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【ご冗談でしょう、ファインマンさん】「本当に賢い人の話は面白い」の決定版

(物理知識不要)天才物理学者のギャグみたいな回顧録


ディック・ファインマン。
思考とナンパが大好きで他人のナンバー錠を勝手に調べて開け、機密書類を持ち出すのが趣味。イケメン。結婚は3回。議論が白熱するとお偉い大先輩にも「ああもうアタマ大丈夫!?」とか言っちゃう危なっかしい天才。
ネタですかキャラですか。いいえどうやら事実です。

子供時代の思い出

11歳の時、ファインマンさんは「マイ実験室」を自作する。自室で様々な「実験」を楽しむが、失敗談は完全にドリフである。ドーンって爆発してアフロになるパターンのやつだ。自分の子供がこんなのやらかしてたら…私だったら間違いなく張り倒して実験環境を没収する。子供の可能性が開花する前に可能性に殺されると思う。

「プルトニウムは温かい」

さてファインマンさん、早くから頭角を現しアメリカを代表する頭脳となったことから、大戦下はそうそうたるメンツで原爆の開発に関わる。いわゆる「マンハッタン計画」である。
ノイマン、フェルミ、ボーアにオッペンハイマーなんかも一緒で、まるで知力の強化合宿だ。開発中の記憶には、仕事の効率を上げ、知と人の可能性を追求する喜びが溢れている。純粋に、仕事に没頭することを楽しむ天才たちの姿は可愛いと思うほどだ。
世界初の核実験を「人類で唯一肉眼で見た」と自慢し(えっ)、
ソフトボール大のプルトニウムを両手に持って「ほんのり温かい、放射能の温かみだ」とか言っちゃう。
それ崩壊熱。すごいアカンやつ。
(ちなみにその前後、このプルトニウムは実験中の臨界事故で2人殺し、デーモン・コアと呼ばれる)

出てくる名前が異常に豪華

また、前述の通り、冴えない中年男が若い女捕まえて芸能人の知り合い自慢する勢いでポンポン物理の重鎮の名前が出てくる。
高校物理の教科書で習った定理や法則の発見者が実在の人物としてチョイ役で顔を出すので、推しの出待ちしてたらエース級出てきた!みたいな「うわぁぁっ」感も楽しめる。
個人的に気に入っているのは「社会的無責任」の話だ。自分の影響力に責任を持つ必要がない、と教えてくれたノイマンさんの名前をわざわざ出し、「彼が無責任を教えてくれたんだ」とか言っちゃう。全部ノイマンのせいにしている。可愛い。

「ひ弱な知識」と「浅いオカルト」が嫌い

ファインマンさんは、インプットメインの丸暗記型お勉強を嫌悪する。方程式や物理法則の定理を現実の現象と結びつけずに理解した気になってるお利口さんの頭を「ひ弱な知識」として唾棄するほどに嫌っている。自然現象として数式や物理を理解していないでいられることが理解できないのだ。
また、ファインマンさんは神秘が大好きだ。物理屋さんは概ね神秘好きであるが、ファインマンさんもその例にもれない。
(ちなみに数学者はもはや神学者とか何かのブッとんだ別人種である。)
それだけに生臭い哲学もどきや心理学もどきはオモチャとして使う以上の興味を持たず、さも科学の神秘を上回るような顔で思考停止を促す薄っぺらいオカルトを心底嫌う。
ちなみに徴兵検査の際は精神科医をおちょくりすぎてアブナイ人診断され、慌てて弁解の手紙を書いている。可愛い。

ファインマンさんの可愛さと面白さと頭のよさを楽しもう

完全なる天才にして完全なる道化と言われたファインマンさん。
場末のバーで踊り子と恋の駆け引きをしたり、粒子のベータ崩壊モデルを解明した日に知らないおばちゃんにそれを披露してお返しに旦那の愚痴を聞かされたり、スチュワーデスをナンパしたデートの散歩中に別れた女が恋しくなってプロポーズしたり(すぐ離婚する)、皿回しの見物からノーベル賞の着想を得たりする。
もし現代にファインマンさんが存在したら、ノーベル賞ブロガーみたいになってたのではないだろうか。
いや、ツイッターで国家機密暴露してマスメディアから総攻撃くらってたかな。
いつの時代も、頭の良い人の話は面白い。
物理の知識はとくに無くても大丈夫だ(あればより面白い)。
ものすごく賢い人の頭の中を覗いて「あるあ…ねーよwww」と突っ込みながら自分の普通さを噛み締める、ほとんど娯楽小説のような書籍である。

ホムンクルスを作ってみよう

とある大学の、物理の先生の逸話で
「高校の時、実際にホムンクルスを作ってみたいと思ってすごい頑張ったけどおちょこ一杯がせいぜいで、フラスコ一杯なんてとても無理だった」というのを聞いたことがある(何をとか言わないで)
科学の実践ってそういうことなんだろうなあ、と思う。
これはファインマンさんとは全然関係ありません。あしからず。


投稿日 2016.03.04
ブックレビューサイトシミルボン(2023年10月に閉鎖)に投稿したレビューの転載です

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