いま、私は年上の先輩の教育担当になっている。
彼女は2人目を出産後、私がいる部署に配置転換された。本来なら元の部署に戻るのが彼女にとっても楽だっただろうし、労働基準でも問題は、まぁ いろいろある。

彼女は私の一つ年が上で、中途採用された私より5年職歴も長い。しかし、話しやすい人で仲良くなった10年前からタメ口だ。昔からよく声を掛けてくれる。
穏やかで、誰からも好かれる、少し天然でツッコミやすく、それでいて仕事もそつなくこなす。私は管理職に彼女は向いていると思っている。 そんな彼女にCADを教えている。

お互い小さい子供の母親であり家庭があり、会社としてもキャリアアップを望まれているのは同じだ。
復帰した彼女と約束したことがある。
「分からないことがあったら調べず聞いてください。私がわかることなら、調べずに聞いてください。私が知らない知識を増やして下さい。やり方に疑問に思ったらメモを取って、それを改善できるよう課題とし一緒に考えましょう」
「困ったことがあったら言ってください。できる範囲でサポートします。上司をサポートできる知識を一緒に増やしましょう。」

彼女は笑っていた。いつもおちゃらけているからか「しっかりしてるよねー、昔から。年下なのに先輩宜しくね」と
「先輩ってよんでね」と私も笑って返した。

そんな教育も数ヶ月過ぎた昨日
「なかなか勉強する時間が取れない、本を読む時間がない」と子供をもつことでの悩みを打ち明けられた。
もっと仕事のことを学びたい。しかし、いつ病気や怪我をするかわからない5才と1才の子供がいるお母さんなのだ。私も痛いほど気持ちがわかる。

「大切なのは家族？仕事？」と決められないありきたりな言葉を掛けた。
「家族だよね〜」とため息混じりに答えた彼女。続けて「優先は家族だよね〜」とまた呟く。
「ちゃうわ、じぶんだよ」笑
「じぶんのやりたいことが大事じゃない？
家族も仕事も大事なら、両方守りたいよね」
ケラケラ笑いながら言った。
少し意地悪く続けて言った。

疲れて本読めないと言いながら、子供が病気の時、どんな病気かな？
この薬どんなんだろう？
今日のおかずのほうれん草どこ安いだろう？
買い物行くなら安い場所は？
どのルートで行く？

家のことなら調べてるよね？
と。彼女も笑ってくれた。
ね。って顔を見合わせて。

だから私を使っていいんだよ。
私が知ってることは教えるから。

私はものごとにもわけへだてができない。
いざとなったら調べるのだ。本だって読むのだ。仕事、育児、趣味のあらゆる知識は彼女の、いや誰かの困ったに役立ったらラッキー。

わけへだてができないおかげ。

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