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緑あふれる青い地球 どうしてこうなった!? かというと…

昔読んだ小説もしくはマンガに海の底から水面に揺らぐ太陽を見上げるシーンがありました。気が付けば、私たちも大気の底から空を見上げています。

私たちは大気の海の底に沈んでいるのだ
 Noi viviamo sommersi nel fondo d'un pelago d'aria
ー エヴァンジェリスタ・トリチェリ(伊:1608-1647)

青い空、青い地球… 青く見えるのは大気のせい。とは言え、この惑星も初めから大気に包まれた緑の惑星地球であったわけではありません。

大気の主な成分は、窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素…

生物が生きていくために欠かせない酸素。太陽の光と二酸化炭素から酸素を作り出したのは、シアノバクテリアという微生物です。
もしも25億年から35億年前に、シアノバクテリアが光合成という新しい化学反応を起こさなかったとしたら、地球の生物は今でも目で見えないほど小さなままだったとか…

シアノバクテリアは藍藻らんそうとも呼ばれていますが、実際は藻ではなく細菌バクテリアの仲間です。

光を利用してエネルギーを獲得し生活する光合成細菌には紅色細菌や緑色細菌などが含まれますが、シアノバクテリアはクロロフィル(葉緑素)や、光エネルギーを化学エネルギーに変換する光化学系反応中心というシステムを持ち、水を分解して「酸素」を出す光合成を行います。

シアノバクテリアは他の有機物を必要とする光合成細菌とは異なり、どこでも手に入る水を材料にして酸素発生型の光合成ができるようになったことで、地球上に広く分布し、地球の環境を変え、さらにはその後の生物の運命を変えていきました。

光合成と言えば葉緑体クロロプラストで行われますが、その起源はどこにあるのでしょう。
藻類という生物がシアノバクテリアを取り込み、取り込まれた先の細胞で共生することになったシアノバクテリアの名残が葉緑体と言われています。
その後の進化の過程において、さらなる二次共生が行われ、様々な光合成生物が誕生し、枝分かれしていきます。

やがて藻類は陸上植物へと進化し、コケ植物として陸上へと進出していきますが、水からあがった植物は陸上で乾燥という問題に直面します。
植物は乾燥に耐えるため、クチクラと呼ばれるワックス層で葉を覆い、細胞からの水の蒸発を防ぐようになります。とは言え、それでは水蒸気と一緒に二酸化炭素も通さなくなってしまうので、気孔という開閉可能な穴を作り二酸化炭素を取り込むようになります。さらに、湿った土から水分を吸い上げるため根を広げ、多くの光を捕らえるために葉を平たく伸ばし、根と葉を繋ぎ、葉に光をあてるために高い位置を保つ支持棒として細長い茎を持つようになっていきます。

陸上での乾燥に耐え、水と光を利用するために、植物は根・茎・葉をもつ姿に変わっていきました。

光合成の副産物としてつくられるようになった酸素が、実際に大気に含まれるようになるには、数億年という年月が必要とされました。
少しづつ酸素が空中に溜まっていき、およそ6億年前のある時点で、大気中の酸素の量が臨界点を超えます。その結果、地球史上最も劇的な進化の爆発が起こり、突然、新しい大きな生物が現れ、一つの細胞ではなく、多くの細胞から体をつくることができるようになり、やがて、世界で初めての動物が誕生します。

酸素が無ければ複雑な生物は生まれませんでした。多細胞になり、身体が大きくなるためには莫大な量のエネルギーが必要で、そのような力を生むには酸素が必要となります。

とてつもない時間をかけて地球に大気の海を造り、生物が満ちる世界としたシアノバクテリアは、今でもあらゆる水場で酸素を作り続けています。

参考文献:
大気の海 : なぜ風は吹き、生命が地球に満ちたのか
ガブリエル・ウォーカー著

トコトンやさしい光合成の本
園池公毅 著

2022年9月8日 白露

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