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大船渡に移住して1年半。今も活動を続ける理由【セクシュアリティと私 余談】

※ 本企画は、親愛なるライターさんに執筆依頼しています。対談をもとにまとめてられており、自分で書くにはもどかしい部分まで丁寧に記述して下さったこと、心から感謝申し上げます。

「セクシュアリティ」と私

このnoteは、小麦の思考を深掘るシリーズの第一弾。セクシュアリティに対する小麦さんの関心を、インタビュー形式で紐解きます。

今回は、(余談)大船渡に移住して1年半。今も活動を続ける理由。


―――― 大学卒業後すぐに移住した岩手県大船渡市でも、このような活動を継続しようと思われていましたか?

大学時代の活動はどれも、今の自分に影響を及ぼしていますが、こちらに移住した当初は何もするつもりはなかったというか。もちろん発信や発言の面は一生実践していくつもりでしたが、何か活動しようという気は一ミリもありませんでした。

でも、大船渡に移住してみたら衝撃を受けて。

あまりにも、異性愛規範の中で、結婚することが幸せだという価値観が根付いていて。それを本当に悪気なく、会話に出している人がありえないくらい存在して。

たとえば、移住してすぐに言われたのは、

「彼氏と別れたからこっち来たんでしょ」
「こっちでいい男を見つけて定住してね」
「俺の息子、よかったら紹介してもいい?」

どの発言も、定住やキャリアを築く選択が、全て男性によって決まるような話し方でした。

私の主体性が奪われているような感覚があったんです。

私は自分の意思でこの場所に来て、これから行く先も自分で決めていくはずなのに、将来は男性についていくし、ここに定住するかどうかも良い男性がいるか否かで変わってしまうかのよう。モヤモヤしました。

それが自分にとってショックだったのはもちろんだし、移住して1,2ヶ月頃からそうした状況をすごく苦しく感じていました。

ストレスで突如、アトピーに悩まされました

そして、この場所で何年も生きてきた人や、今生活している学生の中には、絶対に同じように生きづらい方がいるだろうなと思ったんです。

それこそ出ていくし、帰ってこないよなと。

そう考えると、地域おこし協力隊の活動は移住定住関連の仕事も含むので、切り離せない問題でもあります。ジェンダー格差然り、女性が軽視されていること、女性の主体性が甘んじられていること。

しかも異性愛規範が強すぎて、とてもじゃないけど同性を好きになる可能性があるなんて話せる雰囲気ではない。すごく問題だなと。何か行動したいと思いました。

昨年度は、講演会やSNSでの発信などを行いました。男女共同参画の市民アンケートの中で関連する内容を取り上げて市民の方とお話しする場所を作ったり、「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」など県外で行われている取り組みを大船渡に招致したりもしました。

「私たちだって“いいふうふ”になりたい展」
東北では初開催でした
人口約3万人のまちですが、100人が来場してくれました
取り組みが
「第5次大船渡市男女共同参画行動計画」に
知らぬ間に記載されていました
(今後も続くといいな)
遠藤まめたさんを
講師として大船渡にお呼びできました…!拍手!
講演の機会も度々いただいています

一番の課題感は、知る機会がなく、自分たちの価値観を客観視して違いに気づく機会がないこと。

結婚以外の価値観があることや、結婚できない人がいるというアイデアがない人が多いと感じるし、そこに気づける機会も少ない。

誰のせいでもないんですよね。

ここに住む人たちはみんな、危害を加えたくて、傷付ける発言をしているのではなく、ただアイデアにないだけ。

だから、最初のきっかけを誰かが作らなきゃいけないだろうなという思いがずっとあって。たまたまそういう機会を頂けて、挑戦してきました。

陸前高田市でのトークセッション登壇

この1年は、毎月「SOGI対談」と称して、性に関わる話ができる場所を作っています。

幅広い年代の人が来てくれているのですが、最初に想定していたターゲットは学生さんたち。

そこには、「同性を好きになることもある」「性別に違和があるのはおかしいことじゃない」というアイデアを、自分も学生の頃に持っておきたかったという思いがありました。もし、そういうアイデアがあったら、自分の青春はもっと楽しかったと思うから。

それに、今まで私に話をしてくれた人の中には、「自分が同性愛者だと気づいた時に絶望した」「いなくなりたいと思った」という人が一定数いました。

だからこそ、それは決しておかしいことではないし、むしろハッピーに思ってほしいと伝えたくて。

気軽に恋バナをできたり、性に関する悩みを学生時代から話せる相手がいるといい。そういう話題って、昔からつながりのある人や自分の家族に言うのはハードルが高いけれど、移住者の私にだったら話せるかも。

そんな思いで始めたのが、学生をメインターゲットとするSOGI対談でした。

毎月1回、1-2人くらい対応していて、誰も来ない月もあります。でも、誰も来なくてもいい。まずは「話せる場所がある」ことが大事なので。毎月開催して、必要な時に誰かが見つけてくれたらいいなと思っています。

私自身も、いろんな人と話して勉強になっているんです。知らないことがいっぱいあるな、と。

それこそ大学時代、自分が研究していたのはセクシャリティの中でも性的指向の部分だったので、性自認などについては、まだわからないことが多くて。

性別違和に付随する手術の話もそう。「どこの病院がいいですか?」と聞かれても答えられないですし。日本にはこんなにたくさん病院があるのに。

他にも戸籍変更のためには何が必要かとか、当事者をサポートできるほどの知識は持っていなくて。これからも学んでいきたいなと思います。

だから「対談」。たぶん相談にはならないので。一緒に考える場所にさせてもらえるといいなと思っています。

それに、田舎町には当事者が一人もいないように見えて、こっちにもたくさんいる。私にとって学びの場でもあり、いつか誰かのためになるかもしれない、そういう余白を残した企画になっています。

「社会課題」としてだけでなく
楽しくセクシュアリティを考えるためには
どうしたらいいか日々考えています

移住して2年目、もがきながら活動してきた軌跡です。溺れるような感覚の中、「地域に小麦さんがいてくれてよかった」というわずかな声に支えられ、続けてくることができました。

誰かの生きづらさや違和感に対して、「仕方ないよ」と何もせず、ただ文句をいう人間ではいたくないので。できることからコツコツと。

来週は無料公開の講話の場をいただきましたので、ご興味ある方はご参加ください◎

申し込みはこちら!

最後まで、お読みいただきありがとうございます!
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