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中国スタートアップ 資金調達Weekly Report_2021/03/19-2021/03/25_12w

こんにちは!
中国大好きな竹内雄登です。
現在は、SPEEDAというデータベース向けに中国産業調査をしていますが、前職は、ソフトバンクでベンチャー投資などのM&A業務をしていました。

今年の2021年から、ITjuziというデータベースの情報をもとに、Weeklyで中国スタートアップの資金調達状況について発信することにしました。
このWeekly Reportでは、主に以下3点についてまとめていきますので、お時間がない方は気になる箇所だけでも、ぜひご覧ください。

・各週の資金調達案件まとめ
 - 資金調達件数(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 投資金額(日別、業界別、都市別、ラウンド別)
 - 資金調達実施企業リスト
・上記資金調達により、新たにユニコーンになった企業
・投資案件数上位10の投資家

では、早速本題に入りたいと思います。

1. 日別 資金調達件数・金額

2021年の第12週目である3月19日〜3月25日における、日別の資金調達状況を見ていきます。

[資金調達件数]
3月19日〜3月25日の週は、合計102件となりました。
なお、1月1日からの資金調達件数の累計は1,176件となりました。

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[調達金額]
非公開や曖昧な情報を除き、公開されている情報のみを集計したため、あくまで参考としてのデータですが、3月19日〜3月25日の週では、公開金額合計で182.0億元の資金調達が行われました。
また、1月1日からの調達金額の累計は1,854.6億元となりました。
なお、今週の102件のうち65件が金額非公開のため、単純計算すると、今週の調達金額は集計できた金額の約2倍の規模になると考えられます。

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2. 業界別 資金調達件数・金額

では、業界別に見ると、どうなっているのでしょうか。

[業界別 資金調達件数]
今週の102件の内訳を見ていきます。
業界別に見ると、法人向けサービスと医療・健康の資金調達件数が最も多く、それぞれ合計20件となりました。
次いで、ローカルライフサービス、先進製造が上位に入り、上位4業界だけで今週の件数全体のうち59.8%を占める結果になりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4業界の医療・健康、法人向けサービス、先進製造、スマートハードウェアだけで、全体の58.6%を占めています。

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[業界別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度のデータですが、今週は医療・健康、自動車・交通、金融、教育の順に多く、上位4業界で全体の80.6%を占めています。

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1月1日からの調達金額累計を業界別に見ると、医療・健康、物流、Eコマース、先進製造の順に多く、上位4業界だけで全体の57.6%を占めています。
先週まで物流が1位でしたが、医療・健康が1位にランクインしました。

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3. 都市別 資金調達件数・金額

続いて、都市別の内訳を見ていきましょう。

[都市別 資金調達件数]
今週の102件を都市別に見ると、北京、上海、深圳、杭州の順にランクインし、上位4都市だけで全体の72.5%を占める結果となりました。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、上位4都市の北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)だけで66.5%を占めており、日に日にその比率は高まっています。
また、上位10都市のみで累計投資件数の85%を占めていることから、一部の都市に集中していることがわかります。

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[都市別 調達金額]
公開されているものだけのため、あくまで参考程度にご覧いただきたいのですが、今週は北京、上海、深圳、杭州の順にランクインしました。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、北京、上海、深圳、長沙に集中していることがわかります。
次いで、広州と杭州が多く、いわゆる北上深杭(北京、上海、深圳、杭州)や北上広深(北京、上海、広州、深圳)への偏りが見られます。

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4. ラウンド別 資金調達件数・金額

ラウンド別に見るとどうなっているのでしょうか。

[ラウンド別 資金調達件数]
今週の102件では、シリーズAが33件で1位、戦略投資が24件で2位になりました。これら上位2つのラウンドだけで全体の55.9%を占めています。

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1月1日からの資金調達件数累計の内訳を見てみると、先週に引き続き、シリーズA、戦略投資、シリーズBの順に多いです。シード/エンジェルラウンドの比率は日に日に上昇しており、アーリーステージの企業による資金調達が活発であることがわかります。

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[ラウンド別 調達金額]
公開情報のみをもとに集計した調達金額をラウンド別に見ると、シリーズCが最も多い74.7億元となり、全体の41.0%を占めています。
次いで、戦略投資が54.0億元で2位となり、全体の29.7%を占め、上位2つのラウンドで全体の70.7%を占める結果となりました。

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1月1日からの調達金額累計の内訳を見ると、シリーズA、シリーズD、シリーズCの順に多く、上位3ラウンドでの合計は全体の57.6%を占めています。

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5. 今週、新たにユニコーンになった企業

今週は2社が新たにユニコーン企業になり、中国のユニコーン企業数は2021年3月25日時点で286社*になりました。
*ITjuziが公開しているデータのため、その他データベース等がまとめている数値と異なる可能性があります

