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VS スライム男!

スライム男に遭遇した。私のHPは100。
戦闘開始!

ハ、ハズレだ……。
全然好みの顔じゃない。背も高くなければ、ちょっとぽっちゃりしているし、どちらかというとオタクっぽい雰囲気。

「初めまして。あおいちゃんですか?ゆうじです」

「は、初めまして。あおいです」

マッチングアプリを使い始めて1ヶ月が経った。今のところ目ぼしい収穫はなし。実際に会うのは今回で2回目だ。今日の人はメッセージも丁寧で、歳の差からもちょうどいいかもって期待していたのに…。見た目から受ける印象が全くタイプじゃない。むしろ、苦手。
すでに10ダメージ。

「どこ行く?」
「え、あ、どこがいいですかね」

決めてないのかよー!こういうのは男が前もって決めておいて、さっとリードしていくものでしょ!!! と思いつつも、初対面でそんなことは言えない。

「とりあえず、歩きながら考えますか? 」
「そうだね。歩こっか! 」

私の提案により、新宿東口から映画館方向に向かってゆるゆると歩き始めた。
しかし、このスライム男…….すごく近づいてくる。
新宿は人が多い。前から来る人を避けるために、私のほうに寄ってしまうことがあるのはわかる。だけど、寄りすぎじゃないか?
常に、少し腕が触れるくらいの近距離で歩こうとしてくる。彼を避けるため、寄られた分だけ離れて歩こうとすると、どんどん道の端に追いやられる。勘弁して欲しい。
初対面でそういうことをするのは、マナーとしていかがなものか。
スマートな男性はそんなことしないよ......。
一気に20ダメージ……。残り、70HP。

「どうしよっか?」
「うーん。何がいいですかね?何か食べたいものありますか?」
「そうだなー。オムライス好きだから、食べたい! 」
「オムライスですか。いいですね。美味しいですよね。卵ふわっふわのやつとかテンション上がりますよね。ゆうじさん、どこか知っているお店はありますか? 」
「特にないなー。あおいちゃん知ってたりする? 」

オムライス…?30歳にもなるのに、子どもっぽい。好きだといいながらも、候補のお店すらないの?優柔不断すぎると内心イライラした。

「なかなか見つからないのでルミネの中に行ってみません?たぶんあると思うので。なくても、あそこなら他のお店もたくさんありますし」
「そうだね、そうしよう! 」

無難にルミネの中にあるオムライス屋さんに落ち着くと、スライム男はマッチングアプリを始めた理由と恋愛事情をしつこく聞いてきた。

「あおいちゃんかわいいのに、なんで彼氏居ないの?ほんとは居るのにアプリ使っていたりするんじゃないの? 」

「最近振られちゃったのか......それは寂しいよね。なんで別れたの? 」

「前の彼氏って、どんな人だったの? 」

これは俗に言うセクハラなんじゃ......と思いながら、食事が来るまでの間を乗り切った。ああ、もう、早く帰りたい。

「あおいちゃん、今日はこのあと予定あったよね? 」

どうやったらこの状況からなるべく早く脱出できるだろう。11時に集合して、ご飯を食べて、1時間で解散だとダメかなぁ。1時間ならもう解散できるけど......最低限、90分我慢しないと悪いかな。

「そうなんです。友達のお家で誕生会なので、用意のために12時30分くらいには新宿出ないと行けないです」

ああ、あと40分。

「そっか。そしたら、お会計してもう少し時間あるからお茶しない? 」

全く行きたくないけど、仕方がない……。

「そうしましょっか。どこ行きます? 」
「どこがいいかなー」

また候補ないんかいっ!もう少し考えてから、物事を言って欲しい。
結局今度もまた、私が知っていた近くにあるチェーンのカフェに行くことになった。

ああ、あと、あと15分くらいだ、頑張れ自分!と奮い立たせていたところで

「一口ちょうだい! 」

NO、NO、NO !

間接キスになっちゃうじゃない。やめろー!と思いつつも、自分の中にあるサービス精神と優しさから、初対面の人に嫌とは言えず……

「あ、どうぞ(営業スマイル)」
「美味しいね!僕のも飲む? 」
「いえ、アーモンドはちょっと苦手なので......ありがとうございます」

あああ、私のドリンクが飲まれてしまった。もう......この飲み物にはいっさい手を付けられない。
30ダメージ。もう、ひん死だ……。あと、残り10分もある。

でも、もうだめだ、限界だ!

「す、すみません、そろそろ時間なので......」

駅まで送るというスライム男の提案を丁寧に断って、私はやっと自由になった。こんな経験はもうこりごりだと思った。まずは、LINEのブロックをしよう……

「今日は、ありがとう。 でも、僕にあおいちゃんは合わないと思うんだよね~。すごくしっかりしてる感じだし、僕はおっとりした子が好きなんだよね。ごめんねー」

50ダメージ!!!!!!

一度死んでしまった私は、ただのスライムをかわす技を身につけることができた。
あれから、1年。私は今、スライム男と同じ30歳になった。そんな私の横には、スライム男の中のスライム男、キングスライム男、今の旦那が横にいる。


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