうがいい?といった問いかけを自分にすると、無理をして頑張ることや、怠けてしまうことも軽減できます。

優先順位を自分の中に作っておくと、自分が大事にしたいことに気がつきます。自分にとっての優先順位は自分で決めるしかない。自分の優先順位の付け方や生き方が周囲の人たちとの考え方とぶつかって非難されたら、それは自分が何を信じ、何を大事にしているかが確認できて役に立ちます。

"悩むことについて"の節でも紹介しましたが、紙に書き出して考えると自分の思考を客観的に見つめることができるので、考えを整理するのにとても便利です。

普段自分が使っている言葉にも注意を払いたいですね。人に向かって話す言葉だけでなく、自分が頭の中で考えている言葉にも気を配りたい。自分が使う言葉はそのまま自分を形作ります。どのような言葉であっても、自分が話す言葉は自分が選んているものであって、その言葉によって自分の感じ方や、周囲の人々の反応に影響を与えます。自分で使う言葉を選ぶのは、自分が何を大事にしているのかを決めることと同義です。

・まとめ

【反芻思考や悩むこと】と【考えること】は区別したい。自分は今ちゃんと考えているのか、それともうだうだ悩んでいるだけなのか、思い出しているだけなのかを区別できると脳が反芻思考や悩みで消耗するのを減らせます。反芻思考や悩みに気づくのには瞑想(マインドフルネス)も効果的でしょう。

自分との会話にもよく注意を払いたい。使う言葉を選ぶ、紙に書いて考えるというような工夫をして、自分との会話をより自分らしく、建設的なものにしていけるとストレスも減るし、生活の質も上がり、自分のしたいことにも集中できるようになるのではないでしょうか。

・参考文献


※この著者の新刊に関する記事を書きましたのでよければご覧になってください。「人見知り」として生きていくと決めたら読む本(著:午堂登紀雄)


・追記【おすすめの本】(2019/10/10)

考えるために書くことが大事だと解説してきました。ただ、書いて考えるのにも様々なテクニックがあります。そして、色々な悩みを考え、解決するための書き方を紹介した本がとても有用だったので紹介します。

心理療法でも使われる記録術を中心にまとめてある本で、ネガティブな感情を吐き出し、ワーキングメモリを鍛える「筆記開示」、大事なことを回避するのを防ぐ「TRAP・TRAC法」、疲れた時の判断を助ける「対比較分析法」は私も使って効果を実感しています。昨日買ったばかりですが、「書いて考える」のにとても有用だったので紹介します。


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