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#288 せんべい

 昨日は母の13年目の命日だった。夕方、仏壇に果物をお供えし、妻とお参りした。「もう12年経つんやな~。」と妻は言った。

 母が息を引き取ったあの日は、忙しかった。その数日前から、何回か発作が起きて、後頭部をベットに打ち付けることがあった。その時、目は見開いていた。診察の先生は、「それぞれの細胞を閉じる作業をしているのです。知り合いの方に連絡してください。」と言った。

 当日の朝は発作もなく落ち着いていた。私と姉夫婦は、葬儀のことを含めてこれからの手順を話し始めた。私たちが、母の顔を見ながら話し合っていた。そのほんの数分の間に、母は息を引き取った。「アレッ⁇」「エッ!!」。私たちは顔を見合わせた。おだやかな母の顔だった。午前8時4分。病室に、朝の光が差し込んでいた。

 その日生まれた初孫のこと・住職や職場や葬儀社との話し合い等で大混乱の一日だった。

 今日も12年前と同じ晴れた秋の日だった。

 夕方には、果物と好物のせんべいを供え、私と妻は仏壇に手を合わせた。

仏壇に供える

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