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森林浴の真鶴さんぽ 貴船神社と山神社

まなづる。おはぎのような半円の相模湾。その左端にある小さな半島の名だ。歌人与謝野晶子や佐佐木信綱が訪れ、志賀直哉や川上弘美の作品の舞台でもある気になる場所。

この真鶴半島は、江戸城の石垣や天皇の御陵に用いられている高級安山岩、小松石の産地。また豊かな森は知る人ぞ知る景勝地だ。「おはやし」といって江戸幕府による植林と皇室の手厚い保護により、クスノキやスダジイの巨木、南国のようにシダや蘇鉄が生い茂る。雨上がりのためか緑が濃く、馥郁とした土と潮の香りがたちこめている。

林を抜けて広がる三ツ石海岸の砂浜は干潟となっていて、海面にそびえ立つ岩の島まで半月型に飛び石が並んでいる。岩の島の上には社が祀られ和製モンサンミッシェルの趣き。目を細めて、かなたに見えるはずの伊豆大島や房総半島を探す。青い空しか見えない。潮風に当たりながら崖の上のカフェからの眺めは絶景で、フランス映画で有名な海岸、ドーヴィルにいる気分に浸る。女優のような大きな帽子持ってくればよかった。

おはやしの散歩を楽しみながら帰り道。大きな大きな水たまりに遭遇。まごまごしていると、先行していた通りすがりの御婦人が振り返って「飛び込んでらっしゃい!」と両腕を優しく広げてくれた。宝塚の王子様のような幼稚園の先生のようなごく自然な動作だった。突然の幼児扱いが嬉しい(!)けれどおもはゆくなる。水たまり、ええ、なんとか濡れずに渡れましたとも。

漁港を越え駅へ戻る道の傍に貴船神社がある。1200年の歴史を刻み、小松石で作られた石段は108段。太ももには酷だが、妄想まみれの筆者にはありがたい仕様である。

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長〜い石段を登り、足を引きずり山神社。初夏の日差しの中で可愛らしい狛犬が鎮座し、おはやしの一部始終を眺めていたのでありました。

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