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ヒマワリ

会社でヒマワリをもらった。

TAKE FREEの花瓶に生けられたヒマワリは夏は私が主役と言わんばかりにそれぞれが煩いくらいに存在を主張しているように思えた。

とはいえ、その華やかさに思わず一本…と手を伸ばしてしまう自分もいたし、やはりヒマワリは夏にふさわしく私の気持ちさえも変えてくれる予感をさせた。

帰り道にたまたま妻と合流したこともあり、その日は家に着くまでヒマワリ片手にファッションショーばりに写真撮影を楽しむこともできた。

「さすがヒマワリだな〜」なんて思わせてくれる大活躍ぶりを見せる。

家に着くなりせっせと花瓶のドライフラワーを片付け、「生花は部屋が明るくなるなあ」なんてありきたりの台詞も添えてヒマワリを飾った。

帰り道を楽しいデートの時間に変えてくれたのは紛れもなくヒマワリの力だし、夏のヒマワリじゃなければあの特別感はなかったと思う。

翌日、何気なく見たヒマワリはぐったりと下を向き、昨日の強気な態度はどこへやらすっかり変わり果てた姿になっていた。

「自分の居場所はここじゃない、太陽に合わせてくれ」と言わんばかりである。

私は陽気な友達を自分の用事に付き合わせて退屈させてしまったようなバツの悪さを感じた。

2日目、3日目とどんどん首は下がり、それに釣られて私もどんどん申し訳なさが募る。

私はヒマワリは苦手かもしれない。

あんなに「私があなたに夏をお届けするわ!」なんて威勢のいい姿を見せておいて翌日には「いやもう…はい…お疲れっす…」とすぐに手のひら返しをされた気分だ。

私はそう思いながらヒマワリを捨て、元のドライフラワーを花瓶に戻した。

ドライフラワーは良い。

華やかさはないがいつも変わらない安心感とちょうどいい彩りをくれる。

ヒマワリには悪いがどうも相性が悪かったようだ。

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