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『偽装請負』

こんばんは。久しぶりのnoteです。

今回は、「雇用契約と業務委託契約(工事請負契約を含む。以下同じ。)の混同」について、お話しします。

不思議な話、このテーマ、どこのセクションにも起こり得るパンドラの箱なんです。そもそも、最初は業務委託契約を介して始まった当方と相手方の関係が、再契約を繰り返し、履行期間が長くなるにつれ、相手方が当方から雇用された被用者のような感覚を持ち始める。
そして、まるで雇用契約のような業務委託契約に変質していき、嘘のような話、待遇改善(制服等の貸与、ベースアップ、賞与の支給など)を求める団体交渉を持ちかけられたという他市の事例をも聞き及んでいます。

ここまでの文脈を読んでも何も感じない方のために、まずは、契約のイロハから。
契約内容は、契約当事者が自由に決めることができるわけです(契約自由の原則)から、そういう意味では、契約当事者の意思内容が「法」となります。
契約については、民法に規定があります(521条ほか)。個人の意思が最大限に尊重される市民社会のルールである民法の規定は、基本的に「公の秩序に関しない規定」(「任意規定」といいます。)であり、契約内容がこの規定と異なっても契約の方が優先することになっています(民法91条)。民法典の規定は、当事者の意思である契約内容が不明確なときにこれを補充するためにあるのです。

 (契約の締結及び内容の自由)
第521条 略
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
民法典

「契約自由の原則」があるんだから、雇用と委託がブレンドしても構わないだろーが、と思われる方も一定数いらっしゃることでしょう。
しかし、そうは問屋が卸さないんですね。その自由も「法令の制限内」という十字架を背負っているのですから。
民法が例示する典型契約は、1贈与、2売買、3交換、4消費貸借、5使用貸借、6賃貸借、7雇用、8請負、9委任、10寄託、11組合、12終身定期金、13和解の13種となりますが、定めのない非典型契約としては、秘密保持契約などがあります。
委託(民法でいうところの「委任」または「準委任」)の対価は「何らかの法律行為または事実行為をすること」、請負の対価は「ある仕事の完成をすること」であって、雇用契約のように発注者と受注者との間には指揮命令系統は存在しません。ましてや労働時間(始業・終業時間、休憩時間、休日)に関する指示、制服着用の義務付けをすることもできません。
このようなことから、発注者側である当方の監督員は受注者側の労働者に対し直接業務上の指示を行うことはできません。業務上の指揮命令はあくまでも受注者側の現場責任者が行わなければなりません。

長々と業務委託契約の禁止事項を挙げましたが、これらの禁止事項に違反する業務委託契約を「偽装請負」と俗に言います。なぜ、闇堕ちした自治体や事業者が雇用契約を業務委託に偽装するのかと言いますと、労働者の社会保険加入などの福利厚生の支払や長時間労働の規制などを逃れるためです。
偽装請負であると評価されると、許可を受けずに労働者派遣業を行ったとして、法律に違反することになります。違反した場合、偽装請負を行った注文主と請負業者に対して、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金という罰則が設けられています(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律59条2項)。

久々にnoteを書きましたので、カチカチに硬い内容になってしまいました。しかしながら、契約担当者は、様々な法規制に精通しておく必要がありますからね。

今回は、このあたりで。ではでは。

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