マガジンのカバー画像

ファンタジー小説 「あの夏の旅」

18
10年前に書いた短編小説。少しの間、現実から離れてファンタジーに浸りたい方におすすめ🍀少しでも癒されますように…✨
運営しているクリエイター

記事一覧

「あの夏の旅」 第1話

「あの夏の旅」 第1話

#創作大賞2023 #ファンタジー小説部門

あらすじごくごく平凡な会社員、白石みどり(25歳)が、ある日突然、
ひょんなことから不思議な「夏の旅」へトリップ。
平凡な日常から抜け出して出会う、ちょっとおかしな犬や人・・・。
そして、試練・・・。
これは夢なのか現実なのか。

彼女の終着駅はどこなのか?
与えられた試練を乗り越えられるのか?
その先には、どんな未来が待っているのか?

どこか懐か

もっとみる
「あの夏の旅」 第2話

「あの夏の旅」 第2話

第2話 不思議な音楽すると、聴き覚えのない音楽が鳴り始めた・・・
「おかしいな、こんな曲入っていたっけ?」
昔にダウンロードして、忘れているだけかもしれない。と思いながらそのまま聴き続けていた。
初めて聴いたような、どこかで聴いたことがあるような、不思議な感覚だった。
ずっと何度もその音楽がリピートされて聴いているうちに、
さっきまでのうんざり気分が嘘のように、心も、体も軽くなっていった。
そっと

もっとみる
「あの夏の旅」 第3話

「あの夏の旅」 第3話

第3話 車窓から見える風景それは、今まで見たことのある景色とは、明らかに違っていた。
いつも見ている景色は、なんてことのない都会の風景、オフィス街。
けれど目の前には海が広がっていた。
真っ青な海と真っ青な空が見えたとき、一瞬、夢でも見ているんじゃないかと思った。

こんなことってあるのだろうか・・・。
いつもと同じように朝起きて、会社に出社するために電車に乗って、
電車に揺られていただけなのに・

もっとみる
「あの夏の旅」第4話

「あの夏の旅」第4話

第4話 車掌のアナウンス車掌のアナウンスを聴いていると、思わず吹き出してしまった。

「次は~小林さんが降りる駅~小林さんが降りる駅~」

「なにそれ?小林さんだけが降りる駅?そんなのあり?」

しばらくして、駅のホームに着くと、

何人かの乗客が降りていった

「え?あなたたち小林さんなの・・・?」
思わず笑ってしまった・・・。

周りの乗客達は、平然とした顔で座っている・・・
なんだこりゃ・・

もっとみる
「あの夏の旅」 第5話

「あの夏の旅」 第5話

第5話 海の駅長いトンネルを抜けると・・・

そこには一面、大海原が広がっていた。

「わぁ~きれいだ~。まぶしい~。」

感動していたのも束の間、
右を見ても、左を見てもそこは果てしない海だった。

なんと、電車は海の上を走っていたのだった・・・。

それはまるで船のように、海面ぎりぎりのところを走っていた。
電車なのに、船に揺られているようで、とても気持ちが良かった。

しばらくすると、「海の

もっとみる
「あの夏の旅」 第6話

「あの夏の旅」 第6話

第6話 終着駅①しばらくすると、電車は海岸沿いを走っていた。

波打ち際で、子供たちが遊んでいるのが見える。
浜辺では、男女ふたりが手をつないで歩いている。
何だかほほえましく思えて、電車のシートに座りながら眠りについた。

どれくらい眠っただろう・・・ふと目を覚まして時計を見ると
11時過ぎになっていた。

もう、3時間以上も電車に乗っているんだなぁ。
ちょっとした旅行に来ているような、そんな感

もっとみる
「あの夏の旅」 第7話

「あの夏の旅」 第7話

第7話 終着駅②終着駅のホームには立札があって、そこにはこう書かれていた。

「白石みどりさん、終着駅へようこそ。よくここまでたどり着きましたね。
さて、突然ですが、ここで、ひとつの試練をあなたに与えます。その試練を乗り越える勇気があれば、ベンチの上にあるお弁当と水筒をもって、ここから右へ300m先まで歩いてください。そこに次の案内があります。」

