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おしゃべり泥棒

私は基本的に無礼者である。自覚があるので、失言をしないよう相手が話し終わるまで何も言わない。聞き終えてから自分の意見を言うようにしている。

昔は、相手の話をさえぎってまで自分の意見を勝手にしゃべっていた。大人になるまで、それが行儀の悪いことだと知らなかった。なぜなら、家族全員がその話し方をするからである。

とある国に留学経験のある姉は、そこではみんな我々家族のように相手の発言をさえぎってまで話すのが基本だと言っていた。ただ、ここは日本であるからしてそれはあまり人にいい印象を与えない。すなわち、社会的立場を自ら貶めることにつながってしまうのである。あまり人の評価を気にしない性格ではあるが、自分である程度律しておかないと佇まいにすら崩れが出る。自由な精神を大切にする人間ほど、気をつけなければいけないことがある。

人の話に耳を傾けることを癖づけて数年。最近感じるのは若い人と話す時にこれをやると、相手が不安そうな顔をすることだ。若い人は弾むような会話をする人が多いため、ペースを崩されて戸惑っているのだと思う。

ここはおしゃべり泥棒に戻るべきかと考えるが、口を罪で汚さず、好反応を示すなど、センスの良さを出すのが素敵なのではないかと思う。

ただ、それすら面倒くさくて結局マスクの下で微笑むのが限度なのであるが。

※小説はあと2話で終わる予定です。



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