Scene7

 わたしは失敗した。プロジェクトは破綻した。当たり前だ。みずからが主導するプロジェクトについて、なにもわかっていなかったのだから。周りからの期待に応えたい、その一心でその場をしのいできたのだから。「優秀なわたし」という虚像は脆くも瓦解し、ありとあらゆるひとびとの失望を招いた。そして目の前の壁にぶつかって死んでしまったわたしには、もうなにと戦う力も残っていなかった。数ヶ月間、無気力に会社に在籍しつつ、遅刻と無断欠勤を繰り返し、退職した。わたしには味方はいなかった。誰に頼ることもおそろしく、恥ずべきことだと断じてきたわたしには、味方になってくれるひとは誰もいなかった。評価が地に落ちたわたしに対して送別会など開かれず、わたしは最初から存在などしていなかったかのように、風のように会社を去った。最後の出勤日に挨拶に訪れた私に対して、上司は目もくれずに「ご苦労様でした」と言ったのみであった。
 その後は派遣社員として働いている。目立たないよう、誰からも期待されないように生きている。誰からも期待されなければ、誰からも失望されることはないのだから。弱いわたしの生きる道はそれしかないのだ。