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最近の研修セミナー参加:発達性トラウマおよびフラッシュバック

忘れないうちに、最近参加してきた研修セミナーのことを書いておこうと思います。自分の備忘録ノートです。

1、浅井咲子先生 「発達性トラウマと身体的主訴の関連、そしてアプローチ方法」

前回、書籍情報でも紹介した浅井咲子先生。

今回は「原因不明の身体的主訴を発達性トラウマの視点から読み解く」という視点でのZOOM講座でした。
主に私のnoteでも紹介しているこちらの2冊にもとづくお話。

私のnoteご覧の方にはもはやお馴染み

「原因不明」というのは、医療機関で医師に診てもらっても身体的な異常が見当たらない症状のことを指します。
「ストレスの影響」「心理的な問題」と説明されることの多い症状群でもあります。

トラウマ関連にご興味があり、当記事をご覧の方の中には
頻繁に体調を崩して、一応心配なので受診するんだけれども、毎回、特に異常なし、様子観察、と言われて帰る」といった経験に心当たりのある方はいませんか?

具体的に一部例を挙げますと、
・過敏性腸症候群(下す、詰まる、おならが沢山出る)
・繊維筋痛症
・狼瘡(私は初めて知りました…)
・慢性的な疲労
・偏頭痛
・めまい
・光・嗅覚など五感過敏

…などなど。これらもほんの一部に過ぎません。

これらは身体科でもそうだったと思いますし、精神科・心理学の範疇でも、ほんの近年までどう理解したらよいのか?に関する決定打がありませんでした。

ACE研究をはじめ、その他多くの研究の積み重ねで言えるようになってきたことは、「トラウマによる神経発達が阻害されることによる影響、それはとりわけ自律神経系の不調として現れる」ということです。

そうした神経発達系に影響するものを発達性トラウマと近年呼ぶことが多く、それは年代の早い時ほど、その影響は受けやすい、といえそうです。

これらの該当する身体症状が多いと、一つひとつにフォーカスが当たることはあっても、その陰にあるトラウマの存在が埋もれてしまうために、本質的な治療に繋がりにくい、ということが生じます。

多くの人はあくまで「身体的苦痛を主訴として医療を訪れる」のであって、まさかそこにトラウマの影響があるかも、などとは誰も微塵も思いません。

自分の生きてきた人生のストーリー(=ナラティブ)の中にトラウマの視点は組み込まれていないので、当然でといえば当然です。

一方、ここがトラウマインフォームドケアが必要たる所以でもあります。


具体的なアプローチ方法…とは言ってもそこはケース状況によるため一般化できませんが、強いていうなら「調整」が重要なキーワードになります。

1、自身の神経系のクセにきづき、
2、自動化されている反応を、なるべく手動で別な行動に切り替えていくこと、
3、それによって感情調整のコントロール感を上げ、不安を和らげていくこと
そして

4、そのためのカウンセラーとの安心できる信頼関係の形成
のために、セラピストはどのような配慮や関わり方が可能か?

を丁寧に示してくださったような気がします。

個人的に記憶に残ったのは、何かをしようしようと「足し算」するのではなく、
むしろ余計な刺激を減らしていく「引き算」の発想の方が、(相手にとっては)大切、という言葉が印象的でした。

2,服部信子先生 「フラッシュバック対処と予防 今すぐ使える 誰でもつかえる トラウマのプロが教えるフラッシュバックのすべて」

こちらも前回紹介したこちらの本の出版記念セミナー。

服部信子先生は、youtubeでもトラウマケア系の情報を発信されていますが、しっかり講義を拝聴するのは初めてでした。

書籍の内容に沿ったものではありましたが、本の中にも書かれていない「隙間の部分」を教わることができ、参考になりました。
400人くらい?の記録的な参加者数だったようです。

やはり根本的には、フラッシュバックの対応は「過去から現在へ意識を戻す」が基本的な原理であること。

方法は沢山あるけれども、応急的な対応としてはシンプルなことに注力すること。

これは心理職に限らず、対人援助職は知っていて欲しい、と思いました。
詳しくは書けないけれども。。(本を買ってください。)

代わりにひとつ、公衆衛生的な観点から知識を共有します。

以前にインスタでは流しましたが、フラッシュバックや解離状態から意識が戻ってきたかどうか気軽にチェックできる方法に、BHS(バック・ヘッド・スケール)があります。

ほんのちょこっとでも意識が手前に戻ってきたかな?の感覚が掴めるのを目指す

日本語で「後頭部尺度」とも呼びます。

・「0」が完全に今ここにいる状態。意識晴明。

・「−5」は過去の出来事に意識が向いてしまっていて、今の感覚に意識が向かない状態(離れたところから自分を眺めているような感覚、膜がかかったような感覚)


として、「今、どのあたりに意識があると感じますか?」
と質問して確認します。

意識の位置がマイナスの方にいるとき、お話を中断して、本書に書いてあるようなやり方を参考に、意識を後方からなるべく前方に戻していきます。

その都度、少しづつ「今の感覚」に戻ってきていることを確認し、くりかえします。

詳しくは省きますが、
これが、過去から現在へ意識を戻すこと、の基本的なイメージです。

これはどういうときに使うのかというと、例えば
・嫌な考えや記憶が次から次へと浮かんでくるとき
・イライラや自責・自己嫌悪を止められないとき
・怒りでコントロールを失っている状態の人へ(一種のフラッシュバック。)
・思考が駆け巡って頭の中が過覚醒のとき

意識が後方にあるときは、前頭葉がシャットダウンしてしまっているため、理屈や言葉で説得しようとするのはあまり良くありません。

安心できる状況を確保し、「0」に戻ってくるまで、そっと寄り添うことが大切なように思います。

※知識の誤用とその悪影響を避けるために、具体的な情報については(あえて)伏せて書いています。(BHS以外)
詳しくはトラウマ専門のカウンセラーにご相談ください。

3、杉山登志郎先生 「カウンセリングオフィスVISION NPO法人新潟トラウマ治療協会 創立記念 講演会 「すべての人にトラウマケアを」」

2つ目でさて記事を終えるか…と思ったところ、もう一つ参加していたのをうっかり忘れていました…orz

これは私の地元である新潟で行われた講演です。

直接面識はないですが、カウンセリングオフィスVISIONさんという、トラウマケア専門のカウンセリングセンターが新潟駅前にできるようです。

私も新潟育ちの端くれとして「あんなところにそんな重要なものが…?」と隔世の感を覚えましたが、確かにどうしてかわからないですけど、新潟はトラウマケアの流れが強い印象があります。

そこで発達障害・トラウマの診療の大家である杉山登志郎先生が講演されました。

5/7までアーカイブ動画配信が延長されていますので、ご興味のある方はお早めにXのポストからお申し込みしてご覧になってください。

内容については、
・昨今は発達障害だけの括りでは解決できない事例が増えていること、に言及されている点と、
・ACE研究が示した知見をもとに、「なぜ今日ここまでトラウマケアについて強調する必要があるのか」について説かれている点
・介入法としてのTSプロトコル

が印象的でした。

さて、レビュー文章も長くなってきたので、この辺で筆を置きたいと思います。
もっと短い記事を書きたい(願い)。

日々精進あるのみ。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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