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#246 鹿せんべい

 私と妻は孫のりょうたと3人で奈良の街に行った。ビルの屋上からは、東大寺や興福寺などのお寺が見えた。その向こうには、若草山が広がっていた。

 お昼前に興福寺の近くの奈良公園に行った。公園の入り口で、鹿せんべいを買った。おばさんは、「ゆっくりと鹿にあげて~。」と言って、りょうたにわたした。

 芝生には、鹿が数頭ずつ群れていた。小さな鹿も、メスの鹿も、立派な角(つの)があるオス鹿もいた。その群れを囲むように、観光客が鹿せんべいをあげていた。公園の中央には、ミストシャワーのついた東屋(あずまや)には、観光客も鹿も涼を求めて集まっていた。

 私は、メスの鹿の口元に鹿せんべいを持っていって、鹿せんべいのやり方をりょうたに教えた。りょうたは鹿の口元に、鹿せんべいを差し出したが、鹿がせんべいを食べようとした時に、芝生の上に鹿せんべいを落としてしまった。

 私たちは、小さな鹿を探した。小さな鹿のそばでしばらくいた。りょうたは、小さな鹿の口元に、鹿せんべいを差し出した。せんべいは、小鹿の小さな口の中で少しずつ食べられていった。笑顔になったりょうたは、もう一枚ゆっくりと鹿せんべいをあげていた。

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