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休職期間の記録12 元気回復行動プラン(WRAP)がめっちゃいいかもしれない。/ 坂口恭平展@HS -nara-


 朝から近鉄奈良駅のあたりに散髪に行った帰りに、カフェで岸田奈美さんの「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」を読んでいた。

 岸田奈美さんの本「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」は、去年のGWに岡山の新見市のおしゃれな図書館で見つけて読んで号泣しそうになっていた本だ。帰ってからすぐに購入して全部読んだらまた号泣しそうになって、しばらく本棚に放置していた。

久しぶりに取り出してカフェで読んだらまた号泣しそうになった。199ページに出てくるタイトルと同じ一文、「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」が、どうしてこんなにも泣きそうになるのかわからない。わからないけどなぜか泣きそうになるのだ、この人の文章は。泣ける話が多いのに、ベースはめちゃくちゃおもしろい語り口調で展開されていくから、どんどん読み進められる。本当に憧れる。

ドラマ、見たかったけど、BSプレミアム使ってないんだよなあ。
調べたらUNEXTで見れるらしい。また加入するか迷うなあ。

↑文庫版が新しく出たらしい。超おすすめの本です。



何について書こうと思ってたのか忘れてしまうとこだった。笑
WRAPの話を書こうと思ってnoteを書き始めたんだった。


元気回復行動プラン(WRAP)


 5月31日(水)に大阪堺市の古墳だらけの大仙公園の南にある緑化センターというところで、ある方と数年ぶりに会ってお話をしていた。その方は精神科で働いた経験があって、ご自身もうつ病の経験がある。ご自身の経験談や想いをたくさん聞かせてもらって、嬉しい言葉や、気づきになる話がたくさんあって、ありがたい時間だなあと思いながら話していた。

話がひと段落ついたときに、僕がうつで休職していることを知っているその方が、WRAPの本を貸してくださった。

WRAPって、ご存知でしょうか。サランラップとかのラップとは全然関係なくて、Welness Recovery Action Plan:元気回復行動プラン)の略。で、簡単に言うと、自分が元気で過ごし続けるための方法を確認してわかっておくためのツール。

サランラップのおかっぱの女の子のCMを思い出しても、ちょっと元気になるよな~。って思って調べたら、おかっぱの女の子はクレラップなんだね。くるくるくるくるクレラップ♪だもんね。

 WRAPのことは昔どこかで聞いたことがあったし、たしか(こないだ資格とったばかりなのにすでにうろ覚えなのだけど)精神保健福祉士のテキストか授業でも扱っていた気がする。だけどその中身をこれまでちゃんと勉強したことがなかった。

もう自分は結構回復してる感じがするし必要ないかもと思いつつ、せっかく借りたので読んで取り組んでみると、これがめちゃくちゃ良かった。

100ページに満たない、薄くて赤い燕のイラストが表紙にあるこの本は、ワークブック形式になっている。第一章から第八章まで、自分が元気になるために日常的にやっている行動を整理したり、調子が悪くなった時のサインを書きだすなど、ノートに書きながら振り返っていく形式になっている。1章が3ページほどで短くて、後半は付録になっているので、取り組みやすい。

僕は1日に2章くらいのペースで、ちょっとずつ、ここ数日取り組んでいる。


地域精神保健福祉機構COMHBOのサイトから購入できる。税込み1000円強。



目次はこんな感じ。

第1章 元気に役立つ道具箱(ツールボックス)をつくりましょう
第2章 日常生活管理プラン
第3章 引き金とは
第4章 注意サインに気をつけて
第5章 調子が悪くなってきているときには
第6章 クライシスプラン
第7章 クライシスの後にもプランを
第8章 WRAPをじょうずに活用するために

目次より

メアリー・エレン・コープランドさんという、ご自身も重いうつ病を経験したアメリカ在住の方が、「病気になった他の人たちはどんな風に症状に対処して暮らしているのか?」という疑問から、精神病院の慢性病棟などで、いろいろな人たちに話を聞いた。そのなかで様々なリカバリーの方法に触れ、それらを活用するためのシステムを作ったのが、WRAPらしい。

そして、リカバリーのための情報を通じて人々のネットワークをつくる過程のなかで、私は、それ自体はとても簡単で、とても安全でありながら、人生を大きく変える力を持つアイデアや方法があることを発見したのです。

同、p2


 第一章では、元気でいるために普段やっていること、これまで気分がすぐれないときに元気になるためにやってきたことを整理して、「元気でいるための道具箱」を作ることがテーマになっている。

・友達と話をする
・運動
・お風呂に入る

など、たくさんの例がそのページに書かれていて、それと同じものをノートに書いてもいいし、もちろん載っていないものを書いても良い。自分が元気になるのって、何をしてるときかな~と考えて書き出していく。

たとえばぼくだったら、「美味しいものを作って食べる」とか、「外に出て過ごす」とか、「コーヒーを淹れて飲む」とかって書いている。

2章では、元気を保つために毎日するといいことや時々するといいこと、良い状態の自分がどんな風かをノートに書く。
ぼくだったら、毎日するといいことは、「野菜をたくさん食べる」「散歩や運動をする」「ノートに思ってることを書く」、

時々するといいことは「マッサージに行く」「カウンセラーの人と話す」
「友人と遊ぶ」「スーパー銭湯にいく」「よく寝る」「コスタリカ産のコーヒーを飲む」「京都シネマで映画を見る」「木工」などがある。

