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妄想日記

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小説の練習に。
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妄想日記㉚もしも私がおじさまだったら。終

妄想日記㉚もしも私がおじさまだったら。終

今朝、おりんさんは一人でお稽古に出かけて行った。藍色の紬を着ていた。叔母が少女時代に着ていたお古らしい。長い髪は1つにまとめて肩に流している。
「おりんさんに見とれてるの?」
窓際に立っておりんさんを見送っていると叔母に話しかけられた。
「いや。あんなに小さいのにお妾さんだったなんて信じられないって思って」
奈緒の華奢な背中が脳裏に蘇る。奈緒も薄っぺらな体をしていたが、身長はあった。
「13歳でお

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妄想日記㉙もしも私がおじさまだったら。

妄想日記㉙もしも私がおじさまだったら。

「ということで、頼むよ」
「待ちなさいよ」
小奇麗に整えたおりんさんを頼子に任せて応接室を出ようとしたが、やっぱり止められた。
「時間旅行の件はいったんおいておくけど、タダで済むと思ってるの?」
「もちろん、授業料は払うよ。そうそう、久美子おばさんが請求書を送ってほしいって言ってたよ」
「それは当たり前のことよ」
「あ、なるほど。俺に何かしろと」
頼子はソファに座っているおりんさんをチラリと見た。

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妄想日記㉘もしも私がおじさまだったら。

妄想日記㉘もしも私がおじさまだったら。

「『「年々に、わが悲しみは深くして、いよよ華やぐいのちなりけり』、か」
岡本かの子の言葉を口にしてみる。
実感としてあるようなないような、やっぱりあるような。
ただ朝を迎えるだけの毎日に、それなりのヒビが入り歪んで、生まれる痛みに耐えながら薄ら笑いを浮かべる。
過去を顧みたとて何がどうなるわけでもなく、ただできることをするのみ。
ひとり時間を持て余していると、そんなふうに特に価値もない自分を掘り下

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妄想日記㉗もしも私がおじさまだったら。

妄想日記㉗もしも私がおじさまだったら。

同期の市田誠治から電話があったのは昼過ぎだった。
俺はソファに寝転んでスマホで映画を観ていた。
「久しぶり。元気にしてたか」
やや嗄れた声が懐かしい。
「それなりにね」
「ならいい。話したいことがあって」
「何?」
「足立奈緒が辞めたよ」
思わず起き上がって座り直した。
部下で長年の恋人だった。
俺が離婚に手こずったせいで交際期間がずるずると長引いた。
離婚が成立した頃には関係は冷え切っていたので

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妄想日記㉖もしも私がおじさまだったら。

妄想日記㉖もしも私がおじさまだったら。

買い物に出た際、書店が目に入った。
やはり気になってしまうのは、小夜が少女小説家になっているかどうかだった。
べつにスマホでネット検索すればわかるのだが、シチュエーション的に書店で見つけたという方がいいような気がしていた。
ライトノベルのコーナーを進むが、「小夜」の名の付く作者がいない。
ペンネームを使っているかもしれないのでわかりようがない。
見つけられないまま、そのコーナーから離れた。

少し

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妄想日記㉕もしも私がおじさまだったら。

妄想日記㉕もしも私がおじさまだったら。

そもそも抜け殻なのにさらに抜け殻になってもはや脱皮した気分だ。
脱皮したとて何も新しくならない。
すり減った、に近い。
なのに満たされた気持ちもある。

次の旅人が来るまでの間、ただの管理人になろう。
いや、そもそもただの管理人なのだ。
たくさん仕事をして体を動かせばさらに酒が進んでしまうだろうけど。
休職期間のリミットが近づいている。
すり減ったけど、俺は大して変わっていない。

妄想日記㉔もしも私がおじさまだったら。

妄想日記㉔もしも私がおじさまだったら。

安心した。
ドアを向こうには若々しい小夜がいた。
前髪をセンターで分けて富士額を見せている。
「おはようございます。ごめんなさい。朝早くに」
「いいよ、どうぞ」
俺は部屋に入るよう促した。
小夜は首を振った。
「昨日、駅へ行ったら今日電車が出るって教えてもらったんです」
「そうか」
ほっとしたような寂しいような。
俺の顔はどんなふうに見えているんだろう。
「聡一郎さんには良くしてもらってばかりで」