試練?それはどんな試練なのですか・・・?とその立

もっとみる
「あの夏の旅」 第8話

「あの夏の旅」 第8話

第8話 案内所
しばらく山沿いを歩いていると、次の案内所が見えてきた。

「ここかぁ・・・。ここから私の試練が始まるんだ・・・。」

案内所に着いたとき、立札を見るより先に、目に飛び込んできた光景・・・・。

そこには、長い石段が山肌に沿ってのぼっていた。
それは、もう頂上が見えないくらいの、無限にあるんじゃないかと思うくらいの長い階段だった。

「まさか、この石段を・・・?」
さっきまでの勇気が

もっとみる
「あの夏の旅」 第9話

「あの夏の旅」 第9話

第9話 いざ・・・!いざ、石段を1段、2段と登り始めた。
登り始めて30分が経った頃だろうか。
日頃、特に運動をしていなかった私には、その石段が早くも足に負担になり始めていた。
それでもなんとか1時間ほど登りつめたころ、石段の途中に、休憩所のようなベンチがある所までたどり着いた。

ふと時計を見ると、もう12時を回っていた。
おなかも空いてきたし、ここでお弁当を食べることにした。

お弁当のフタに

もっとみる
「あの夏の旅」 第10話

「あの夏の旅」 第10話



第10話 野良犬?

そのワンちゃんは、真っ白でツヤツヤの毛並をしていた。
野良犬にしては綺麗だ。

「こっちへおいで。」と話しかけて、手を出すと、

そのワンちゃんは、そっと近づいて、私の手をなめてくれた。
かわいいしぐさに癒されて、再び頑張ろう、という気持ちになれた。
再び立ち上がって、石段を登りはじめようとしたその時、
こんな声が聞こえてきた。

「ちょっと、みどりちゃん!水筒忘れてい

もっとみる
「あの夏の旅」 第11話

「あの夏の旅」 第11話

第11話 リックとの旅
再び、石段を登り始めた私たちは、その道中で、いろいろなお話をした。

「リックは、どこに住んでいるの?」

「普段は、雲の上に住んでいるんだ。でも、どの雲かは言ってはいけないんだ。ぼくはそこで飼われている犬なんだ。そして、困っている人がいるとき、助けるようにって、この世界へ飼い主さんがぼくを送り込むんだよ。」

「それで私を助けに来てくれたの?」

「そうだよ。みどりちゃん

もっとみる
「あの夏の旅」 第12話

「あの夏の旅」 第12話

第12話 ついに頂上へ

もうほとんど、足の感覚がないくらい、棒になってしまった足を引きづりながら、頂上らしき所へと向かっていた。

「みどりちゃん、あともう少しだから、頑張って!でも、無理はダメだよ。疲れたら、必ず休もうね。」

リックの励ましのおかげで、ついに頂上へとたどり着いた。
そこで後ろを振り返ってみると、眼下には綺麗なコバルトブルーの海が
広がっていた。

「リック、綺麗だね~。わたし

もっとみる
「あの夏の旅」 第13話

「あの夏の旅」 第13話

第13話 扉の向こう側扉を開けると、そこは辺り一面、花畑が広がっていた。
ピンク、黄色、オレンジ、白。色とりどりで、まるで絨毯のようだった。
甘くて、いい香りが漂っていた。

そこへ、天使がやってきて、こうささやいた。

「ようこそいらっしゃい。こちらへどうぞ・・・!」

天使は私の手を取り、お花畑を案内してくれた。
疲れ切っていた足が不思議と軽やかになり、天使に手を繋がれながら、私はスキップをし

もっとみる
「あの夏の旅」 第14話

「あの夏の旅」 第14話

第14話 歌声その歌声をたよりに、わたしは歩いた。

しばらくして、その歌に聴き覚えがあることに気が付いた。
「このメロディは・・・。」

電車の中でずっと聴いていた、あのメロディ。
どこか懐かしい気持ちになる、不思議なメロディだった。
とても透き通った声で、私はしばらく目を閉じて聴き入った。

そして、だれが歌っているのか気になり、その方向へと進んでいくと、
小さな男の子がお花畑に座っていた。そ

もっとみる