良い状態の自分は
「元気」「やる気がある」「冗談が言える」「頭がよく働く」などと書いている。

全部箇条書き。

3章では、その出来事が起きたら調子を崩してしまいそうな「引き金」について、
4章ではちょっと調子が悪くなっていたときに、心や体の状態がどうなるかのサインを、
5章では、もっとピンチになったときの状態、
6章では、自分自身のケアの責任を誰かに委ねないといけないときのプランについても書くようになっている。
たとえば、自殺や自傷の願望が出てしまっているときなどに、○○病院に入院させてもらうように特定の誰かにあらかじめ頼んでおくなど。これをクライシスプランと呼んでいる。

自分でどうにもできないくらい追い込まれたときに、他者に自分のケアの責任を委ねるところまで考えるようになっているのがすごい。

多くの人はそんなこと考えなくていいだろうって思うと思うけど、僕はうつを経験したので、それを考えておくことも大事かもしれないと思う。

本当にやばい時に、誰に助けを求めるか。あらかじめ、何をお願いしておくか。

元気な人には想像もつかないことかもしれないけれど、いつか強いストレス下に置かれたときに、どうしようもなく不安になったり、希死念慮を持ってしまったり、誰かを傷つけたい衝動にかられる可能性は、実はみんな、ゼロではないのかもしれない。そういうときのことを一度想定して備えておくことって、結構大事かも。備えあれば憂いなしだし。ほんとにしんどいときに誰に頼りたいか、頼れる人が近くにいるか考えるきっかけにもなるし。


この本は、メインの8章までが、60ページほどで終わっていて、残りの約40ページが付録になってるんだけど、これがまたいい。

付録のひとつめ、"付録A"が、「強力なサポートシステムをつくり、維持し、活用する」っていうタイトルで、困ったときに備えて、サポートしてもらうための人間関係を元気なうちから作っておくことが書かれている。秀逸なのが、サポートしてもらえる関係性を作ることのハードルが高い場合の例や、そのハードルの乗り越え方についても書かれていること。

たとえば
拒否されているサインに敏感に反応し、人から離れていく。
(解決策として)その人が、サポートしてくれないということが絶対的に確信できるまで、自分から離れていくことはやめてみましょう。あなたが感じていることを話してみて、その人たちにも、彼らの感じていることを話してくれるように働きかけてみましょう。関係のなかで、どちらもいい気持ちでいられるようにお互いに努力してみましょう。

同、p63(カッコ部分は筆者)


人に頼るのが苦手な人って結構多いんじゃないかなって思う。それに、辛くなればなるほど、自分は孤独で、誰も頼れる存在はいないっていう風に思ってしまうこともある。そうなる前に、頼れそうな関係性を身近なところに作っておいたり、その存在をノートに書いたりして、確認しておくことができるといいかもしれない。

WRAPは、精神病で闘病中の人向けのものだと思うけど、これから状況が変化してストレスフルな環境に身をおくことになる人が事前に取り組むことができたら、いい予防になるんじゃないかな。

環境の変化があったり、困難なことに挑戦する人(子育て、介護、転職、進学、留学、闘病、引っ越しなど)は、精神病の病歴がなくてもやっておくといいんじゃないかなと思って、紹介してみました。


このワークブック、取り組むのが楽しんですよね。自分がどうやったら元気になれるのか考えるのって、好きなことたくさん思い出せるし、そのノートを毎日見るようにしたら、毎日好きなこと考えて生活できるようになるし。

めちゃおすすめです。回し者じゃないけど、バリバリ宣伝します。笑


坂口恭平展@HS -nara-

自死にまつわる語りをstand.fmで配信している友人が誘ってくれて、奈良の安堵町というところでやっている坂口恭平展にいってきた。

HS -nara-という、JRの駅から15分くらい離れたところにある小さなギャラリーでの展示。

坂口恭平さんは、その友人に紹介されて知ったのだけど、双極性障害を患いながら、絵を描いたり、文章を書いたり、いのっちの電話という電話相談を自主的にやっているすごい方。まだ直接お会いしたことはないのだけど、著書を何冊か読んで、自由で愛のある生きざまにいつも元気をもらっている。

この「休職中の記録」シリーズでも何度か紹介した「病と障害と、傍らにあった本。」の執筆者の一人でもある。

その坂口さんの、パステル画を中心にした展示が今週末まで行われていて行ってきたのだけど、建物全体が白くて、坂口さんの素敵な絵や、オーナーのハヤシユウジさんの素敵な陶芸作品がずらりと並んでいて、すごい心地よくて幸せな空間だった。写真撮影は許可をもらっていたのだけどnoteにあげていいかわからないので、作品の写っている写真は載せるのはやめて、2階のようなロフトのような空間(ここが最高に良かった)に上がるはしごの写真を載せようと思う。


はしご。



ちなみに、オーナーのハヤシさんのtwitterにはわりと中の様子がのっている。



坂口さんは、双極性障害という病気とともに生きる生き方をとことん引き受けて、自分がどうやったら元気な状態でいられるかを追求している人(それでも鬱になるときはなるらしいけど)。

その生き方は本当に参考になるし、著書もめっちゃおもしろいのでお勧めです。



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今日はこの辺で。

しばらく眼精疲労やらなんやらで書けてなかったけど、書きたいこと溜まっているので、また書きます。

最後まで読んでくれてありがとうございました。

たまには遠くを眺めてぼーっとしようね。