隣りの芝生は青く見える?


「隣の芝生は青く見えるって言うけど、ほんとそうなんだよね。ないものねだり」

3ヶ月前に出産をした友人は現在、産休中だ。


「あんなに産休育休を望んでたのに
いざ入ると仕事復帰したくて仕方ないよ」

結婚ラッシュが一段落ついて
いま私の周りでは出産する人が増えてきた。


結婚もしたことないのだから
出産なんて未知の世界で
友人の出産ストーリーを聞いているだけで
急に腹痛に襲われそうな感覚でいる。


かれこれ15年も前に私たちは出会った。 

高校の入学式で、
様子を伺っている人が多い中、
彼女は一際目立っていた。

とにかく、うるさい。


もう友達が出来たのか、
すごいなぁなんて感心しながらも
きっと挨拶程度で深い仲にはならないだろうと思っていたけど、結局私たちは気付くと何もかも逐一報告し合う仲になっていた。



「数学何点だった?
どうせコユキちゃん出来てないとか言って、
点数いいんでしょ?」


彼女は、「勉強してない」と言って勉強していた人たちをことごとく非難して、私の所に来た。


「私全然取れてなかったよ〜」

楽天家の私は特に気にもせずに言った。


「またそういうの。
もう信じない。みんな結局してるし。
じゃあ点数見せ合おうよ」

少しムキになった彼女は
私に冷たい目で吐き捨てる。


"せーの!"

「あ、あれ、、、
コユキちゃんって見た目頭良さそうなのにね(笑)」

ホッとしながら、仲間を見つけたような顔は今でも忘れない。

なんだか2人とも笑いが止まらなくなってしまって、高校入学して早々に私たちは見事に補習仲間になった。

成績が悪いクラス下位の人は
親呼び出しという、
たった3人しか選ばれない狭き門にも
私たちはお互い見事にクリアしたし
2年生に上がるという事が
この世の何よりも難しいと思えた出来事も
同志として支え合ってきた。


そんな同じ教室で一緒に補修を受けていた彼女が、今、目の前で我が子を抱いてオムツを替えている。


職場も友人も結婚ラッシュで
ただただおめでたい話が続く中
キャリアを築き上げた女上司と帰り道が同じになった時の会話が蘇る。


「もう話なんて合わないから
友達も変わってきたよ。
私は結婚してなくて
きっと向こうは子供の話をしたいと思うし
ずっと仕事をしてきた私だと
やっぱり世界が変わってくるよ」




結婚する選択も、しない選択も
出産する選択も、しない選択も
キャリアを積む人生も、積まない人生も 
どんな道でも選択できるように
描かれている令和時代


だけど、、、



時短勤務者の仕事を引き受け続ける人、

子供のために働き続ける人、

必死な想いでキャリアを積んだ上司、

誰の味方もしてあげたい世界の一方で

同じ角度から見ることが難しい時もある。



10年後、
私たちはどんな目線で
どんな会話をしているんだろう



目の前の友人に抱かれている小さな命


彼もいつか高校生になる。


私たちが出会ったように
くだらなくて愛おしい日常が来るその日まで

時々「元気ー?」と見に行ける日常が

私たちの間に
ずっとあったらいいな


そんなことを考えながら
帰宅した1日も

いつかきっと愛おしい日常の一つだ。

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