クスリは浮輪だってよ

OCDの治療の中での、薬の役割について書こうと思います。

「浮輪」って、なんのこと?と思っている読者も多いと思うが、その人たちには少し待ってもらうことにして、まず、薬の種類について説明します。

私は薬剤師ではないので、薬のことは、参考文献を引用しときますね。


世界でOCDによく使われる薬で、日本にあるのは、ルボックス、デプロメール、パキシル、ジェイゾロフト※1、レクサプロ※2(以上、SSRI)や、アナフラニール※3※1~3 これらの薬は日本では適用外処方になります。

図解やさしくわかる強迫性障害 原井宏明, 岡嶋美代


OCD治療に用いられる薬物は、クロミプラミン(アナフラニール)、フルオキセチン(プロザック[日本未発売])、フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、シタロプラム(セレクサ[日本未発売])、ベンラファキシン(イフェクサー)そして最も新しいものとしては、エスシタロプラム(レクサプロ)があります。

家族と取り組む強迫性障害克服ワークブック  カレン・J・ランズマン, キャサリーン・M・ルパータス, チェリー・ペドリック


まぁきっと、医師のお世話になると、どれかを出されることがほとんどでしょう。上記のどれにも当てはまらない場合は、医師に理由を聞いてみてもいいかもしれません。


それで、例の「浮輪」の話に戻ると。


「浮輪」という表現をしているのは、シュウォーツのおっちゃんである。

シュウォーツのおっちゃんと私が呼ぶのは、ジェフリー・M. シュウォーツという人で、医学博士。カリフォルニア大学精神医学研究教授。OCD治療の世界的権威。の人のことである。


この人の考えによると、薬は、水泳を習う時の浮輪の役割、つまり治療の補助をするだけだということだ。水泳を習う時に、浮輪を装着することで、水泳の練習をすることが容易になるが、浮輪をつけたからといって、泳ぎが上手になるわけではない。水泳を身に着けるには、能動的に泳ぎの練習をすることこそが、メインである。


患者の多く(ほぼ半数から三分の二)が、薬で症状を緩和することで、関心の焦点を移すのが楽になった。薬は、子供に水泳を教えるときの浮輪と同じ役割をはたす。恐怖を軽減して楽に「浮いて」いるあいだに、泳ぎを覚えるのだ。子供が水泳を覚えるにしたがい、浮き輪の空気を抜いていって、最後には外してしまうという点も似ている。

新装版 不安でたまらない人たちへ: やっかいで病的な癖を治す 著:ジェフリー・M. シュウォーツ, 訳:吉田 利子

と述べている。

シュウォーツのおっちゃんとは別の著者は、以下のように言っている。

薬物療法はOCDの症状を減少させ、CBTを用いて治療することを容易にします。薬物療法はうつと不安を減少させ、回復し、人生をよりよく生きることへの動機づけを高めてくれます。薬物療法で変化が見られる人にとっては、薬物療法を継続することが適当です。CBTを受けていない人で、
薬物療法を中止した際の再発率は
80~90%
です。(Yaryura-Tobias and Neziroglu 1997)

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つまり、これは、シュウォーツのおっちゃんの「浮輪」の比喩に言い直すと

浮輪をつけて、流れるプールでプカプカしているだけで、バタ足の練習をしたり、息継ぎの練習をしたりしていなかった人は、浮輪を取って、いざ泳いでみようとしたときに80~90%の人が溺れます。ということですね。


そりゃそうやろうなぁ。


という話になってしまうわけです。


ただ、病気の治療というと、風邪でも、肺炎でも、

薬を飲んで、ひたすら寝て治す。

というイメージが強いことから、薬がメインであって、温かくして寝たりなどという自分の努力は補助と考えてしまいがちですが、OCDの治療の場合は、

メイン:CBT、暴露反応妨害

補助:クスリ

であると、少なくとも専門家は考えているということを、知っておいて治療に向き合った方がよさそうですね。





強迫性障害から立ち直っていった先輩方のお話は、

「A. 実話 強迫性障害を克服 した」シリーズ  に

他にも

「B. 必ず間違うOCD家族」シリーズ
「C. 強迫のハゥトゥ 」シリーズ

などに記事があるので、よかったら、参考になさってください。




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