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休職期間の記録⑦休職中に読んだ、読んでる本の話(4月16日~5月15日)

※2023年7月20日に内容を一部修正


今日は、休職中に読んできた本の話をしようと思う。

最初は、本当に文字が読めなかった。言葉が全然頭に入ってこなくて、なんなら、漫画ですら刺激が強く感じて、読もうと思えなかった。

脳卒中で高次脳機能障害になった鈴木大介さんが、「ツイッターの百四十文字すら内容が理解できなくなった」と、後で紹介する、『病と障害と、傍らにあった本。』のなかで書いてるのを読んだ。

うつのひどい時も少し似ていて、文字を追うことはできても、意味を理解していくことができない。ワーキングメモリの低下で、いま読んだ内容をすぐに忘れてしまうから、うまく読み進められない。

そもそも、どうして僕はうつでしんどいときに、それでも本を読もうと思ったんだろう。

他にしようと思えることがなかったからか、
(本を読むのは自分のペースでゆっくりでもいいから、テレビや映画を見るよりは負担が少なくて、かろうじてやってみようと思えた。)

うつのときにどう過ごすのがいいか経験者の本を読んで参考にしたかったからか、

あるいは、しんどいときに心癒されるような本を読んで、心を落ち着かせたいからか。

どれもあてはまるんだけど、本を読むことが習慣になっていたっていうのが一番だったと思う。何もすることがなかったら、本を読もうと思ってしまう。たとえ、読めなくても。

最近職場の先輩が貸してくれて読んでいる、『世界は夢組と叶え組でできている』(ダイヤモンド社、桜林直子さん著)という本に、「30代になると、これからやりたいことを考えるときに、20代とは違う見方をしたほうがいいと思う」ということが書かれていた。

仕事、子育て、家事、趣味、友達との時間、などをどれもこれも欲しい分だけ全部足したものを「やりたいこと」とすると、時間が足りなくて、ほとんどの場合できないことが出てくる。(中略)
 だから、「自分の時間を何に使うか」を自分のキャパシティの中で(←これも重要)割りふった時間割をつくり、その時間割そのものを「やりたいこと」としたらいいと思う。
 人によって仕事の割合が多い人もいれば、子育ての時間が多い人、恋愛の時間、趣味の時間が多い人などそれぞれだけど、それ以外の時間が少なくなっても「やりたいことができている」ことになる。

「世界は夢組と叶え組でできている」(ダイヤモンド社、2020)p37‐p38

これを読んで、今後の働き方を考える前に、休職中の自分の時間の使い方を振り返ってみた。

睡眠、食事、人と話す、読書、スマホやPCを見る、お世話になってる人の家の畑仕事、五目並べ、ウクレレ、体を動かす(ボルダリング、散歩etc)、出かける(移動時間含む)、風呂・・・

1日24時間の円グラフのなかで、読書の時間はそこそこあるんだけど、読書の目的は結構本の種類によって違っている。このことを僕はこれまであんまり意識したことがなかった。



本を読むこと

たとえば、トラウマやうつ病についての本を読むのは病気からの回復のための「勉強」、あるいは「情報収集」。これは、結構エネルギーを使うこともあるし、やったあとでメンタルがしんどくなることもある(特にトラウマについての本)。

上に書いた「世界は夢組と叶え組でできている」は、今後の生き方を考えられるために著者の考え方を知る意味では「情報収集」なんだけど、将来のことを考えることができて前向きな気分になる。

「病と障害と、傍らにあった本。」は、著者の経験や考えから気づきを得たり、自分と似た考えや共感できる考え方に触れて、自信をつけたりするような、「思想を養う行為」といえる。

あとは、心温まる物語を読んだ時の「癒し」とか、小説に没頭するときなんかは「娯楽」でもある。

もちろんどの本を読むときにもいくつかの要素が含まれる。
 
たとえば、「病と障害と、傍らにあった本。」のなかの坂口恭平さんの文章を読むと、坂口さんの文章は読んでいて楽しいから「娯楽」要素もあるし、病気のことや病のときの過ごし方を知る意味で「勉強」「情報収集」にもなるし、人生との向き合い方を考えるヒントにもなるから「思想を養う行為」にも当てはまる。


少し雑な分類だし、重複していることも多いよくない分け方だけど、自分なりにそんな風に分けてみて、今自分は主にどの目的で本を読んでるんだろうっていうのを意識するようになった。

というのも、休職期間のいまの自分の一番の課題は気持ちを整えていくことなのに、自分の内面を理解しようと思ってトラウマについての本を読んでいると、結構気持ちがしんどくなって不安定になってしまうこともあったから。

自分の心身の状態を見極めつつ、どんな目的でその本を読むかってことを少しは意識しないとなって思った。


うつになって、本を読めなくなったり、読むスピードが極端に遅くなったりして、「本を読む」ことへの意識が変わったのはちょっと良かったかもしれない。今までは、そのときに興味のある本をどんどん読んで、ただ知的欲求を満たすだけで、内容の多くは忘却の彼方に流れてしまっていたように思う(また読み返して思い出すことはあるけれど)。

