米競馬三冠_ジャスティファイめも

【雑記】米競馬三冠 ジャスティファイ

 2015年のアメリカ競馬界は37年振り史上12頭目となる三冠を達成したアメリカンファラオ(American Pharoah)の活躍に湧いた。

 アメリカの三冠競走はケンタッキーダービー(Kentucky Derby)、プリークネスステークス(Preakness Stakes)、ベルモントステークス(Belmont Stakes)の3歳限定競走である。開催期間が1ヶ月程度しかないため挑戦する競走馬は過酷なローテーションに耐えなければならない。アメリカ競馬の歴史を振り返ると1919年のサーバートン(Sir Barton)に始まり、1978年のアファームド(Affirmed)以来悪魔の悪戯を受けているように米三冠の道は閉ざされてきた。惜敗、回避、未出走。また2008年にはビッグブラウン(Big Brown)がレース中に失速、原因不明の最下位(公式記録上は競走中止)に沈むという奇怪な事件があった。

 こうした経緯があるだけにアメリカンファラオの偉業は呪いが解けたような、解放感にも似た歓喜をもたらした。

 そして2018年6月9日、解き放たれたベルモントの砂上にて新たな英雄が誕生した。通算成績6戦6勝。負け知らずでアメリカ競馬史上13頭目のトリプルクラウンを達成した馬の名はジャスティファイ(Justify)。無敗での達成はシアトルスルー(Seattle Slew)以来41年振り2頭目。しかも同馬は2018年2月18日に初陣を飾ったばかりであり、約4ヶ月で歴史的名馬にのぼりつめたのだから脱帽だ。

 アメリカンファラオとジャスティファイの共通点は脚質にある。スタートから先行もしくは先手を奪い、そのまま粘り切る〈逃げ〉戦法をとっているところだ。日本のダート界ではさまざまな脚質が生きているが、アメリカのダートコースでおこなわれる大レースでは先団を形成する先行力がないと勝利は難しい。これにはアメリカ競馬場の構造や使用されているダートの質が大きく関わっている。基本的にアメリカの競馬場は小まわりであり、日本とは別種の砂――土と呼ぶ方が適切か――を使用していてスピードとパワーに特化したコースといえる。通算成績20戦19勝。2007年から2010年のブリーダーズカップクラシック(Breeders' Cup Classic)で初黒星を喫するまで直線勝負、いわゆる〈追込〉を貫いた名牝ゼニヤッタ(Zenyatta)みたいな馬もいるが、これは特殊な例に含まれる。

 話をジャスティファイに戻そう。父親のスキャットダディ(Scat Daddy)は2006年のシャンペンステークス(Champagne Stakes)、2007年のフロリダダービー(Florida Derby)を制覇している。G1は2勝どまり。最後の競走となるケンタッキーダービーでは20頭中18着と惨敗。立派ではあるが抜きん出た成績ではない。けれども産駒にはアメリカンオークス(American Oaks Stakes)デルマーオークス(Del Mar Oaks)勝ち馬レディオブシャムロック(Lady of Shamrock)、モルニ賞(Prix Morny)キングススタンドステークス(King's Stand Stakes)勝ち馬レディオーレリア(Lady Aurelia)といった芝のG1馬がおり、どちらかといえばダートより芝に適正があるようだ。父の父も芝実績のあるヨハネスブルグ(Johannesburg)。もしもスキャットダディが芝路線を歩んでいたら大量のG1をもぎ取っていたかも知れない。これはあくまでもタラレバの妄想。

 母系を見てみると母の父ゴーストザッパー(Ghostzapper)はブリーダーズカップクラシックを筆頭にG1競走4勝を含む通算成績11戦9勝という生粋のダート馬である。短絡的に解釈するなら、快速馬と呼ぶにふさわしいジャスティファイのスピードとパワーは父系と母系の長所をバランスよく受け継いだ結果と見てよさそうだ。まだデビューして4ヶ月程度しか経過していない若駒だけに、さらなる成長は見込めるのか、どんな活躍を披露してくれるのか、暖かい目で見守っていきたい。

 最後に関係者の方々に心よりお祝いを。Congratulations!!


※American Pharoahは本来American Pharaohと表記するべきで、実際日本語ではアメリカンフェイローと表記されることもある。これは電子登録時に間違えてAmerican Pharoahと記述したため。厳密さを重視するならアメリカンフェイローあるいはアメリカンフェイロアと表記した方が適切だろうが、本項では補完するかたちでアメリカンファラオと記した。日本でも1991年の有馬記念を14番人気で制してあっと言わせたダイユウサクもダイコウサクの誤りとして知られる。ちなみに2017年にダイコウサクという馬が登場した。同馬の馬主はダイユウサクの馬主橋元幸平氏のご子息橋元幸人氏。今度は正確な馬名で勝負をかけられたと拝察する。けれども残念ながらダイコウサクは初戦、2戦目と続けて大惨敗した挙げ句そのまま引退してしまった。


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