【短編小説】ヒーローはいつまでも ~雪と記憶~
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柩の小窓を開けると死化粧をほどこされた従兄の顔があらわれた。枯れ葉のようにしおれた面貌にはかすかに腐敗の痕跡が認められる。彼の顔には積年の気苦労が小じわとなってあらわれていて、本来の活発な性質はすっかり損なわれていた。側に付いている従兄の母――わたしの伯母にあたる女性は堪え切れないようすで視線をそらしている。当初従兄の遺体は見ないほうがよいといわれていた。わたしを動揺させなくないし、何より息子の死体を人