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妄想日記㉓もしも私がおじさまだったら。

妄想日記㉓もしも私がおじさまだったら。

昨日は出かけず、スマホも見なかった。
小夜に会うのが怖くて、引きこもってしまった。
次に会う時、彼女が老婆に見えるのが怖いのだ。
所詮、俺はどこにでもいる若い女が好きなおっさんだ。
いくらかっこつけても仕方ない。
自分も既に老域へと入っているというのに、醜い物の考え方がやめられない。
思い悩むと1日が早い。
夜が来てシャワーをし、再びベッドに横たわる。
夜明けが近づいた頃、俺の部屋を訪ねる者がいた

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妄想日記㉒もしも私がおじさまだったら。

妄想日記㉒もしも私がおじさまだったら。

「もしかして殺されるのではないか」
瑞々しく張りのある肌を丁寧に撫でまわしている最中にふとそんなことが過った。
こんなことを口にしたら、また小夜になじられる。
だから、何も言わずただひたすらに手と口と舌で小夜を解きほぐしていく。
ゆっくりと力が抜けていくのがわかる。
徐々に足が開かれていくと二人の皮膚の重なる面積が広がる。
娘より若い子と何をやってるんだって?
この通りだよ。
だから何だよ。
俺は

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妄想日記㉑もしも私がおじさまだったら。

ビーフシチューを食べ終えたあと、俺は訊いた。
「あの小説は実録ものではないよね」
「まさか」
小夜は不敵な笑みを浮かべてワイングラスに口をつけた。
「私が主人を殺して逃げたとでも?」
「まさかとは思うけど」
今迄に見たことのない鋭い目つきをしている。
「すべての作家が実体験のもとに書いていると思いますか?」
「そんなことはないと思うよ、当たり前だけど」
「私にそんな疑いをかけるということは、私には

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妄想日記⑳もしも私がおじさまだったら。

妄想日記⑳もしも私がおじさまだったら。

あまり眠れないまま朝を迎えた。
小夜の小説のせいだ。

二人の仲良しの少女が楽しい学生生活を送っている。
はるえと冬実という少女たちだ。
二人は大学へ進学するが、はるえは親の勧めで結婚をすることになり中退する。
自分の意思で生きることを許されないはるえは、結婚で自分は死んだと思うようになる。
ある日、泥酔した夫に襲われたはるえは裁ちばさみを振り上げる。
夫を刺した時、全く感じたことのないとてつもな

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妄想日記⑲もしも私がおじさまだったら。

妄想日記⑲もしも私がおじさまだったら。

ポストからA4サイズの茶封筒がはみ出していた。厚みがあり、かじかむ手で取り出すのも一苦労した。
裏側には「小夜」とだけ書き記してあった。
部屋に戻って中身を確認する。
クリップで止められた原稿用紙が現れた。
少しばかり読み進めると、小説であることがわかった。
今夜はこれを読むとしよう。
その前にこの寒さをしのぐために何かを飲まなければ。

妄想日記⑱もしも私がおじさまだったら。

妄想日記⑱もしも私がおじさまだったら。

今日は頼子に呼び出されて出かけた。
彼女が経営する喫茶店に。
和風建築で、広い庭園がある。
店員に促されて長い廊下を進む。
案内された部屋の前で立ち止まり、深呼吸をした。
廊下に正座をし、障子を3段階に分けて開けると、ピンク色の着物姿の頼子が釜の前に座っていた。
「どうも。お招きいただきましてありがとうございます」
お辞儀をすると、頼子のため息が耳に入った。
「入って」
そんな冷ややかな目をするな

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妄想日記⑰もしも私がおじさまだったら。

妄想日記⑰もしも私がおじさまだったら。

ブランデーを紅茶に1垂らし。
もう1垂らし。
あと1垂らし。
そんなことをしていると、インターフォンが来客を知らせた。
ドアを開けると小夜がいた。
「ポスト見ました。ノートと原稿用紙の追加、ありがとうございます」
サイドの髪を三つ編みにしてハーフアップにしていた。
耳元がさみしい。
「あれで足りるかい?」
「はい。たぶん、暫くは。読書感想文は簡単に書けるのですけど、小説はなかなか。ほら、私、働いた

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