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赤帽タッチ![ショート小説]

異質なものが出現すると、人はそれを「穢れ(けがれ)」とみなす。異質なもの自体を排除しようとすることもあれば、見たり触れたりして穢れを受けてしまった(と感じる)自分を清めようとすることもある。

風邪は誰かにうつせば治る、みたいな昔からの考えも同じものなんだろう。

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小学生の頃、県道の大通り沿いで時折小さなトラックを見かけることがあった。それは白地に赤いポイントがついた車体で、側面に「赤帽」と書いてある。他のどんな車とも違うそのトラックは、見るたびに心がぞわぞわした。

いつからか僕らは下校中に赤帽を見つけると、「赤帽タッチ〜!」と叫んで隣にいる友人にタッチした。タッチされた側も同じように叫んでタッチする。鬼ごっこというか、よくある「〇〇菌」のなすりつけ合いのようなじゃれ合いだった。

T君と学校からの帰り道、久しぶりに赤帽を見つけた。

「赤帽タッチ!」

T君と僕はタッチしたり避けたり応酬を繰り広げた。

追いかけっこをするうちに、それぞれの家に向かう分かれ道についた。僕らは息を切らしながらも「また明日!」と手を振って、T君は坂の上の団地に帰っていった。

「赤帽」はいまどっちに憑いてるんだっけ? 思い出せない。もう、なすりつける相手もいないよ。

夕陽の方向に向かって流れていく車を眺めながら、会社からの帰り、並木道で立ちすくんだ。

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