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高校を卒業する僕らに「二度とこの学校には来ないでください」と口にした女性教師の真意

高校卒業を間近に控えたある日、家庭科の先生から言われた言葉が忘れられない。

その日は普通授業の最終日。各教科の先生方はそれぞれ、「ここはみなさんの母校です。困ったことがあったり、先生に会いたくなったりしたら、またいつでも遊びに来てください」と話し、最後の授業を終えていた。

そんな中、50代半ばくらいの、加藤登紀子似の家庭科の先生だけがこんなことを言った。

「卒業後、先生や後輩に会いに、学校へ遊びに来る人たちがいますが、皆さんは二度とこの学校には来ないでください。もし来ても私は会いません。

あなたたちは、これから新しい世界の中で生きていく。そうすると、ものすごく忙しくなって、ここへ遊びに来る暇などなくなるはずです。どうか自分が行ったその先で、必要とされる人間になってください。これが皆さんに、最後にお伝えしたかったことです」

目前に迫った新生活への期待や、卒業前の解放感に包まれていた教室は、一瞬、しんと静まりかえった。過去への執着や甘え心を断ち切り、いま現在に全力を尽くして生きなさいという先生の言葉が骨身に沁みた。

家庭科で習ったことはみな忘れてしまったが、あれから20年以上が経ったいまも、その言葉は胸を離れずにいる。