堕ちちゃだめな恋。

知っているんだ、好きになっちゃだめって。わかってるんだ、傷つくのは自分だけだって。だから、やめてよ、そんなこと…。


『ねぇねぇ、触って?』
「え…?」
『肩くらいいいでしょう?』

いや、でも…。無理だよ、そんなの…。

『触るくらいならいいじゃん?肩揉むって思えばさ。ね?』

そんなこと言わないでよ…。でも、ああ、可愛い。そんな顔して見られたら断れないよ。
うう、触るくらいなら大丈夫か…。触れるくらいにしとけば、な。

『あは、やっぱり男の人って手が温かいね。』

触れるくらいなら、セーフかな。よかった。大丈夫、正常心だ。止められる。


『ねぇ、ねぇ、腰に手まわしてよ〜。カップルごっこ!』

ま、またなんだこいつは…。なんでそんなこと言うんだ。一時的な楽しさで俺と遊んでるだけのくせに。なんでそんなこと言うんだ。
だめだ、だめだ。ここでそんなことしたら止められない。

『えー、なんで黙っちゃうの?だめなの?減るもんじゃないじゃーん!』
「いや、でも….。」
『ほらほら〜、いいじゃん、いいじゃん。』

やめろよ。そんなお願いするの。好きになっちゃだめなんだ。こいつに触れると、はまると、傷つくのは僕なんだ…。わかってるんだ…。

『もう、つまんないなぁ。堅物だなぁ。してもらえたら、嬉しいのになぁ。』

嬉しいのかよぉ。くそう、どうしよう。
触れるくらいなら大丈夫だったし、腰に手を当てるのもそれと同じようなもんだよな…。肩から腰に変わるだけだよな。我慢できるよな…。


な、なんだ、思ってるより細い…。柔らかい。どうしよう、もっとぎゅっと…。

『わ、ありがとう!楽しいね!どうどう?楽しくなってきた?』
「え、あ、うん。」
『よかった!じゃぁ、もっとぎゅってしてもいいよ〜!』

ここで、そんなこというな!くそ、目を覚まさないと。こいつにはまっちゃだめなんだ。

『なに、つねってるのー?寝ぼけているの?』
「ま、まぁ、そんなとこ。ちょっとぼーっとしたから。」

つねったことでちょっと冷静になった。気持ちの興奮もちょっと治まった気がする。

『あはは、変なの〜。はい、もっとぎゅってしないのー?』

だ、だめだ、だめだ。そんなことしたら本当に止まらない。
ちょっと触れただけで、もう一回触れたいと思ってしまった。もう一度触れたら、もっと強く触れたくなってしまった。そんな風に思っているのに…ここで本当にもっと強く触れたら、絶対元に戻れない。傷を負うのは僕だけなんだ。

『ん〜。私ってそんな魅力ない?』


パチーン!

ああ、我慢なんて、簡単に外れてしまう。触れたいさ、強く強く。痛いと思うくらい、ずっと強く。一度超えた我慢は、なかなか止められない。
でも、君は僕のものにならないんだろう?僕が強く求めれば求めるほど、猫のように逃げて行く。そして….僕に傷だけを残していくんだ。


夏ですね。久々に日焼けしました。痒くて仕方ないです。掻いちゃだめってわかっているんですけどね、こればっかりはなかなか我慢できないですよね。難しいもんです。
堕ちちゃいけない恋みたいですよね。ずっと負け試合ですわ。


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