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ドラクエ3 あそびにん と私

1年前の過去の記録より

最近、忙殺されているのを理由に
記録を怠っていたので
たまに文章を書いてみたいと思いました。


私が事あるごとに話題にしたくて
ウズウズしてしまうのがドラゴンクエスト3。
およそ今から30年前のテレビゲームです。

当時小学生だった私は
時間が経つのを忘れるくらい
どっぷり没頭したことを今でも覚えています。

ざっくりと物語の概要を説明すると
こんな感じです。


魔王を討伐するために
仲間と手を取り合って
殺伐とした世界を突き進み
立ちはだかるモンスターをなぎ倒して
世界の平和を目指す。


ゲームシステムの特徴の一つに
仲間をエディットしてパーティーを組める
ということが挙げられます。


・強力な武器を手に技を磨く戦士
・己の拳を信じて戦う武闘家
・攻撃魔法を巧みに操る魔法使い
・回復魔法の使い手の僧侶
・一定条件で昇格できる上級職の賢者

主人公である勇者と最大3名の仲間と、
自由にチームを構成できるという仕組みが
当時のユーザーを熱中させたのです。


しかし、上記の職業とは明らかに毛色の違う職業が
2つ存在しています。
・ゲームの進行に絶対必要な商人
・戦闘中に意味不明な行動をとる遊び人
どちらも戦闘能力が中途半端な設定です。


商人はシナリオを進めるために
一度は必ず仲間に加えなければなりません。

でも、遊び人はただの足手まといでしかなく
レベル20になると賢者に転職できる権利が得られる
というメリット以外には特段役立たずの職業なのです。

当時、小学生だった頃は
主人公の勇者や賢者をよく起用していたので
賢者への転職要員として遊び人をパーティーに
加えることがありますが、
おっさんになった今、遊び人が
賢者に転職せずに居座り続けたりもします。

なぜ生みの親の堀井雄二が
敢えて「あそびにん」を配置したのか
その意図はまだ知り得ませんが、
そこも絶妙なゲームデザインのように思えます。


魔王とその配下モンスターを倒して
地域住民の平和を守るのが
勇者御一行のいわば仕事なのですが、
戦闘能力の乏しい遊び人は
その世界の中でどのように思われているのか
よく想像したりするのです。


病院で勤務していると、
医療を行うのが医師の役割になります。
ごくごく当たり前の話なのですが、
医師は自身の診療技術を磨き、
病院は組織として医師を機能させて
よりよい医療を提供するのが一般的な使命です。


他方、
医師としての能力は診療に費やさなければ
社会的に悪だというようなプレッシャーを
感じることがあります。


いわゆる「当たり前」の考えでは
医師が診療以外のことに
能力や技術、時間を割くことをすると
変な目で見られ、
「まともにしなさい」的な圧力を感じます。


当院に1か月間、実習に来ている医学生に対して
将来の診療能力を向上させるために指導を行います。


これは「未来の診療」に直結するので
長い目で見れば、診療に貢献しているとも見なせるので
価値のあるものとして病院機能の中に
組み込まれることは納得できそうです。


この2日間は少し趣を変えて
診療とは直接関係のない「non technical skill」を
医学生と研修医に伝授した2日間でした。


特に「言語化が大事」と伝えてみるものの、
あまりピンと来なかったり、
その重要性を伝え切れなかったり、
自分の無力さを感じることもあります。
最終的には、この言語化能力が
より良い診療に繋がる能力だと信じていますが、
なかなかその重要性が伝わらないケースも多いです。

見ようによっては、
診療に関係の無いことについての指導なので
遊んでいるようにも思えるかもしれません。

今の職場では、
医師としての能力を「教育」に充てることに
一定の理解・支持をしてくれています。
そして、その協力体制も整えてくれます。
とても恵まれている環境だと思っています。


医師だったら診療に時間を割いてこそ
ではなく、
市中病院という環境下でも、
教育に時間を割いても良いという寛容さには
感謝してもし切れないのだと思います。


ドラゴングエスト3の遊び人は、
戦闘能力が全ての世界の中で
なぜ生き延びていられるのでしょうか。


彼らもきっと
戦闘能力が低いことを周りから白い目で見られ
「まともになれ」という圧力を感じ
それでもなお、何か信念があって
逞しく生き続けているのかなという
勝手な共感と想像を抱いています。


自身との境遇を重ねパーティーの中に
遊び人を入れているのかもしれません。
レベル20になっても賢者には転職させず、
そのまま遊び人のまま、
最終ステージにまで連れていきます。

世界に求められている存在価値とは
全く別軸の価値を胸に秘めながら
別のアプローチで世界平和を目指す姿に
どこか共感を覚えて、
自分の生き様を投影させてしまうのです。


戦闘以外は無価値の世界に
役立たずを配置した堀井雄二に
いつかその理由を問うてみたいです。


したいことがあって、
それを認めて支えてくれる体制があって、
恵まれた環境だなと思い返した日でした。

2019/10/30 記載