だけど、うつになって、簡単には読めなくなったし、内容もすぐには理解できないようになって、そのことを自覚してから、同じ本の好きな部分を、繰り返しくりかえし読むようになった。

一度読んだはずの本も、2回目に読むと読み飛ばしていた部分に引っ掛かったり、休職して間もない頃に読んだ箇所と同じところを読んでも、改めて感じることがあったりして、繰り返し読んでいく今の方が、身についている感覚がある。

そんな風にして読んできた本を、まとめてみようと思います。

前に紹介した本もあるんだけど、読み返してもおもしろかったので、改めて。

読んだ本、読んでいる本


病と障害と、傍らにあった本。

病と障害と、傍らにあった本。(里山社、2020)


12人の著者がそれぞれ、自身の病気や、家族の看病をしながら読んでいた本について書いている本。そのなかでも特に、脳梗塞で高次脳機能障害になって本が読めなくなったという鈴木大介さんの話は、本当に共感できて救われた。

「読むことができなくなっても、書くことはできた。そして、自分の書いた文章なら、理解することができた」という鈴木さんの話にはすごく勇気づけられて、休職してから10日後に一人で泊まりに行った川上村の宿で、持ってきたノートにゆっくり思いを綴ったり、持ってきた本を少し読んでは、気になったところをノートにつけるということをしていた。

転職前に働いていた職場で、脳性麻痺で体があまり自由に体を動かせない人が、動かせる体の部位を使って、手織りをしたり、絵を描いたり、できることにじっくり取り組む様子を見るのが好きだったんだけど、僕も、今できることをちょっとでもやりたい。できることを時間をかけて取り組もうと思って、川上村の宿から帰ったあとで、noteを書くことを再開した。

休職して間もない時期に、この本と出合えて本当に良かったと思う。一人ひとり文章は20ページくらいなのですごく読みやすいし、闘病したり、中途障害で苦しんだ人のエピソードで、同じように苦しんで、元の自分には戻れなくても、新しい自分の体や脳に、希望を見出す話に救われた。


うつ病を体験した精神科医の処方せん

うつ病を体験した精神科医の処方せん(大月書店、2005)

 著者の蟻塚さんは、青森の病院から、還暦近くなってから沖縄の病院に移り、3.11のあとは福島県相馬市のメンタルクリニックで院長を務める精神科医。沖縄戦や、震災の被災者のトラウマについての著書も出されている。

 この方は、本当に根がとてもまじめなタイプの人なんだろうと思うのだけど、一方で、この本を通して繰り返し主張しているのが、ふざけることや遊び、さぼったり、テキトーに手を抜いたりすることの大事さ。

そして、その素質を、うつ病になった人もきっとすでに持っている、ってことに気づかせてくれた。「まじめで余裕がないから自分はダメなんだ」ってなっているところから、「そうじゃない一面もあったよな。いまそうなっちゃってるだけだから、大丈夫」って思わせてくれた文章。

 私を含むうつ病(気質)の人は(すべてではないにしても)、うつ的な資質(努力、生真面目その他)だけでなく、それとは正反対の「いたずら好き」で「やんちゃ」、「躁的な快感への憧れ」や達成感や成功への願望といったものを併せ持っているということである。そして躁による社会的不適応や派手な躁病的言動は示さないものの、潜在的に「躁的な体験への憧れ」を抱いており、これが満たされない時にうつ病として現れるのだと思う。もしかして、うつ病(気質)者ほど成功や達成感い飢えたものはいないのではないか。

うつ病を体験した精神科医の処方せんp17

 僕はたぶん、育て親や教師の言うことを真面目に聞いて、いい子でいることが幼い頃の自分の生存戦略だったせいか、うつっぽくなったり、しんどくなってるときに余計に真面目になってしまう。うつ病なんだからはしゃいだり遊んだりするのはおかしいよな、なんて思って、無意識に今の自分を型にはめてしまうことがある。

だけど、むしろ、心をリラックスさせて回復させていくためにも、ふざけたり、ゆるーくしたり、気分を自由にしていくことの方が大事で。

ほにゃららら~ ひひへほ~
ふひひ~ ぱぴぱぴぽ ぷ~ぅ 

くらいでいたほうがいいはずなんだよなー。
自分でも何書いてんだろうって思ったけど。笑


そういう意味で、うつを明るく語ってくれるpodcast、「石垣ラジオ」はすごく良かった。

聞いてて楽になれるような崩れたトーンで、フラットにうつを語れる場が増えたらいいなあ。

うつの時こそ、おもしろいな、わくわくするなって思うことをやっていった方がいい。休職してて、時間があるなら、なおさら。

ってことで、この辺で書くのは一回休憩して原付で出かけてみる。


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