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[1社目]
企業名:岸迈生物

業界:医療・健康
拠点:上海
設立時期:2016年2月
バリュエーション:12.0億米ドル/78.0億元
主要な投資家:弘毅投资, Mirae Asset Venture Investment, 国投创新, 元禾原点创投, 中南弘远(中南创投基金),  潜龙投资, 本草资本, 招银国际, 德诚资本, 夏尔巴投资, Octagon Capital八方资本
企業HP:http://www.epimab.com/

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同社はバイオ医薬品研究開発会社です。抗体のような特性を持つ二重特異性抗体を生成するFIT-Ig®(Fabs-In-Tandem Immunoglobulin)と呼ばれる独自の技術が強みです。

今回調達した資金は、進行中のヒト臨床研究を推進し、同社の新しい二重特異性抗体およびその他のバイオ医薬品のパイプライン拡大に使われるようです。


[2社目]
企業名:核桃编程

業界:教育
拠点:北京
設立時期:2017年8月
バリュエーション:12.0億米ドル/78.0億元
主要な投資家:高瓴资本, 源码资本, 元璟资本, 华兴新经济基金, KKR, 惟一资本-微影资本, 山行资本, XVC创投, 众源资本, 嘉程资本, 高瓴创投 
企業HP:http://hetao101.com/landing

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同社はオンラインでの子ども向けプログラミング教育サービスを提供しています。
レベル別のコースを10種類用意している他、メンターがつくため、楽しくプログラミングを学べることが強みのようです。
同社が扱う言語はScratch、Python、C++の3つですが、その他言語を扱う競合もいます。
(以下画像は華創証券レポートより)

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今回調達した資金は、教材開発、優秀な教師の確保などに使われるようです。


6. 今週、資金調達を行った企業リスト

2021年3月19日〜3月25日に資金調達を行った企業は以下の通りです。

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今週のメイントピックは、Momentaによる資金調達だと思います。

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今回のラウンドにトヨタ自動車さんも参加されたことで、日本でも大きく報道されました。

同社の強みは、ディープラーニングを活用し、カメラやセンサーなどを通して得た情報から10cm単位の高精度な地図を自動生成し、自動運転の操作などを決める技術を持っていることです。

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今回のラウンドでは、名だたる投資家から5億米ドル(約32.5億元)を調達しています。

本シリーズは「SAIC(上海汽車集団)」、トヨタ、独自動車部品メーカー「ボッシュ(Bosch)」、シンガポール政府系投資会社テマセク、ジャック・マーが創設した「雲鋒基金(YF Capital)」がリードしたほか、メルセデス・ベンツ、「紀源資本(GGVキャピタル)」、「順為資本(Shunwei Capital)」、テンセント、「凱輝基金(Cathay Capital)」なども加わった。

出所:36Kr

36Krによると、今回調達した資金使途は以下の通りです。

データ駆動型の量産向け自動運転技術「飛輪(Momenta Self Driving)」を中心に、自動運転技術の実用化を推進していく。

出所:36Kr


7. 今週末時点での投資件数TOP10の投資家

2021年の投資件数TOP10の投資家は以下の通りとなりました。
※順位の矢印は先週との比較を表しています

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テンセントは今週9件の投資を行い、先週に引き続き1位にランクインしました。
今週の投資先の業界は、法人向けサービスが最も多く、3件でした。
上述のMomenta(自動車・交通)への投資の他、ゲーミングに2件、金融、メディア、教育へそれぞれ1件ずつの投資がありました。

セコイアチャイナも先週同様2位にランクインしました。
今週の投資案件は6件となっており、法人向けサービス、医療・健康にそれぞれ2件、スマートハードウェア、ローカルライフサービスにそれぞれ1件の投資をしています。


以上、今週の中国スタートアップ資金調達レポートでした。

今後も毎週レポートしていきたいと思いますので、よかったらスキとフォローをお願いします。


お問い合わせは以下にて受け付けております。
竹内 雄登(Yuto Takeuchi)
Twitter:https://twitter.com/yuto_takeuchi01

注:
・本noteは速報の位置付けとしています
・事実を整理し、定期的に投稿することを目的としていますので、特定企業の分析や各社の投資傾向に関する情報が薄くなることはご了承ください
・本noteにおける中国スタートアップは、中国を拠点とする非上場企業を指します
・投資件数・金額およびその他データは本note投稿時点にITjuzi上で集計できたものを反映していますので、後日ITjuziのデータが修正・削除された場合、Weekly Reportの前後で数値のずれが発生する可能性があります。ずれが発生した場合、遡及して過去分を修正しませんので、ご了承ください


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