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それはまるで映画のような/SUMMER SONIC 2022

先月、人生初のSUMMER SONICに行ってきた。

時刻は19時過ぎ。久しぶりの夏フェス。いや、フェス自体行くのが数年ぶりだった。朝から動き回った身体はやはり疲労を感じている。マリンスタジアムの雨脚はどんどん強まってきて、本降りになってきた。スタンド席の上の方に逃げる。下を見ると、ビニールシートの上に雨水が溜まっているのが見えた。そんなビニールシートの上を多くの人が歩いてステージの方に向かっていく。雨の中どんどん人が増えていくマリンスタジアムには期待の色が滲んでいた。ここにいるみんながヘッドライナーの登場を待ち侘びているのだ。
そんなヘッドライナーを務めるThe 1975のステージが開催直前で90分に延びた。丸1日フェスで色んなアーティストを観た後に、ワンマン並みの90分ステージ。しかもこの雨だ。体力の無いわたしは、楽しみな気持ちとちょっとの不安を抱えていた。

19時半、暗転。
多くの拍手の中から美しいキーボードとサックスが響きわたる。次々に登場するThe 1975のメンバーは全員ネクタイまできっちり締めた黒スーツ姿。夜とはいえ、猛暑の日本の夏に?と少し心配になってしまう。
フロントマン、マシュー・ヒーリーが横を向き、煙草に火をつける瞬間がスクリーンに映し出された。吐き出される煙の揺れまでしっかり見える。ジョージのドラムをきっかけに照明がつき、『If You're Too Shy (Let Me Know)』が始まった。
完璧だ、と思った。

特別な演出は何もない、全編モノクロで映し出されるスクリーン映像。スーツでタバコに火をつけ歌うマシューの姿はまるで映画のワンシーンのようだった。夢のような、映画のような、現実。そのシーンは何度でもスローモーションで思い出せる。
雨も疲労も一瞬で忘れて、彼らの美しいサウンドに聴き入った。そう、美しいのだ。格好良いバンドはたくさん観てきたし、The 1975ももちろん格好良いのだけど、サウンドがとにかく美しい。圧倒的だった。これがサマソニのヘッドライナーなのか。これが、わたしが生で観たいと焦がれていたThe 1975なのか。

90分、18曲。序盤にこの曲もう演奏しちゃうの?と思いつつ、それが最後まで続いた名曲オンパレード。
世界で初めて披露された新曲『I’m In Love With You』は5枚目のアルバムにしてここまでどストレートな曲を作れてしまうなんて、とうっとりしてしまった。ポップで、それでいてエモーショナル。マシューは本当に幸せそうに歌う。

帰りの電車で夫とどの曲が良かったかについて話をした。どの曲も良かったけど、と言いながら選んだ曲が2人で一致したのがやけに嬉しかった。

『Love It If We Made It』は歌詞もMVもヘビーな曲だ。世界は今日も悲惨な事件で溢れている。世界は、と書いたが自分だって無関係ではない。MV同様に照明が丸く光り、メンバーのシルエットが浮かんでは消えていく。両手でマイクを力強く握り締め、訴えるように、叫ぶように歌うマシューの姿が目に焼き付いている。そしてサビでは腕を振り上げ、高らかに希望を叫ぶのだ。

And I'd love it if we made it
Yes, I'd love it if we made it


サマソニから、もう1ヶ月が経とうとしている。
それでも未だにあの夜の心地良い余韻がわたしを満たし続けている。日本のアーティストとは違ってなかなかライブを観られる機会が無いからこそ、今回観ることができて本当に良かった。来月リリースされる5枚目のアルバムが今から待ち遠しい。

The 1975のライブを観られたことが、この夏一番の思い出になった。


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