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無印良品とインテリアデザイン。


以前、無印良品についての文章を書かせていただいたことがあります。
無印良品はどのような企業なのか、なぜ生まれたのか、そして起業者である堤清二さんは一体どのような思いで無印良品を立ち上げたのか、ということについてです。

そこで今回は、無印良品の中枢とも言えるアドバイザリーボードの一員であり、
無印良品の立ち上げからブランディング、商品開発にまで関わってきた、インテリアデザイナーの杉本貴志さんと無印良品を照らし合わせながら文章を書かせていただきたいと思います。


それではさっそく、、、。


1980年の誕生以来、無印良品には数多くの優れたデザイナーやクリエイターたちが関わってきました。その中でも特に深く関わり続けてきたのが杉本貴志さんや田中一光さん、小池一子さんら率いるアドバイザイリーボードです。

そして、店舗デザイン、空間デザインをメインに携わってきたのがインテリアデザイナーである杉本貴志さんであり、無印良品誕生から3年、東京・青山にオープンした無印良品第1号店のデザイン、設計をしたのも杉本さんです。

この青山店のデザインは無印良品の思想や企業としての社会に対する責任が強く反映されている店舗だと感じています。

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このように古材を使ったフローリングや古びたレンガの壁、古い味噌樽などを用いた空間からは、時代の流れやそのものが過ごしてきた時間がデザインとして表現されているように感じています。

このことに関して杉本さんはこのように話しています。

新しいモノに対する魅力を見つけていきたいという思いと同時に、古いモノの価値を今一度見出したいという気持ちがある。
それは「古いからいい」「新しいから悪い」というものではなく、どちらであってもそのモノが生き生きと語りかけてくるものを模索したい。


これは無印良品のビジョンでもある、「これがいい」よりも「これでいい」を目指すことにも深く関わってくる内容なのだと感じています。

そもそも無印良品は1960年以降の大量生産・大量消費に対するアンチテーゼから生まれたものであるとはされているのですが、それは決して「安いから悪い」「高級なものがいい」ということではなく、モノの選び方として「〇〇がいい」ではない選び方の提案であると考えています。

このような思想を元に無印良品青山店の空間を見てみると、古い木材にしてもレンガにしても、決してアンティーク品や骨董品としてそれらを扱っているのではなく、それらのモノが過ごしてきた時間や、そのモノが存在していること自体に価値を見出し、空間を構成しているように感じます。

そして、青山店のもう一つの特徴として「ブティックのような」というワードが挙げられます。

今でこそアパレルや生活雑貨などの商品も豊富に取り揃う無印良品ではありますが、当時取り扱われていた商品はトイレットペーパーや食料品などの日用品がメインでした。

その日用品たちが「ブティックのような」空間に並べられること自体が当時の生活者や日本の社会にとって非常に画期的であったのだと言います。

無印良品青山店がオープンしたのは、第二次オイルショックから数年が過ぎた頃で、トイレットペーパーなどを買い占める行為がまだ記憶に新しい時期だと言います。(まさに今の世界と同じですね、、、。)
スーパーマーケットなどで生活必需品を大量に買い占める行為に後ろめたさを感じながらも、そうせざるを得ない状況の中で、「青山の無印ではその気持ちを感じずに買える」という気分を生活者に提供していました。

このような社会背景の中、後ろめたさではなく楽しさが勝るような状況を提供することができたのは、無印良品ならではの魅力であり、青山店の空気感が持つ力が大きかったのではないかと感じます。


そして、そのような無印良品の持つ空気感は、店舗空間に限らず思想として受け継がれており、結果として無印良品としてのイメージを構築しています。
無印良品のファンの中には、好きな理由として、「無印良品で買い物をしているといい人でいられる、心地よい気分になる」という人も多いのではないでしょうか?


僕自身、杉本さんのデザインや考え方を通して、特に強く感じていることが一つあります。
それは「価値観に対する寛容さ」です。

杉本さんは、旅が大好きな方で世界各国さまざまな場所を訪れていたといます。
最先端のデザインを発信するヨーロッパやアメリカはもちろん、インドやバリ島、ベトナムなどの土着的な文化がいまだに生活の中に顕在している土地まで。

杉本さんはその土地に訪れては、そこでしか出会えないモノや食、暮らしを模索していたのだといいます。
そこで出会うモノや食、そして暮らしは、当然のごとく国によって大きく異なります。

このような多種多様な価値観とリアルに触れ合いながらも、その中で常に「いいもの」を探し続けているのだといいます。

だからこそ何か一つのものや価値観に対して、「これがいい」と限定的に評価をするのではなく、ただただ、いいモノを探し続けるという経験こそが、さまざまな価値観に対する寛容さを感じさせるのではないかと感じています。


いまでこそ、日本国内に限らず世界中で認知されている無印良品ではありますが、なぜこれほどにまで世界各国で受けれられる企業であり続けることができているのか。

それは、「価値観は多様である」という当たり前のようで、いまだに当たり前に捉えられていないことに対して、忠実に向き合い続けている杉本さんやその他のアドバイザリーボードの方々の思想が、しっかりと企業のビジョンとして、そして商業行為として反映されているからなのではないかと、そう感じています。

ということで、今回はアドバイザイリーボードの一員である杉本貴志さんと無印良品を照らし合わせながら文章を書かせていただきました。

コロナ感染の影響もあり、日本に限らず世界各国の多くの店舗で、臨時休業を余儀なくされており、それによる過剰在庫や売り上げの問題も出ているのではないかと思います。

そして、それはもちろん今だけの問題ではなく、これからの「小売業の在り方」を問い直されていることであるとも言えます。

そのような問いに対して、無印良品に限らず業界全体を通してどのような答えを示すことができるのか、僕自身考え続けたいと思います。


それでは本日も最後までお付き合い、ありがとうございました!



参考:A LIFE WITH MUJI 杉本貴志



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